米司法省は、Google社がネット検索と検索広告市場での競争を阻害しているとして、テキサス州など11州と共に反トラスト法(日本の独占禁止法にあたる)違反で連邦地裁に提訴した。
・【映像】アメリカ司法省がグーグルを提訴"検索・広告"競争阻害と指摘
問題視されているのは、GoogleがAppleなどのモバイル機器やパソコンの初期設定をGoogleサービスに限定する契約を結んでいるということ(このため、GoogleはAppleに対し年間最大1兆3000億円を支払っているとされる)、また、Android端末などにプリインストールされているGoogleのサービスを削除できないようにすることで、他社の参入を阻んでいるというものだ。
こうした点について、ローゼン司法副長官は「Googleは競争を阻害する排他的なやり方で独占を維持してきた。政府が反トラスト法を執行して競争を促さなければ、次の技術革新の波はやってこないだろう」と述べている。
一方、Google側は対決姿勢を見せており、「司法省の提訴には重大な欠陥がある。人々がGoogleを使うのは強制されたからではなく自ら選んだからだ」とコメントしている。
21日の『ABEMA Prime』に出演したKDDI総合研究所リサーチフェローの小林雅一氏は「Googleは検索エンジン業者としてビジネスを始めたが、成長するとともに検索という形で集めた情報を使って様々な領域にビジネスを拡張してきた。インターネットの入り口になっている検索エンジンをGoogleに独占されてしまうことは、他の会社にとってはビジネスチャンスが奪われてしまい、新しい会社が育ちにくくなることにもつながる。司法省が提訴したのは、そういう理由ではないか」と話す。
「Appleに1兆円以上のお金を払って優遇してもらっているが、これはシャーマン法という反トラスト法の中心になっている法律で制限されているようだ。そこに絞り込んで訴えているのも、司法省のスタッフには自信があるからだとみられている」。
他方、Googleの主張するように、消費者にとってはあくまでも便利なサービスであり、経済的に不利益を被っているということではないとも考えられる。
小林氏は「本来、独占の何がいけないのかといえば、それによって商品が高くなり、消費者が困ることだ。しかし今回はそういうケースではないし、一般の消費者も便利だと感じて何気なくGoogleを使っていると思う。それでも司法省としては、他の業者が育たないことで消費者の選択肢が失われてしまえば不利益に繋がるということだ」と説明した。
また、独占禁止法に詳しい池田毅弁護士は「反トラスト法(独禁法)が完璧ではないからGAFAが強くなっている。しかし独禁法よりも優れた規制の仕組み・根拠は思い浮かばない。今回の提訴は従来の独禁法運用と同様、“検索システムの独占により広告費の高騰を招いている”という指摘だが、“情報を独占しているから強い検索エンジンを作り市場を独占している”、という点を問題視したとしたら、新しい適用例だ」と話す。
小林氏は「確かにシャーマン法は1890年にできた古い法律なので、Googleのような現代の企業に適用するには無理があることも間違いない。そこで司法省の裁判とは別に、議会も新たな法律を作り対応しようとしている」とした。
慶應大学特別招聘教授の夏野剛氏は「日本で“提訴された”と聞くとすぐに負けてしまうのではないかと思うが、アメリカではブラフのような形でも提訴する。その意味ではGoogleに対する牽制ということではないか。本丸はGoogle Playの有料課金や、Apple対エピックゲームズの訴訟で、こちらの方が消費者も含め影響が大きい。最後はそこの領域で譲歩を迫るという戦略があるんじゃないかとか勘ぐりたくなる」とコメント。
また、政府や議会でGoogleの事業分割も視野に入れていると報じられていることについては、「AT&Tの分割の時もそうだが、アメリカでは一つの企業が大きくなり過ぎ、分割した方が国民の利益になるという時は本当にやる。ただ、GoogleもGoogle+をやめちゃったし、コミュニティ系のサービスでは全滅している。SNS系でも買収してきたYouTube以外は全滅だ。Googleが全てを支配するということはないと思う。検索部門と広告部門の分割するというよりも、やはりこれもアプリストアの手数料の問題だ。今の30%が15%になれば、アプリを提供する世界中の企業の利益率は倍以上になるということだ。株式市場にも影響が出るし、トランプが“捨て身の作戦”にするかもしれない。こちらも分割案を出しておくことによって、Google PlayとかApp Storeの手数料引き下げを達成するきっかけにするということかもしれない」との見方を示した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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