「よくわからない一方で、見直しを求める声の意外な多さが深刻だ」 学術会議問題、世論とは温度差?
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 日本学術会議の任命拒否をめぐる問題で5日、野党は改善点として菅総理があげた「多様性の確保」が、今回の人事でかえって失われていると厳しく追求した。

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 任命拒否の理由について「法令に基づいて行った」とする菅総理だが、身内の自民党からの質問に新たに「以前は学術会議から正式の推薦名簿が提出される前に、内閣府の事務局などと学術会議会長との間で一定の調整が行われていた。一方、今回の任命にあたってはそうした推薦前の調整が働かず、結果として、学術会議から推薦された者の中に任命に至らなかった者が生じた」と答えた。

 野党は任命拒否に関与したとして杉田副長官の国会招致を改めて求めたが、与党はこれを拒否。菅総理の発言については、「学術会議の独立性を侵害する」と問題視している。

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 学術会議の任命拒否について、ANN世論調査(10月17日・18日、電話調査、全国18歳以上の男女1858人)によれば、菅総理の判断が適切だと「思う」と答えたのが28%で、「思わない」が42%、「わからない、答えない」が30%。また、学術会議のあり方を見直すべきだと「思う」と答えたのが64%で、「思わない」が13%、「わからない、答えない」が23%だった。

 菅総理の判断への世論について、東京工業大学准教授の西田亮介氏は「僕自身はこの手続きは適切ではなかったと思っている。成熟した自由民主主義国における自立したアカデミーは、原則、アカデミーの自身の判断でメンバーを決める。政治がその在り方を変えるのであれば事前協議をするべきだった。一方で、世の中の受け止めは学界にとって厳しい事態だ。総理の判断が適切かどうかの割合が意外と拮抗し、『わからない』という人が30%もいる。つまり、この問題をどう考えればいいのかわからない、世の中の人はこの問題をよくわかっていないという受け止めが意外と多い印象だ。それならば、我々研究者が思っているほど“自律性を保障すべき”という人もいないのではないか」と話す。

 また、会議のあり方を「見直すべきだと思う」人が64%いることにも注目。「総理の判断が適切だったかはよくわからないという人と適切だとする人で半数を超え、さらに6割の人は学術会議の現状はよくないと思っている。つまり研究者が考えるほど、総理の判断は不適切とも、学術会議の在り方がよいとも思われていない。全体的に、日本社会において学術会議やアカデミズムの重要さや大切さが認知されていない印象だ。日本学術会議法の第2条に、“学術の重要性を政府や世の中に対して啓蒙・啓発していくのも役割・目的だ”と書いてある(原文は『日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする』)が、そのミッションが達成されているとは思えない」とした。

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 その上で、野党の追及について「民主党政権の時にどうだったかを考えると、過去20年続いてきた国立大学予算の削減を止めなかったし、事業仕分けもあった。当時、研究費の配分がそれで遅れた例もある。長期の展望がある気がしない。野党側が学術会議や日本の高等教育や研究環境をどうすべきと考えているのか明確にするなら、例えば“野党は学界の見方だ”と思えるかもしれないが、今はそういう状況にない。つまり与野党ともに、学術や研究の発展という意味でさほど期待できる気がしない」と指摘した。

 任命拒否をめぐっては、人文社会系の106の学会が政府に対して理由の説明と拒否された会員の任命を求める共同声明を発表した。西田氏も人文社会系の複数の学会に入っているそうだが、「幾つかの学会で執行部や要職を務めているものもあるが、平の学会員のところから今朝『声明を出しました』という連絡があった。その学会における平の構成員からすれば、どんな理屈や経緯で共同声明に参加したのかは、よくわからなかった。おそらく執行部などで議論したのだろうが、それだとやや世論に対する説得力に欠ける気はする。学術会議と関係しない一般の研究者にも、議論や決定の経緯は明確にすべきではないか」とした。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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