「今でも手が震えることがある。一生が償い」逮捕も消えぬ「露出症」の衝動 治療続ける男性に聞く
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 ボクシングのスパーリングで汗を流すコウキさん(23)。実はコウキさんには、失うものが大きいと分かっていながらも、性器の露出を繰り返してしまう性嗜好障害の一つ、「露出症」を抱えている。そのため、性犯罪の加害者として逮捕された経験も持つ。

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 始まりは高校生の時だった。自転車で近寄って、相手が止まってるところを狙って、ズボンのチャックを下ろして股間を出してわざと勃起させ、見せびらかす。相手の驚く顔が見たかったので、その一瞬にかけていた」「道端で性器を出し、女性に見せつけていると“自分は特別なんだ”“俺はこんなことができるんだ”“すごいだろう”という快感を覚えた」。簡単に高揚感を得られ、捕まることもない。そんな認識のもと、犯行を繰り返していく。

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 犯行後には、その光景を思い出し、自慰行為を行った。そして、「次はどこでやろうとか計画をしていた」。頭の中では犯罪だと分かっていながらも、強い依存症によって止めることができずにいる中、2年生の時に逮捕される。

 ただ、コウキさんのような性嗜好障害を抱える人の中には、興奮を得るために痴漢や盗撮などの行為に走ってしまう人もいる。コウキさんもまた、反省し、後悔の念もある一方、快感が忘れられず痴漢に及ぶようになり、再び逮捕された。「自分の意思だけでは止められない」。そう感じたコウキさんは精神科に通院を始めた。それでも“露出したい”という衝動が完全になくなったわけではなく、現在も治療を受け続けている。

 冒頭のトレーニングも、再び事件を起こさないよう、症状を抑えるための治療の一環だ。また、自転車に乗らない、犯行現場の近くには行かないなど、自らの行動に制限を課して暮らす。

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 担当医の山下悠毅・ライフサポートクリニック院長によると、露出症にはギャンブル依存症とよく似た部分があり、露出をする機会から遠ざけることが治療のベースになるという。そのため、コウキさんが本を出版したことに伴いメディアからの取材を受けることは許可したものの、スタジオでの番組への出演については認めなかったと説明する。「今日ここに来ることは治療上もあり得ないと判断した。行く途中、帰りがけもリスクにつながる。やはり夜間に一人で出歩かないことが大切だ。そのことは患者さんも理解されている」。

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 その上で山下医師は「例えば山登りや釣りを考えてほしい。本来、山登りというのは辛いもので、あまり楽しくないはずだ。あるいは釣りも、簡単に魚が獲れるわけではない。しかし“ビギナーズ・ラック”のように、山登りは気持ちいいんだ、たまたま釣れちゃって、周りからも褒められて楽しい、というような体験をしてしまうと、本能レベルで“またやりたい”と思ってしまうようになる。一方で、我々は普段から露出行為をしたくて我慢しているわけではないし、“露出をしてもいいよ”“1万円あげるからしてごらん”と言われても、やる人はいないと思う。それなのに刑罰を受けると分かっていてもやってしまうということなので、やはりこれは病気だ。また、性欲が関係していると思われがちだが、実はそうではなく、“みんなができないことが俺にはできるんだ”ということが楽しい。しかもギャンブルと同じで、“できるかな、どうかな”というところが面白いので、“今度はもっとばれやすい場所で”と、捕まるまでハードルを上げてしまう」と説明する。

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 「もちろん加害行為は反省しなければならないが、“それでも繰り返してしまう”という観点から見ていただけると、理解しやすいのではないか。そして、最も大事なことは、刑罰では治らないということ。なぜ面白いと感じてしまったのかをしっかりと理解すること、そして、露出行為ができない状況に身を置くことが必要だ。また、結婚をしたり、社会的に仕事をきちんと持つことのできた方の方が、再犯率は低い。コウキさんも、しっかり治療プログラムを作り、あのような運動を含め継続している。その中で、自分が成長できているという感覚を持てることが大切だ。やはり自己重要感や、特権意識を感じられるようなポジションに就いていない人ほど再犯率が上がり、何度も刑務所に入ってしまう」。

 背景に障害があったとしても、犯罪行為があったことは紛れもない事実。被害者にとっては一生の傷となって残り続けることを忘れてはならない。コウキさんは取材に対し「“やりたい”と“やりたくない”の葛藤。それが頭の中で起きて、手が震えることもある。少年院に入って、刑期を終えればおしまい、じゃなくて、一生が償いだと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

"露出症"女性5人に1人が被害に...
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