SNSをはじめネット上での人気は、プロ麻雀リーグ「Mリーグ」の選手の中でもトップクラスと言っていい。2019シーズン、セミファイナル以降の大活躍で“キング”の愛称が定着したU-NEXT Pirates・石橋伸洋(最高位戦)は、「それだけ僕にキャラクターがないということ」と柔和な笑顔を見せた。「噛めば噛むほど味が出る」というチームの強みを体現するデジタル雀士は、硬軟自在の麻雀で虎視眈々と連覇を狙っている。
-2019シーズンはセミファイナル以降に大活躍。チームの優勝に大きく貢献した。
石橋伸洋(以下、石橋)
打ち方は変えていないつもりですし、僕自身はあまりそう思っていないんですけど、いわゆる「調子がいい」という状態になりましたね(笑)。逆にレギュラーシーズンは2年連続で結果が出ませんでした。逆連対(3~4着)が続いていた時期には、「気持ちの問題もあるんじゃないか」と考え込んでしまったり……。「なんとかしたい」というプレッシャーはレギュラーシーズンのほうが大きくて、相対的にセミファイナル以降のほうが開き直って気楽に打てた面はあるかもしれません。
石橋によると、2年間の経験を通じて「Mリーグではこういう麻雀がいいんじゃないか」という感覚が徐々に掴めてきているという。状況に応じてさまざまな戦術を使い分ける器用なタイプだけに、対戦相手の特徴を把握したことによる「間合いの取り方」の改善が、セミファイナル以降の好調の要因となった可能性もある。
-具体的に手応えを感じているポイントは?
石橋
仕掛けだったりリーチの打点のレンジだったり、「この人だったらこう打つ」というのが自分のイメージに近づいてきています。特に昨シーズンの序盤は沢崎(誠)さんがどんな麻雀を打つか掴めていないところがあったんですけど、そういった部分はかなり減ってくるんじゃないかな、と。そのイメージの合致が成績につながっていけばいいですね。
U-NEXT Pirates が勝利した際にツイートする「しゃああああああああ!」という歓喜の雄叫びなど、Twitterで多くのファンと盛り上がりを共有している石橋。また、南場での強さを表現した「南場のキング」というフレーズが転じて、 “黒いデジタル”に代わる“キング”という異名もネット上を中心に広く使われることになった。
-ここ最近“キング”と呼ばれていることについてどう思う?
石橋
それだけ僕にキャラクターがないということじゃないですかね(笑)。でも「どんな麻雀を打つかわからない」という意味では、固定のイメージを持たれていないことは自分にとってプラスかもしれません。考えてみれば、(鈴木)たろうさんからもらった“黒いデジタル”もあまりピンとこない人が多そうですし、最強戦に出たときの“麻雀勝ちまくり王子”もよくわからない。それを踏まえると、まだ“キング”で良かったです(笑)。
-連覇を期待するファンにメッセージを。
石橋
Piratesは麻雀の内容が少し難解な部分もあると思うんですけど、わかりにくい部分を解説するための感想戦や、番組を通じての発信も積極的に行っています。噛めば噛むほどに味が出ますので、そういった配信なども楽しんでいただいて、僕たちがなにを考えて、いかにポイントをプラスして、どうやって優勝に近づいていくか、という過程を見てほしいですね。
目標として掲げた「もらった配牌とツモの中でベストを尽くす」という言葉に表れているように、早い巡目での仕掛けによるブラフなど、アガリが難しい状況でもしっかりと対局に参加する姿勢が石橋の真骨頂だ。捉えどころのなさも、言い換えればそれだけ戦術の引き出しが多いということに他ならない。玄人好みで滋味深い“キング”の麻雀が、連覇に向けてさらなる冴えを見せる。
◆Mリーグ 2018年に発足。2019シーズンから全8チームに。各チーム3人ないし4人、男女混成で構成され、レギュラーシーズンは各チーム90試合。上位6チームがセミファイナルシリーズ(各16試合)、さらに上位4チームがファイナルシリーズ(12試合)に進出し、優勝を争う。優勝賞金5000万円。




