ナウル共和国。日本から直線距離で約5000km、オーストラリアとハワイの間にある太平洋の小さな島国だ。面積は21.1平方キロメートルと品川区とほぼ同じ広さで、約1万3000人が生活している。
かつては、リン鉱石の輸出で栄えたナウル。しかし、唯一の産業だったリン鉱石がほぼ枯渇してしまい、厳しい経済状況に陥った。そして1989年には、日本にあったナウル領事館も財政上の理由から閉鎖されてしまった。
その後も、密接な関係を求めていた日本とナウル。そして、領事館閉鎖から約30年、長年の時を経て今年10月、ついに政府観光局の日本事務所が開設されたのだ。また、Twitterも開始された。
「ナウル共和国政府観光局の日本語アカウントを開設しました。日本の皆様には、是非フォローをいただけると嬉しいです。当面はナウルの人口1万3000フォロワーを目指します!」
そう目標を立ててから4日後。事態が一変した。
「来月の報告書で大統領を驚かせたいので日本の皆様にさらなるフォロー協力をいただけるとありがたいです。本国政府アカウントが4696フォロワーで、それを超えればわかりやすく驚くと思います!」
大統領を驚かせたい。その思いが日本人の心を動かしたのか、この投稿からわずか1日でフォロワー数が1万人を超えた。現在のフォロワー数は、なんと3.1万人。国の人口の倍以上に急増している。そこで『ABEMAヒルズ』は、このTwitterを更新している“中の人”を取材した。
「ぼちぼちやっていこうと思っていたんですよ。知名度も観光地もないですし、ちょっとずつ知ってもらえたらなあって思っていたので。非常に驚いています」
ちなみに、観光におけるアピールポイントを聞いてみると。
「一番のアピールポイントは……難しいな。考えてますけどかなり行きづらい国なので、逆に『そういうとこに行けたよ』という達成感。日本人は年間数人しか来ませんから、そういう達成感を味わってもらいたいなと思っています」
日本人にとって、決して近いとは言えないナウル。しかし、国家間にこれまで関係がないわけではない。第二次世界大戦中の1942年、日本軍がナウルを占領。強制連行された多くの住民が死亡したという、歴史的な関わりがあった。
今は、ナウルと日本の新たな関係をフォロワーと一緒に作っていきたいという「中の人」。現在の最終目標は「ナウルの状況を理解した上で来てくれる観光客を増やすこと」だと、あくまで謙虚に語る。
「料理とかもそんなおいしい所がないんですよ。料理人とかもあんまりいません。行くのもビザとかも大変ですから、そういうのが全部わかって大丈夫な人来てくださいという感じ。ただゆったりな島なので、そういう都会の喧騒から離れて(ゆっくりしてほしい)」
なお、今後の目標としては、「世界最小の共和国として日本一を目指します。折角なら政府観光局フォロワー日本一(約7万)を目指したら?という声をいただき頑張ることを決意しました。2022年中を達成目標とします」とTwitterで表明している。
ある意味ニッチなアカウントのヒット。メディア企業を経営するニュース解説YouTuberの石田健氏は「SNSのバズの在り方が変わってきていると思う。数年前だと企業が面白いプロモーションをしたりネタに走る、奇をてらったりしたものがウケていたのが、多くの人がSNSをやり始めたことで、コンテンツそのものの面白さや興味が高まっているだろうと思う」との見方を示す。
一方で、SNS上で話題が消費されることについては懸念を示し、「Twitterなどでもよくある話で、今回も『珍しい国がある』『バズっている』だけではなくて、せっかくならナウルを知る機会になるといいと思う」と指摘。「第二次世界大戦時に日本軍によってナウルの人が亡くなったが、1970年代には日本とナウルの間で貿易が行われてもいた。現在は、オーストラリアに来た難民がナウルに行き、その代わりにオーストラリアから財政的な支援を受ける“パシフィック・ソリューション”という制度があって、国際的に問題視されている。これは決してナウルが良い悪いという話ではなく、小さい国だからこそ経済的に苦しい状況にあったり、あるいは地球温暖化によって特に太平洋の小さい島国が苦境に陥っているといった問題を抱えている。過去に起きたことだけでなく、今起きている問題も知って、ナウルについて多角的に理解できるようになるといいと思う」とした。
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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