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(会見でも乱闘、スーツを引き裂きあった遠藤と佐々木)

 2日連続の乱闘だった。かつては盟友、あるいは師弟の関係とも言えた遠藤哲哉と佐々木大輔が、なぜこうなったのか。

 今年6月、遠藤はベテラン・田中将斗(ZERO1)を下してKO-D無差別級王座2度目の戴冠。防衛を重ね、11.3大田区総合体育館でのタイトルマッチでケニー・オメガを挑戦者に指名している。ケニーは昨年11月、久々にDDT参戦を果たすと竹下幸之介と遠藤の新世代トップ選手2人をこき下ろした。DDTの現在と未来を担うものとして、遠藤はケニーを無視するわけにはいかなかったのだ。

 しかしコロナ禍でケニーの来日は不可能。ならばと遠藤は佐々木大輔を11.3大田区大会での挑戦者に指名した。佐々木は遠藤が所属するユニット・DAMNATIONの創設者。DAMNATIONに遠藤を誘ったのも佐々木だった。

「もっと自由にプロレスをやっていいんだ」

 そのことを佐々木から学んだと遠藤。もともと身体能力の高さで知られ、抜群の高さと空中姿勢を誇るシューティングスター・プレスが必殺技。佐々木と組むことで、そこにインサイドワークや観客の目を引くコミカルな要素が加わり、遠藤はより奥深いレスラーになったと言える。

 師匠であり盟友であり、あるいは恩人。全幅の信頼を置いてきた佐々木とのタイトルマッチを、リスペクトをともなった同門対決にすることもできた。しかし両者ともに、そうしなかった。

 タッグを組む形での前哨戦が終わると、佐々木は自分に歯向かってきた遠藤を襲撃。だが遠藤も織り込み済みで、DAMNATIONの他のメンバーとともに佐々木に制裁を加えたのだった。いわば遠藤によるクーデターだ。結果、DAMNATIONは遠藤派と佐々木派に分裂することとなった。

 非情に徹しなければ佐々木大輔を超えられない。ユニットを割るくらいの覚悟がなければ佐々木大輔は倒せない。遠藤の決意を感じさせる行動だった。

 10月25日の後楽園ホール大会では両者が調印式に臨み、スーツ姿で乱闘を展開。翌日の記者会見でも舌戦を繰り広げ、撮影中の佐々木の頭突きがきっかけで掴み合い、殴り合いに。スーツを引き裂く大喧嘩は、まさに“私闘”だ。

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(遠藤の造反以降、佐々木は目の周りを黒く塗り不気味さと無軌道さを増している)

 チャンピオンとして、いま自分が何をすべきか。遠藤がそれを考えた結果がケニーへの挑戦者指名であり、佐々木戦だったのだろう。ケニーを倒さなければDDTの未来は切り拓けない。同じように、佐々木大輔を超えなければ“チャンピオン・遠藤哲哉”は確立できない。誰かの下にいる人間がベルトを巻いていては、団体のトップに君臨することなど不可能だ。遠藤はそう考えたのではないか。

「俺が塗ったメッキをはがしてやる」

 そう佐々木は言う。チャンピオンであろうがなんだろうが、遠藤は自分の絶対的な影響下にあると考えているのだ。簡単に言えば、今の遠藤哲哉は佐々木大輔が作ったということ。

 だからこそ、遠藤は佐々木を超える必要があるのだ。ましてベルトを譲るわけにはいかない。佐々木はベルトも「メッキ」と言うが、そこは絶対に認めない。このベルトは、長きにわたってマット界のトップ戦線で活躍する田中から「自分の力で取った、遠藤哲哉の証明」だからだ。遠藤哲哉が遠藤哲哉としてDDTマットの中央に立つために、佐々木に勝ってベルトを防衛しなければならない。

 空中殺法でも投げ技でも固め技でもフィニッシュできるオールラウンダー。今はそこに王者としての精神性、ドラマ性も備わった。これからどんなチャンピオンになるかは、正直まだ分からない。すべては佐々木に勝ってからだ。ただ佐々木を超えた時、それがどんな姿であれ遠藤哲哉は誰もが認める“DDTのチャンピオン”になっているだろう。

文/橋本宗洋

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