新型コロナウイルスの感染拡大によって1年延期された東京オリンピック・パラリンピック。24日、東京都の小池知事、組織委員会の森会長、スポーツ庁の室伏次期長官、そしてIOCのバッハ会長が来年の開催に向けた会議を開いた。
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バッハ会長は席上、「日本でも週末には様々なプロリーグが開催されている。これは世界に対し、ワクチンがなくても安全なスポーツ大会を開催できると示しているということだ」と述べ、開催に前向きな姿勢を示した。
日本政府もこれに先立つ23日、大会における感染防止対策を検討する会議を開き、選手に対して出国前と日本入国時、さらに滞在中のPCR検査などを義務付けること、期間中の外出先や移動手段を記した活動計画書・誓約書の提出を義務付けることなどを盛り込んだ受け入れ方針を決定した。小池知事はこの日、菅総理と会談。大会の成功を目指して都と国が協力していくことを確認した
■開催に向け、初めて“一枚岩”になったJOC・組織委・東京都
これらの動きについて、スポーツジャーナリストの二宮清純氏は「来年の開催に向けての地ならし、ということだろうと思う」と話す。
「そもそも森会長は“2年延期説”だったが、安倍さんが“1年延期説”だった。組織委員会としてもそこに向かって進んでいるところだが、状況は予断を許さない。はっきり言ってJOCと組織委員会と都は今までバラバラだった。それが“IOCに中止のカードを切られたら困るよね”ということで初めて一枚岩になれた。だから小池知事と菅総理がグータッチとかしている(笑)。それでも今後ヨーロッパで感染がさらに拡大した場合、アスリート委員会、選手たちから懸念の声が出てくると、かなり難しい話になってくると思う」。
他方で、バッハ会長は9日、「来年、どんな環境になっているか本当に分からない。期限を設定するのは早すぎる」として、最終決定については明言を避けている。
「時間が経てば感染拡大も収まるだろうという希望的観測もあって、日本側としても決定は引き延ばしたい。組織委員会の遠藤副会長が“来年3月”と言ったのもそのためだ。ただ、スポンサー契約が年内で切れるので、現実的には12月、遅くとも1月には決めざるを得ないのではないか。しかし、最終的な権限を握っているのは組織委員会でも東京都でもなく、あくまでもIOCだ。IOCは中止保険に入っているが、それでも全額は補償されないので、できれば開催したいと考えていると思う。ただ、例えばマラソンの開催地がいきなり東京から札幌に変更されたことでも分かる通り、あまり信用しない方がいい。現時点でもう1年延期の可能性もゼロではないし、中止の可能性もあると思っている」(二宮氏)。
■放映権料、入場料収入は確保したい…ビジネスサイドの思惑も
開催を目指す中で、「簡素化」というキーワードが度々登場するようになった。6月にはIOCと組織委が200以上の項目を洗い出し、検討することを決定。さらにIOCは会場の収容人数や使用期間短縮など16項目の具体策を各国際競技団体に提案。一方、7月には森会長が「開会式の縮小・時間短縮はテレビ放映権の関係で難しい」とも話している。
二宮氏は「IOCとしてはWHOと連携すると言っている以上、その“お墨付き”が必要だからだ。ただ、これはあくまでも表向きの理由だ。仮に開催中止となった場合、すでにスポンサーからお金をもらっているIOCには訴訟リスクもある。“私たちは中止したいわけじゃないが、WHOが言ったから”と言えるよう、“隠れ蓑”に使っているんじゃないか」と推測。
さらに「無観客での開催にしても、IOCにはコムキャストやNBCからテレビの放映権料が入る。一方、観客からの入場料は組織委員会に入る。これは約900億円に上るので、組織委員会としても本音は失いたくない。今、コロナ対策との両立に非常に頭を悩ませているところだろうと思う。プロ野球とかJリーグが観客を少しずつ増やしているのも、“ほら、クラスターは出ていない。だからお客さんを入れても大丈夫だ”という世論誘導をしたい意図があるのではないか。これは組織委員会の偉い人から聞いた話だが、相当なお金を注ぎ込んでいるNBCは開会式の放送時間を短くしてもらっては困ると言っているようだ。さらに、スポンサーはガラガラのスタンドが映ることを嫌がる。そうなると、やっぱり簡素化なんてできないんじゃないの?ということになる。だからこそ簡素化ではなく、“安全化”と言えと僕は言っている。それなら反対することが難しいからだ。そうやって、ひとつひとつ細かい交渉をしていくしかないと思う」との見方を示した。
■2022年、2032年という“ウルトラC”も?
各競技に目を向けると、国際大会を開催した競技、中止・延期した競技に分かれる。とりわけ柔道やラグビーなど、選手間のコンタクトが多い競技では、感染リスクも高そうだ。
「現段階では競技数を減らすという話は出ていない。しかしアウトドアとインドアでも違うし、中でも柔道やレスリングの危険性を指摘している海外メディアもある。しかしJOCが金メダルの獲得目標30個を掲げている。柔道やレスリングが無くなったら、日本はどこでメダルを獲るのだろうか。そういう事情もあるので、簡単な話ではない。選手たちの感染防止対策としては、大坂なおみさんが優勝したテニス全米オープンの“バブル”システムが一つのモデルになるかもしれない。外出禁止や定期的のPCR検査にストレスを感じた選手もいると思うが、ある程度、成功していると思う。しかしパラリンピックのこともある。付き添いが必要な選手もいるので、その対策をどうするのかといったことは、まだこれからだと思う」(二宮氏)。
その上で二宮氏は“ウルトラC”の可能性を示唆する。
「2024年大会はパリでの開催が決まっているし、さらに2028年大会もロサンゼルスでの開催が決まっている。ただ“ウルトラC”として、2022年の冬季北京大会の後の夏に持って行くという案だ。この年のFIFAワールドカップ(カタール大会)は、通例の夏ではなく、冬に開催されるということもある。もう一つの“ウルトラC”として水面下で言われているのは、最悪のケースではあるが、“損切りする”という手段だ。しかしその勇気は日本人にはないと思う。あるいは2032年大会を目指すという方向だ。“今回はコロナには負けてできなかったが、子どもたちに夢は残した”、“ゼロよりはいいでしょう”という言い訳もできる。その辺は政治家は上手い。選手たちに聞いてみるとそれぞれ意見は違うが、やはり1年延ばすのすら大変なことだ。何とかやらせてあげたいと皆が思っている。しかしコロナという問題はなかなか難しい」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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