「大阪都構想」の是非を問う住民投票が1日に行われ、賛成が67万5829票、反対が69万2996票と僅差で反対が上回り否決された。5年前の住民投票に続き、2度目の否決となる。
前回の住民投票では都構想に反対していた公明党が、住民サービスが維持できるとして賛成に転じていた。一方、自民党は特別区の設置にコストがかかり、住民サービスが低下するとして反対。さらに、共産党やれいわ新選組も反対を表明していた。与党の自民党と公明党が反対と賛成に分かれ、国政では対立する自民党と野党がともに反対するという“ねじれ現象”が起きていた。
大阪市民からは「子どもが3人いるので、未来のための投資と思って賛成に投票した」「反対。いいことばっかり言って、悪いことはひとつも言わなかった。納得いかなかったからそう(反対)しただけ」という声も。2度の否決について、明星大学准教授で臨床心理士の藤井靖氏は「現状の府市の連携が評価されたり、維新の身を切る改革の姿勢などが信頼されたことが半数近い賛成票につながったのでは」としながらも、「心理学的に見ると、否決じゃないと説明がつかない部分がある」との見方を示す。
「見えている“現状”というものと、見えないが期待するという“未来”との戦い。そうなった時に、今見えているものに明確な不満を感じていなければ、そっち(現状維持)を取るのが基本的な人の心理だと思う。趣旨は仕組みを変える試みなのでそもそも難しい部分はあるが,具体的に体感を伴うビジョンを示せなかった維新の戦略は、なかなかうまくいかなかったのでは。人は“損をしたくない”という感覚を大事にするので、何かが変わって今の満足がなくなってしまうことに対する不安が、否決という判断につながったと思う。リスクを取ってまで、見えない発展のビジョンを追求できる人は、そもそも多くないということ」
その中で、反対派の“情に訴えかける”戦略がうまく機能したとした。
「反対派は都構想の重箱の隅をつつくようなところもあったが、いろいろ具体化して複雑化して、最後は“損失回避の感情に訴える”戦略をとったと思う。自民党のポスターで、大阪市の市章が消えてなくなるようなものを出していたが、例え何らかの問題があると分かっていても、自分が生まれ育った市区町村がなくなることに対する人の抵抗感はものすごく大きい。立憲民主党の議員も、歴史や伝統、プライドなどの言葉を使って、大阪市の存続を訴えていた。抽象的で対案もない訴えだが、どちらがいいのか調べてもなかなか判断しづらいだけに、情に訴える作戦は機能したと思う。吉村知事や松井市長は、情で訴えかけている反対派に対してある程度情で対抗してもよかったのではないか。泣いて訴えるぐらいこもった感情を前面に打ち出しても良かったと思う」
また、この住民投票を通して政治家としての姿勢を見ることが必要だと訴えた。
「表面的な言葉や行動だけでなく、その人がどういう思いを持って政治家をやっているのか。僕は心理学が専門でもあるので、“この人の本音はどこにあるのか”という見方をするところがある。例えば、維新の松井市長や吉村知事はこの10年くらい都構想のことをずっとやってきているわけで、自分たちに利益があるのかと穿った見方をした時に、功名心や自己顕示はあるかもしれないが市民にデメリットになるようなことはあまり思いつかなかった。一方で、自民党なんかを見ると、大阪を良くしていくような対案を示しているわけではなく、この人たちは何のために政治家をやっているのかと考えた。少し引いた視点で見た時に、政治家の行動は見えない部分も含めてある種信頼して投票するしかないわけだが、そこをうかがい知ろうとする姿勢は我々に求められるところだと思う」
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