大相撲十一月場所・十三日目は大関貴景勝と幕尻の志摩ノ海という優勝争いのトップ同士が相まみえ、志摩ノ海は善戦及ばず、最後は貴景勝が叩きで相手の体勢を崩して押し出し、1敗を守った。

 大関として通常は顔が合うことがない幕尻力士と対戦したのは自身2度目。今年一月場所は千秋楽の結びで幕内最下位の德勝龍との取組が組まれ、自らの敗戦で幕尻優勝が決まるという屈辱を味わったが、今回は大関の面目を保った形だ。

 今場所は2横綱2大関が休場で大関以上で出場する唯一の看板力士として、その重責を一身に背負いながら土俵を務める。同様のケースである横綱不在の“一人大関”は1場所15日制が定着した1949年五月場所以降、4例目で過去3例はいずれも平成以降に発生しているが、順当に大関が賜盃を抱いたのは番付上でも横綱がいなかった1992年十一月場所の曙だけ。今年七月場所は新大関の朝乃山が幕尻の照ノ富士に敗れ、優勝を逃したのは記憶に新しい。

 また、横綱の休場が目立っている昨今、優勝力士の顔ぶれが目まぐるしく変わり、今年もここまで德勝龍、横綱白鵬、照ノ富士、関脇正代とバラエティーに富んでいるが、大関の優勝となると2017年一月場所の稀勢の里以来、出ていない。

 十一月場所も残すところあと2日で貴景勝が単独トップに立ったものの、今年3度目の幕尻優勝の可能性もまだ残されており、1差で追う照ノ富士とは千秋楽で直接対決が組まれることは間違いない。大関の権威を取り戻すための戦いのゆくえは最後の最後まで予断を許さない。

単独トップの貴景勝
単独トップの貴景勝