「福岡ができたと言えば他の自治体も言い訳はできない。国にもプレッシャーをかける」9月で“脱ハンコ”を完了させた高島宗一郎市長
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 「正当な理由がない行政手続きについては、もうハンコをやめろというのを押し通そうと思っている」(河野行革担当相)と、国が急ピッチで推し進める行政文書の“脱ハンコ”。

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 そんな中、保育所の入所手続きなどの押印義務廃止を推進、9月末をもって約3800の全書類(法令で押印が義務付けられたものなどを除く)の“脱ハンコ”を完了させたのが福岡市だ。現在、福岡市に申請されるもののうち、73.7%がオンライン化され、市職員や教員採用への応募、高齢者乗車券の交付申請などがオンラインでできるようになっているという。

■高島市長「私自身、役所に行くのが嫌いだった」

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 旗振り役となったのが、36歳でKBC九州朝日放送のアナウンサーを辞め、政治の道へと進んだ高島宗一郎市長(45)だ。現在3期目の高島市長は、1期目の2012年に「スタートアップ都市宣言」を導入するなど、行政の電子化だけでなく、IT産業の振興にも取り組んできた。

 「福岡が目指してきたのは“ノンストップサービス”であって、“ハンコレス”はあくまで手段だ。そもそも私自身、役所に行くのが嫌いだった。普通、お店に行くときには予約ができるし、行けばスムーズに用事が済むようにできている。しかし、役所はそれができない。だから役所に来なくてもいいようにしたかった。そして市長になり、電子政府の先進国であるエストニアに視察に行ったことで、“ワンストップ”ではなくて、“ノンストップ”でサービスを提供したいと思うようになった。そこでぶち当たるのがハンコを押さなきゃいけないということと、そのために紙という物理的なものが必要になるということだったので、2019年1月から、これを無くす取り組みを始めた」。

■実現のためのハードルは“何となくの不安”

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 実現のハードルとなったのは、職員、そして市民の“マインドセット”だったという。

 「一言で言えば、“押してないけど大丈夫かな”“訴訟になった時、この書類で証拠になるのか”といった、何となくの不安だ。地元のテレビでこのことが放映された時にも、“街の声”として出てきたのが漠然とした不安だった。しかし冷静に考えてみれば、その辺に売っているハンコを買ってきて押せば、誰でも“高島”になれる。逆に言えば、ハンコが押してあるからといって、それが本人を証明しているわけでもないということ。推進チームと一緒になって、そういうことをあちこちで説得し続けた。結果として、“楽になった”と言われるし、市民サービスとしても向上していると思う」。

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 他方、婚姻届や出生届、戸籍事務関係など、押印や対面での手続きが定められているものが法令の改正が必要だ。

 「引越し時の手続きについても、オンラインで事前申請ができ、区役所に取りに来る日も予約できるというところまではできている。必要なのは、対面にするかどうかの仕分けだと思う。 例えば生活保護の申請や障害者手帳の交付など、不正の可能性が残るもの、詳しい調査やサポートが必要なものについては、対面の手続きを残してもいいと思う。あるいは高齢者への対応は温もりも必要だ。私としては、オンラインで出来るとことはオンラインにして、そこで出てきた人的リソースをヘルプの必要な方の対応を手厚くするために使っていきたい」。

■「“それ、すぐしようよ”と言って手帳にメモされていた」菅総理とも面会

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 今週月曜日には菅総理と面会、1時間ほど2人だけで話をしたという高島市長。「菅総理からお昼ご飯に誘われ、誰も入れず、2人でめちゃくちゃ色んな話をした」と振り返る。

 「法律で押印が定められていたり、対面原則が残っていたりするためにオンラインでの手続きが終えらないものがこんなにあるということをお話した。また、九州は自然災害が多いが、この分野はほとんどデジタル化されておらず、アナログ作業が多い。ここはアップデートできるはずなので、ぜひお力添えをお願いしますと申し上げた。止まっている国家戦略特区をどうやって動かし始めるかなど、思っていることをお話させていただいた。それだけでなく、これからの政権の話、コロナ対策、国際金融の話もさせていただいた」。

 菅総理の反応について高島市長は「例えば災害時に様々な支援を受けるための罹災証明を取得するために、被災者の長蛇の列ができてしまう。あれをとにかく解消したい。全国の自治体から応援の職員が派遣されて来るが、フォーマットがバラバラなので、レクチャーを受けてからじゃないと動き出せない。そういう話をしたところ、菅総理は“それ、すぐしようよ”と言って手帳にメモされていた」と明かした。

■「日本を良くしていくという意味では総理大臣も市長も同じだ」

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 政府の規制改革会議で“脱ハンコ”を提言してきた慶應大学特別招聘教授の夏野剛氏は「僕が最初に言い始めた時、官僚の皆さんは相手にしてくれなかった。今は国もすごい勢いで進めていて、ハンコが必要な文書のリストを内閣府が全省庁から集めている。実印、つまり印鑑証明を要求していないものは法改正の必要があるが、着実に進んでいると思う。問題は、国民と直に接する地方自治体だ。ハンコレスが実現したかは、自治体の対応で決まる。その意味では高島さんが旗を振ってくれた福岡市のような、ちゃんとやればできるんだという事例は他の地方自治体にも影響を与えるはずだ」と指摘。

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 夏野氏の話を受け、高島市長は「私は福岡の市長だが、日本を良くしていくという意味では総理大臣も市長も同じだ。国も県も市も頑張らないといけない。でも、自治体というのはできない理由を言うのが得意だし、民間企業みたいに儲かったらいいという訳ではないので、便利になってもそれほどのメリットがある訳ではない。総理が何か言ったからといって全国の自治体が言うことを聞くかといったら、それは難しい。しかし“福岡市はできた”と言えば、もう言い訳はできなくなる。事例、ロールモデルを出していけば、日本はより早く変わるだろうな、という思いがあるから、東京に行って“福岡は終わっているから、あとは国がちゃんとやってくれない限り、これだけのものが残る。これは自治体のせいではない”と国にもプレッシャーをかける」と

 乙武洋匡氏が「最終的に福岡何区から出るかという話にはなったのか」と聞くと、高島氏は「えっと2区がいいかな…いやいや、そんなことは言っていない。今、デリケートな時期だ。橋下さんじゃないが、“2万パーセントない”(笑)」とノリツッコミで否定していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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