27日、ANAホールディングスは、今期5100億円の最終赤字になるという見通しを示した。新型コロナウイルスの打撃により、国内線では徐々に回復を見せているものの、国際線は厳しい状況が続いている。
【映像】若新雄純氏「新卒の概念をつくり直して」 人生に必要な“モラトリアム期”
また、ANAホールディングスは、企業として生まれ変わるため、保有している機体や人件費の見直しによる4000億円ものコスト削減を図ると発表。この中で注目されているのが、雇用維持のためのグループ外企業への出向だ。12月までにおよそ10社、100人程度が出向し、来年春には400人以上を見込んでいるという。家電量販店やスーパーなどでサービススキル向上や交流を通じた人財育成を目的としているとしているが、異業種への出向は“コロナ苦境”の実態を浮き彫りにしている。
ANAは、既に来年度入社の新卒採用も中止。航空業界を夢見て入社した社員や目指していた学生の人生が大きく揺らぐ1年となった。
新卒採用をめぐっては、27日、政府が経団連など経済4団体に対し、学生が卒業後、少なくとも3年以内は新卒扱いとするなどを要請。坂本哲志一億総活躍担当大臣は「第二の就職氷河期世代を作らないよう関係省庁と連携して、新卒者等の採用維持・促進に向けて取りまとめた」とした。これに対し、経団連の冨田副会長は「企業にとって安定した採用を続けることは、非常に大きな戦略でもある」として、要請に応じる考えを示している。
なかなか収束が見えない新型コロナの影響。政府の要請に対し、ネット上では「次年度には若い新卒が出てくるわけで企業は選ぶでしょうね…」「そもそも、なんで新卒かそうでないかに拘るんだろう?」「 行きたい業種・職種で働けないから、3年間も就活するって人もいないでしょう…」など、疑問の声も少なくない。
慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は「22歳、23歳で1社を絶対選ばなきゃいけないことはないと思う」と意見を述べる。
「僕個人としては、新型コロナ関係なく(卒業後3年間の新卒扱いは)早くそうなったら良いなと思っていた。22歳、23歳で1社を絶対選ばなきゃいけないってことはない。今はいろいろな会社の形があって、大学卒業後からしばらくインターンをやってみたり、アルバイトしてみたり、興味がある会社に社員ではないけれど少し関わってみることができる。その後に『もうちょっと勉強したい』と思ったら、学び直す選択肢もある」
その上で、若新氏は既卒者の“新卒期間”について、こう提案する。
「卒業から5年程度は、いつでも“新卒”として(採用を)受けられるという形が良いのでは。今年だけこれ(卒業後3年間は新卒)をやってしまうと、来年以降また次々卒業生が出て、今年の卒業生が来年の卒業生とかち合ってしまう。もし新型コロナが収まっても、新卒と言える年数の延長は、ずっと変えなくて良いのではないか。充実したキャリア観をつくるモラトリアム期を余裕を持って過ごすことで、自分が今後どんな仕事をして人生を生きていきたいのか、良い意味で納得感が増すだろう。先進国の多くは、大学卒業の平均年齢も高くなってきている。ちゃんと仕事を決める年齢の平均が20代後半という国もある。もともと、青年期におけるモラトリアム期というのは、必要な時間だという意味で使われていた。新卒という概念をつくり直していく必要がある時にきたのではないか」
一方で「(採用が)一括でできないから企業の手間は増えるだろう」と、企業側の労力を指摘する若新氏。長期化する新型コロナと付き合いながら採用活動を行っていくには、まだまだ多くの課題が残されている。
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