あす11日は、中国で年間最大のネット通販セール「独身の日」。ネット通販大手・アリババの去年の取引額は、たった1日で4兆円以上を記録した。
独身の日を間近に控えた9日、中国・浙江省の小さな村を取材した。三輪バイクがずらりと並び、至るところに積み上げられた商品。実はこの村、卸売業者が集まる、商品供給の一大拠点になっている。
独身の日にできるだけたくさんの商品を売る――。記者はその熱気を目の当たりにした。人が集まっている中心で、スコップに黒いジャケットをたたきつけている男性。さらに、隣の女性はのこぎりでジャケットを切りつけている。
実はこれ、スコップではなく丈夫なジャケットの実演販売。この様子はネットでの配信も行われていたようだ。
この村のあちこちでみられたのが、こうした実演販売の生中継。ライブ配信とECを合わせた「ライブコマース」が、中国全土へとネットを通して届けられている。
もともと人口1300人程度の小さな村に、5年ほど前から政府がネット事業者を集め、去年からは配信者も集めた。現在は、外から来た配信者が1万3000人。ネット通販関連の従業員は5万人以上で、年間100億元、日本円で1600億円の取引規模になったという。
「Eコマースは資金や運営コストがたくさん必要ですが、インフルエンサーは携帯1つでどこへでも行けるし、どんなシーンでも対応できるし、全く違う。僕1人でもできてしまいます。Eコマースは大人数のチームや潤沢な資金がないといけません」と話すのは、ある実演販売配信者の男性。現在、10万人のファンがいるという。
新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要もあり、今年の独身の日は記録を更新する見込みだ。中国経済に詳しいジャーナリストの浦上早苗氏は、コロナ禍によってライブコマースにも変化が出たと話した。
「ライブ配信ブームが出てきて、ライブコマースブーム。日本でいうとYouTuberの感じに近いのが2016、2017年くらいに出てきた。最初の方は可愛い子とかインフルエンサーみたいな人が売っていたが、コロナの中でみんな物を直接売れないから、インフルエンサーだけではなくて誰でもやりだしたのが今年。ジャパネットたかたみたいな感じで会社の社長がやりだすとか、農家の人がやりだすとか。中国に流行語大賞があるとすれば、今年はその言葉が出るくらい層が広がるという感覚」(浦上氏)
一方で、ライブコマースは日本ではあまり定着していない。BuzzFeed Japan News副編集長の神庭亮介氏は、「アメ横のお菓子の叩き売りのように、買い物体験自体をエンタメ化する楽しさがある。数年前に“中国でこういうものが流行ってる。日本にも来るぞ”みたいな話があったが、まだ今ひとつ盛り上がっている感じはない。ただ今後、YouTuberの草分けとしてHIKAKINさんが登場したように、ライブコマースのカリスマ販売員のような人が現れた場合、キャズム(溝)を超えて一気に広がっていく可能性は十分にある。コロナ禍で接触が制限されていることも追い風になるだろう。中国のコマース市場に乗り出す日本企業もあるので、本場で成功体験を掴んで日本に逆輸入するパターンも出てくるのではないか」との見方を示した。
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