11月8日のノア・後楽園ホール大会は、なんともシビアな結末になった。
メインイベントで行われたのは、潮崎豪&清宮海斗vs拳王&中嶋勝彦のタッグマッチ。結果は潮崎のフォール負け、というより“KO負け”だった。
このタッグマッチは、11.22横浜武道館大会に向けての前哨戦だった。GHCヘビー級王者の潮崎は中嶋の挑戦を受け、清宮は拳王のナショナル王座に挑む。お互いの“ターゲット”がはっきりしている形だ。
先発は当然のように潮崎と中嶋。しかし中嶋は睨み合いもそこそこに拳王にタッチ、潮崎に触れることなくいったん引き下がる。このあたりは中嶋らしい駆け引きだ。
もともと潮崎と中嶋はタッグを組んでいたが、8月に中嶋が潮崎を裏切り拳王率いる「金剛」に合流。その後リーグ戦N-1 VICTORYで優勝し、潮崎に挑戦表明。その間ずっと、中嶋が心理戦の主導権を握っていたと言っていい。
そしてこの前哨戦、試合が進むにつれて攻防も熱くなり、潮崎はチョップ、中嶋は蹴りで削り合う。横浜武道館での一騎打ちもタダでは終わらないだろうと予感させる闘いだった。
その上でこの日、勝ったのは中嶋。ボディを連続で蹴り上げると顔面にも一撃を加え、最後はヴァーティカルスパイク。潮崎は脳天からマットに突き刺さるように投げられ、3カウントを奪われた後も立ち上がれなかった。まさに完全KOだ。
「どうしたんだチャンピオン? 嬉しくもなんともないよ。完勝だったけど、俺に勢いがあるわけじゃないんだ。チャンピオンに勢いがなさすぎるんだよ」
腐ったチャンピオン、ボロボロチャンピオンとも言い放った中嶋。タイトルマッチに向けて、あらゆる意味で優位に立ったと言えるだろう。
一方、拳王も清宮をこき下ろした。清宮は恋愛バラエティー番組『ヒロミ・指原の“恋のお世話始めました”』に出演。女子アナとの合コンに参加するとテレビ朝日・弘中綾香アナと連絡先を交換している。
話題性のある出来事であり団体にとってもプラスに思えるが、拳王はこれが気に入らない。以前から会社のプッシュを受けているだけと清宮を批判してきたが、今回は「タイトルマッチまで2週間、合コンとは余裕だな。ナメてんのか?」。さらに「人を好きになるっていうのは人工的なもんじゃない。自然にそうなっていくんだ」と恋愛論も駆使しての“口撃”を加えた。
潮崎、清宮は愚直で真面目なイメージ。逆に金剛勢は試合ぶりもコメント力も海千山千だ。このまま金剛がシングル王座を独占する可能性も充分。逆に潮崎と清宮はノーコメントだっただけに、11.22横浜武道館のリングで逆襲するしかない。
文/橋本宗洋
写真/プロレスリング・ノア