東大卒、36歳の官僚がKrushのリングで大激闘 松本篤人の「生き方をぶつける」闘い
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 10月17日に開催された立ち技格闘技イベントKrushの後楽園ホール大会で、異色の対決が実現した。セミファイナルのスーパー・ライト級マッチ、鈴木勇人vs松本篤人だ。

 元チャンピオンの鈴木は少年時代に暴走族だった。少年院、刑務所に入ったこともあり、格闘技によって更生したという経歴がある。対する松本は東京大学を卒業して厚生労働省に入省した、いわば“官僚ファイター”だ。36歳、妻と2人の子供がいる。

 まったく対照的な人生。格闘技のリングでなければ、この2人が出会うことはなかっただろう。しかし試合になれば元不良も東大卒もない。2人は真っ向から殴り合い、最後はボディブローで鈴木がKO勝ち。だが松本のアグレッシブな闘いぶりも目立った。大会ベストバウトと言っていいだろう。リング上の松本を見て“子持ちの公務員”だと思う者はいないはずだ。勝った鈴木は試合後に「松本選手の印象が180度変わりました」とコメントしている。

【映像】官僚ファイター、激しく闘い、激しく散る

 鈴木の経歴に「格闘技をやってなかったら会わなかったでしょうね」と松本。さらに「世の中のすべての人たちの声を聞いて、取り入れてよりベターな世の中を作るのが公務員なので。鈴木選手と闘うことができたのは、公務員としての僕の強みだと思います。他の公務員にはないつながりが僕にはあるということですよね」とも。

 試合用トランクスには「働き方改革」の文字。この夏からは財務省に出向になり、税制にまつわる仕事をしているという。

「官庁にもそれぞれ繁忙期がありまして、夏は霞が関でも上のほうの残業時間でしたね。来週からまた繁忙期が始まるので、試合のタイミングとしては今回がベストでした。けっこう練習できたかなと。幸せでした。11月、12月だったら試合は無理だったかもしれない」

 ジムで練習できるのは週2回ほど。選手が集まる「プロ練」ではなく、通常のクラスで一般会員と試合に向けた準備をする。

「自分が楽しむために来ている会員さんたちが、僕の試合のために対戦相手の(ファイトスタイルを)真似してくれたり。今回は財務省の仲間も会場に来てくれました。僕は専業ファイターではないけど、そういう僕にも応援してくれる人はいる。その人たちのためにも頑張りたいです」

 会場には妻とともに「上の子も見に来てくれた」。その日は1日、一緒だった。

「昼間、土曜日はスイミングがあるので連れて行って着替えさせて、帰ってから平日に習ってるピアノを教えて。僕も子供の時にやってたので。それから黒ひげ危機一髪で遊んでご飯を食べて。いつもと同じような土曜日の過ごし方でしたね。そこから試合に向かうという。スイミングの行き帰りに“パパどうやって勝てばいいかな”って聞いたら“ウルトラマンタロウのパンチ!”って言われたんですけど、出せなかった(苦笑)」

 鈴木戦まで松本は連勝。上位を相手に結果を残し、ここで勝てばタイトル戦線というところまできた。今回は敗れたものの、内容は決して悪くない。本人もあきらめるつもりはないという。

キックボクシングが好きなので、これでやめるという気持ちはないです。36のおっさんですけど、まだ伸びしろはあると思ってるので。おっさんのレボリューションです」

 格闘技を始めたのは大学時代の終わり頃。だから「公務員がキックボクシングをやっているのではなく、キックボクシングをやっている人間が公務員になったと思ってます」と松本。2つの異なる世界を行き来することに充実感があるという。

「やっぱり大人になって仕事をしていると、白黒つかないようなことも多いですよね。公務員なので営業成績がはっきり出るというものでもないですし。逆に格闘技は白黒はっきりつく面白さと厳しさがある」

 もっと格闘技に集中して、たくさん練習したいという気持ちになることはないか。そう聞くと、松本は「若い頃は考えましたけど、プロデビューしたのも結婚してからなので。今の僕にはそれは“たられば”です」と言う。そして「今そんな生活をしたら体がもたないですね」と笑った。

 週2回、一般クラスでの練習でも闘える。自分には自分なりのやり方がある。それを信じて松本はリングに上がる。

「仕事しながらでは無理なんじゃないかっていう見方もあると思いますけど、自分で決めてしまう限界以上のものがあるんじゃないかって。小さい頃からやってなくても、自分の生きてきたものをぶつけられるのが格闘技。強くなるにもいろんなやり方があるはず」

 一度はプロで試合がしてみたいと思い、それが実現すると「後楽園でやってみたい」と思った。少しずつ目標を達成し、その積み重ねでここまできた。絶対にチャンピオンになると大きなことは言わない。しかし限界を感じてもいない。まずは次の試合で、また勝つ姿を子供に見せたいという。

「子供の前で勝つところを見せられなかったのが悔しいですね。リングを降りた時、ちょっとウルっときちゃいました。次は挽回しないと」

 父親であり公務員であり格闘家としては若くもない。だが、だからこそ松本は強い。

文/橋本宗洋

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