11月3日のK-1福岡大会に出場する予定だったスーパー・フェザー級王者の武尊が、負傷により欠場することとなった。武尊はこの大会でレオナ・ペタスを相手に王座防衛戦を行なうはずだったが、試合はキャンセルに。欠場が発表されたのは、9日のこと。ギリギリの決断だったと武尊。負傷したのは左拳。人差し指の付け根の骨折だ。
「骨折が発覚したのは(発表の)2、3日前です。最初は捻挫かと思ったんですけど痛みが消えなくて、左のパンチの練習ができない状態だったので治療プラス検査に行って(骨折と判明)」
武尊が負傷で欠場するのは、キャリアの中でこれが初めてのこと。以前も試合前にケガをしたことはあるが、それはすべて試合1週間前。追い込み練習が終わり、肉体と技術を仕上げてからの調整期間だった。そのため痛みに耐えながら調整し、痛み止めを打って「試合さえできればいいという状態」でリングに上がっていたのだ。
しかし今回はそういう無理もきかなかった。負傷は追い込み期間中のこと。
「今回は体を作ってる段階でのケガなので。最高のパフォーマンスをするための準備ができないんです。それでもやるつもりだったんですが、最高の準備をしてない状態で試合をするのはプロとしてふさわしくないんじゃないかと」
もちろん、相手も試合に向けて猛練習に励んでいる。欠場の判断を遅らせれば相手にも失礼だ。だからこそ、このタイミングで欠場を決めた。
対戦相手のレオナはもちろん「試合を楽しみにしてくれた人たち、会場に来る人たちに申し訳ない」と武尊。新生K-1になってからは初めての福岡大会だけに、現地のファンに生で自分の試合を見てほしかったという思いが強い。
「K-1を初めて生で見る人、僕の試合を生で見るのはこの機会しかないという人もいたと思うので」
自身のSNSアカウントでも欠場を発表、お詫びと心境をつづった文章を公開した。返ってくるコメントの中には、激励だけでなくアンチによる批判、誹謗中傷も。武尊はそれらすべてに目を通したそうだ。そのため、欠場を発表した夜はほとんど眠ることができなかった。
「ファンの気持ちを全部受け止められたのかなって。いろんな意見を全部受け止めた上で次に進もうと。応援してくれる人もアンチの人も、僕の試合を見たかったからこその言葉だと思うんですよ。だから全部受け止めたいなって。チャンピオンにふさわしくないとかベルトを返上しろ、引退しろとか、いろんなことを言われました。でも、それも気にしてくれてるからこそだと思うので。ガッカリしたということは期待してくれたから。だから期待してよかったと思われる試合を早くしたいです」
不幸中の幸いで拳は手術の必要はなく、長期欠場にはならないそうだ。欠場発表の当日はかなり落ち込んだという武尊だが、今は「次に進むしかない」と考えている。復帰戦の相手として考えているのは、もちろんレオナだ。
「そう遠くないうちに試合を決められると思います。それに向けて準備をするだけ。やる時は最高の状態に仕上げたいです。(復帰は)骨さえ治ればすぐにでも。そのためにも準備はずっと続けます。むしろ追い込み期間が増えたくらいの感覚で」
対戦相手やファンに対しての申し訳ないという思い、自分自身に対する悔しさ。ためた鬱憤。そうしたものはすべて、次の試合に叩きつけるしかない。
「次の試合は僕も自分に期待してるし、みんなにも期待してほしいです」
すでに武尊の気持ちは前を向いている。