コロナ給付金「性風俗除外は違憲」と事業者が国など提訴 “正規のラブホテル”も苦境に「真面目な人ほど貧乏くじ」
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 新型コロナウイルスの影響で収入が減った事業者の事業継続や再起のために給付される「持続化給付金」。その給付金の対象から除外された事業者がある。「性風俗事業者」だ。

【映像】デリバリーヘルスを営む事業者が訴え

 デリバリーヘルスを営む事業者が23日、持続化給付金や家賃支援給付金が性風俗事業者に給付されないのは「法の下の平等に反し、違憲」だとして、国に給付金の支払いなどを求める訴えを起こした。

 適法に事業を行い、きちんと納税していても、性風俗事業者は一律に給付の対象外となっている。国はその理由について、「社会通念上、国民の理解が得られにくい」と説明している。

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 「今回の性風俗事業者に対する持続化給付金等の除外については、まさにコロナ禍が浮き彫りにした職業差別。社会通念、道徳、国民感情みたいな、非常にあいまいな理由で差別をしていいのか。しっかりと司法は向き合って答えを出すべき」(弁護団・亀石倫子弁護士)

 性風俗事業者はこれまで、災害時でも公的資金による支援や補助制度の対象外となってきた。今回の“セックスワークにも給付金を”訴訟では、風俗営業に対する職業差別の歴史を断ち切るとして、訴訟費用などのためのクラウドファンディングを立ち上げた。現在、450万円以上の支援金が集まっている。

 訴えを起こしたデリバリーヘルス業を営む事業者は、「なぜ『国民の理解が得られにくい』のか、これまでの国の取り扱いが本当に正しかったことなのか、わかりません。世間の偏見や差別感情、スティグマを国が助長させるようなことをしてはいけないと思います」とコメント。

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 『ABEMAヒルズ』の取材に亀石弁護士は、「きちんと法律にのっとって、自分の店のセックスワーカーが安全に働けるように配慮したりしながら真面目にやっている事業者もたくさんいる。今回の原告もまじめな事業者のひとり。やはり業界全体が悪い業者という風にみなされていて、しかも国からも除外されているということを受けて、言っても仕方がないという諦めや今まで声を上げられなかったという人たちが大勢いる」と話した。

 一方、同じような状況に置かれて苦しむのが、「性風俗関連特殊営業」の届け出をしている正規のラブホテル。持続化給付金やGoToトラベルの対象から除外されている。群馬県伊勢崎市にある「SERA赤堀店」など、北関東で6店舗のラブホテルを経営する市東剛さんは憤りを隠せない。

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 「納税しているのはやはり何かあった時、国民が窮した時に回復に導いてくれるんだろうという期待があるわけですよ。我々の業種に対して、適正化するのではなく潰してしまえという考え方に非常に憤っています」

 さらに、市東さんは“疑似ラブホテル”が給付金の対象であることを問題視している。疑似ラブホテルとはつまり、「ビジネスホテルを作る」と申請したにも関わらず、実態がラブホテルである施設のこと。性風俗関連特殊営業の届け出は出されておらず、持続化給付金が支給される。

 「真面目にやる人間ほど、法律を守って言われた通りやっている人ほど、あとで貧乏くじを引く、損をするんだということですよね。それ以外の気持ちは何もないです」

 こうした問題について、東京工業大学准教授の西田亮介氏は「給付を除外しているそれ以外の対象に目を向けてみるといいと思う」と話す。

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 「(1)国、法人税法別表第一に規定する公共法人、(3)政治団体、(4)宗教上の組織若しくは団体、というのは、国が直接お金を入れると利益相反を起こして好ましくないとか、宗教や政治の自由に影響を及ぼすところは適用除外にするというつくり。ここに唐突に(2)『性風俗関連特殊営業』『接客業務受託営業』を行う事業者、という特定の産業が含まれてくるのは違和がある。これは“従来の災害時の補助金等でもそうだった”と横滑りさせる形であまり考えずに入れたのだと思うが、特定の業種、特に法令を遵守して事業を行い納税している優良事業者が割を食うような制度設計にするのは好ましくない。公権力はいくらでも増大していきかねないので、ある時突然、皆さんが働いている事業が“国にとって好ましくない”という理由で対象外になってしまう可能性がある。そういった恣意的な線引きは可能な限り行われない方がいい。こういった問題を考える時、反社会的勢力にお金がいかないようにすることが重要だという声もあると思うが、そのために(5)給付金の趣旨・目的に照らして適当でないと中小企業庁長官が判断する者、という条項がある」

 また、除外を「当たり前だ」とする声には、「道徳や個人の好みの問題について国に口出しさせないことが大事だ」との見方を示した。

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 「風俗というと眉をひそめたり、(除外が)当たり前だという人も結構いると思うが、ポイントは道徳や個人の好みの問題について国に口出しさせないのが大事だということを想起したい。個人の信条や好み、良し悪しの問題は個々人がそれぞれ考える問題であって、本当に犯罪になるものは今のところ法律でさまざまな線引きがなされている。合法事業者が非合理的な対応を受けるようだと、“法律を守るだけ無駄じゃないか”と地下に潜っていってしまい、非合法化していってしまう。そういったことがないようにするのも大事だ」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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