2022年9月末には満杯になると予想されている、福島第一原発で溜まり続ける処理水の貯蔵タンク。27日の関係閣僚会議で正式決定されるはずだった海洋放出について、梶山弘志経済産業大臣は23日、「様々な関係者から意見を伺ってきた。いただいたご意見に対する政府の考えも今後示していく必要がある」との見解を示し、決定は来月以降に持ち越されることとなった。
背景にあるのは、風評被害に対する地元の懸念だ。原発事故から9年あまり。様々な形で安全が確認され、PRも展開されたことにより人々の不安も薄らいできたが、ある鮮魚売り場の店長は「処理水の問題というのは多少ならずとも風評(被害)が起きるのではないかという危惧は持っている」、相馬双葉漁協の立谷寛治組合長も「風評被害がどんどんなくなってきた中で、本当に我々の漁業は大丈夫なのか」と危機感をあらわにする。
■細野豪志議員「“福島は流してはいけない”と言うのは、福島に対する差別だ」
原田義昭前環境大臣が退任に合わせ「(処理水は)思い切って放出して希釈する他にあまり選択肢はない」と発言、自身のFacebookに「誰かが言わなければならない。自分はその捨て石になってもいい」と投稿したのは昨年9月のこと。梶山経産相も「経済対策を含めた具体的な風評対策、国内外への丁寧な情報発信といった論点について、これまでの検討をより一層深め、今後の政府決定に繋げていけるようにお願いする」と話している。
民主党政権で原発事故担当大臣や環境大臣として対応に当たった細野豪志衆院議員は「約1000基あるタンクが全て放射性廃棄物になるという現実は知っておかないといけないし、これを作業員の方が1日2回チェックして回っていることも知ってほしい。その労力たるや大変なもので、作業中に転落して亡くなった方もいる。こうした現状を考えれば、決断を先延ばしにすることはできないし、私は海洋放出しかないと考えている。その観点で言えば原田前環境大臣の発言がきっかけになったことは事実だろうし、原子力開発機構で働いた経験を持つ梶山さんが経産大臣に就任したこと、そして菅内閣で留任したことは非常に大きな意味がある。海洋放出を決断をしてから放出が始まるまでに2年という時間がある。その間、海産物などへの風評被害が出た場合、どのように東電、そして政府が補償をしていくのか、その議論に入りたい、そこへ向け、着実に前に進めようとしていることは間違いないと思う」と話す。
また、想定されている海洋放出までの流れについて細野議員は「想定されている処理水に含まれるトリチウムは1リットルあたり1500ベクレルと、かなり安全サイドに立った方法だ。近ごろ韓国から様々な批判が出てきているが、実は韓国が出している処理水は1リットル当たり4万ベクレルと、桁が1つ違う。確かにタンクの中にはトリチウム以外のものが含まれているが、全て二次処理をし、定められた濃度以下にする。だからそのまま流すという説明は完全なデマだ。世界中で出されているものと全く同じなのに、“福島だけ流してはいけない”と言うのは、福島に対する差別だ。もちろん、福島の皆さんが反対するお気持ちはよくわかる。しかし、世界中で行われているものと同じ方法で海洋放出をするのが被害を最も少なくする方法だということを説明し、補償のための枠組みを示すのが、今の政府の責任だ。“最後まで一緒に歩む”という姿勢、メッセージを出さなければならない」とした。
さらに細野議員は風評被害の問題に関して、「風評被害に苦しんできた福島の人が不安を口にされるのは分かる。しかし福島以外の方々が批判するのは、やはり福島に対する差別だと思う。その意味でも、テレビも含めメディアの責任は極めて重い。不安に思っている方がいることを報じるのはいい。しかし、それだけを報じる事自体が、まさに風評被害の拡大に繋がってしまっている。やはり科学的には決着が付いているということも併せて報じなければならないと思う」と訴えた。
■カンニング竹山「時間が無いんです。関東の皆さん、自分たちの問題なんだということを分かってください」
福島県南相馬出身のテレビ朝日・佐藤ちひろアナウンサーは「学校などでも放射線の授業が普通に行われていた。地元の人たちから国内はもちろん、国外にも安全性を理解して欲しいという話を聞いたことがある」と振り返る。
震災以降、福島県を度々訪れているカンニング竹山は「もう時間がない。もっとみんなで議論しなければいけない。特に関東の皆さんには本当に考えていただきたい。福島第一原発の電気は我々が使っていたんですよ。だから我々の問題なんだということを分かってください」と強い口調で呼びかける。
「日本のメディアは、この問題をやらなさ過ぎだ。福島の野菜や米の問題もそうだ。一袋一袋、線量を測ってOKだったものしか出荷させていないわけで、言わば日本で一番安全なのが福島の農作物だ。そうだと分かれば皆さんも“ああ”となるが、メディアが伝えない。だから分からない人が未だにいっぱいいる。極端なことを言えば、福島ではおばちゃんが線量計の数字の意味を知っていたりする。でも福島から一歩出ると、ほとんどの人は知らない。それも福島のメディアは取り上げるのに、中央のメディアが取り上げないからだ。処理水の何たるか、世界の原発では昔から流しているということをちゃんと伝えていけば、風評は減っていくはずだ」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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