夏野剛氏「IT業界なら給料の1.5倍に20~30%上乗せが妥当だ」 GoToトラベル事務局職員の「日当」、“高すぎて国民の理解を得られない”は本当か
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 政府が業務を委託する形で各地に設置され、JTBなど大手旅行代理店の社員などが出向し運営している「GoToトラベル事務局」。その事務局長には6万9800円、平均で4万円あまりが職員に支給されるという「日当」の額を巡り論争が起きている。

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 19日に開かれた「野党合同ヒアリング」では、立憲民主党の原口一博議員が「1日4万5000円もらえる職種というのが今、本当にあるのか」、山井和則議員が「一般の感覚からすると高すぎるのではないか」と観光庁の担当者を追及。担当者は「社会保険の事業主負担分といったものが込み込みの数字で単価を設定している。例えば最多価格帯の4万600円のうち、半額近くが実際には基本給に当たる部分になるのではないかと考えていて、これはそれほど高いものではない」と説明した。

 労働法に詳しい岡芹健夫弁護士は『ABEMA Prime』の取材に「緊急的に人を確保する必要があり、金額面の交渉は難しかっただろう。仕事内容はわからないのでベストだとは言えないが、専門的な仕事を考慮した能力費も含まれるので、妥当な金額とも言える」と話す。また、旅行業界に強い派遣会社の社長は「日給と日当は別物。日給は1日単位で個人に支払われる給料で、日当は社会保障費等を含めた企業に支払われる費用。派遣業界では、給料の約1.3倍の日当で会社としての利益はプラスマイナス0になる」と説明する。

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 観光業に詳しい淑徳大学の千葉千枝子教授は「まず、日当と日給はまず違うよということ。まずは派遣元の旅行会社に入るわけで、社員に丸々入るわけではない。さらに現場に出向いている人たちは、いわゆるエンジニアだと考えていただきたい。それなりの能力、技能を持った人たちが政府の機関に出向しているという話だ」と話す。

■夏野氏「IT業界なら1.5倍にさらに20~30%上乗せが妥当だ」

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 作家の乙武洋匡氏は「“そんな職種はあるのか”ということだが、国会議員が国会に出るのは多く見積もって年に200日ぐらいだろうか。歳費が2000万だとすれば、日当に直すと10万円だ。“あるじゃないか”と言いたい」と苦言を呈する。

 ドワンゴ社長の慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「大手企業が社員を省庁に出向させる場合、人件費をもらわないこともある。原口さんはそれと勘違いされたんじゃないか」とした上で、次のように話す。

 「業界を救うという意味合いもあって、旅行代理店業界の人件費相当を設定しているのではないかと推測する。また、その期間は所属会社の仕事は全くできないわけだし、急に人を集めれば単価が高くなるのは当たり前だ。企業は年金の積み立てもしないといけないので、給料(額面)の1.5倍くらいになるのが普通だろうし、仮にIT業界から人を出すとしたら、人手が足りないので、さらに20%とか30%上乗せする、という考え方になると思う。ちなみに僕は規制改革推進会議という国の常設会議の委員もやっているが、日当はめちゃ安い。一番多かった時でも、会議に毎日出席して月8万円だよ(笑)」。

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 一方、「野党もメディアも、コロナによって傷んでいる業界を救えと言っていた。だから旅行業界のためのトラベルを始め、あらゆるGo To キャンペーンをガンガンやっている。しかし、この日当が問題になるのなら、トラベル事業の5割補助(上限2万円)は高いと言わないのだろうか。これも全て国民の税金で賄っているわけで、我々の税負担によって返すことになる。むしろ、将来的に大丈夫なの?、本当に救うべきものと、そこまでやらなくていいというものを分けないといけないんじゃないの?という議論をしなくてはならないと思う」と問題提起した。

■事業を3月以降も延長するよう求める声も

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 「Go To トラベル」事業をめぐっては、これまでも様々な懸念点が浮上してきた。

 千葉氏は「事業者数100万社以上、直接雇用900万人以上という、非常に大きな業界だ。さらに日本は観光立国推進基本法を制定し、“観光立国”を目指していこうという中にあった。事業を受託した各社を見ると、オリンピック・パラリンピックのオフィシャルパートナー、スポンサーとして多額のスポンサー料を支払い、大会に伴う需要増に期待していた大手企業が多い。もしオリンピックが実施されるのであれば、政府としては今ここで倒れられては困るという思いがあるのだと思う。その点で、政府の対応は非常に早かったと思う。逆に言えば“見切り発車”で走りながら直していこうところもあった。そのため、まずは大手の方にお金が回るような形になってしまっていたが、これから少しずつ中小の旅行会社にも回っていくと思う」と説明。

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 「オンライントラベル、直接予約に多くの消費者が動いたというところで、実際は大手の旅行会社もさほどの利益は得ていないのではないか。年度ごとの予算なので1月31日までに宿泊をしてくださいね、ということになっているが、手続きが非常に煩雑だという声も旅行会社の方から聞くし、感染を恐れて中高年層が動いていない状況もある。そのため、投じられた1.2兆円という巨費が使いきれてないというのが現状だ。来年3月までに使い切るのは難しいだろうし、延ばすべきだという声もある。また、高級な宿泊施設から埋まっている現実もあるが、期間を延ばせばビジネスホテルなどの利用も増えていくのではないか」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

GoTo事務局で日当7万円 「国民の理解得られぬ」
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