17日に都内で実施される、内閣と自民党による中曽根康弘元総理の合同葬。この合同葬に合わせて、文部科学省が全国の国立大学などに弔旗を揚げることや、黙とうをして弔意を求める通知を出していたことがわかった。
合同葬の費用は政府と自民党が折半する方針で、共同通信によると、総額は2億円近くに上ると言われている。政府が今年度の予備費から約9600万円を計上すると明らかにすると、「費用が高すぎる」「税金を使うのか、全額自民党が支払うべきだ」などの批判が上がっていた。これについて、加藤官房長官は「新型コロナウイルス対策に万全を期す観点から積み上げた。必要最小限だ」と説明している。
過去にも、2000年に小渕元総理の内閣・自民党合同葬が行われ、弔意表明は政府の趣旨に沿って取り計らうよう通知されていた。この時、都内の公立の学校では日の丸を半旗にして弔意表明を行った。
今回の合同葬でも、各都道府県教育委員会には「参考までにお知らせします」として、国立大学への通知と同様の文書が送付されたということだ。
国立大学法人の東京工業大学で准教授を務める社会学者の西田亮介氏は、「そもそも若い学生さんたちを含めて、『中曽根さんって誰?』『中曽根総理って何をしたの?』と知らない人が多いのではないか。半旗が掲げられたとしても、その意味も理解しない人が、教職員含め特に若い世代を中心に意外といる印象だ。そのうえで、日本学術会議の問題が燻るなか、大学や研究者、学界にある種の試金石として、政府に肯定的な立場を取りますか、それとも反対しますかという踏み絵の要素を含めて出してきたのではないか」と話す。
菅総理は政権発足時、「前例主義を打破する」と述べたが、今回の前例踏襲は「つまみ食い的だ」と西田氏。「政府にとって都合がいい時には前例を踏襲するし、都合が悪い時には大胆に改革をすると説明する。うまく使い分けている。ただし、実際には国旗国歌法の制定もあり、すでに国立大学では概ね休日に国旗を掲揚し、式典で国家を斉唱するようになっている。それ以上に、何らかの強制力を伴うものでもなければ、この出来事1つをとって学問が生きるの死ぬのということではなくて、これまでと同程度に大学の自治が守られているのかどうか実質に目を向けていく態度や視点が重要ではないか」と指摘した。
一方、メディア企業を運営するニュース解説YouTuberの石田健氏は「当然批判は出てくるだろう」と話す。
「橋本元総理や小渕元総理に際しても、各学校や教育機関への同様の通知は出されていて、安倍政権、菅政権になって急にこの問題の対応が変わったと理解するのは誤り。ただ、学術会議の問題では前例にのっとらないということを言っているわけで、政府の対応に注目が集まっているこの時期だからこそ、メッセージのちぐはぐさについては批判も出てくるだろう」
また、説明不足のままでは政権に影響する可能性もあると指摘した。
「安倍政権下でも、官邸主導や政治家主導など政治家が強い意思を持ってメッセージを発信することに批判が集まるようになってきた。今回、菅総理は前例踏襲をしないと言いながら、一方では前例通りと言っていて、こうした総理の姿勢に国民が『安倍政権のネガティブな部分を引き継いでいるんじゃないか』と思うようになった場合、支持率にも影響が出るかもしれない。政権発足当初はご祝儀相場で高い支持率だったが、最近の調査では少し落ちてきたとも言われていて、十分に説明できない場合は政権にとってもネガティブな要素が強くなる可能性がある」
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