『特定の分野・物事には異常なほど熱中するが、他への関心が薄く世間との付き合いには疎い人。また広く、特定の趣味に過度にのめり込んでいる人。例「アニメオタク」』(広辞苑 第7版、2018年より)。
かつてはネガティブなイメージもあった「オタク」という言葉。しかしKDDI総合研究所の調べ(2017)によれば、実に男性の44.5%、女性の35.5%が、自分が何らかのオタクだとの自認があるという。テレビ朝日の平石直之アナウンサーも「私は“三国志オタク”だ。それからテニスのフェデラー選手が大好きで、スローモーション動画や練習動画を、時を忘れる感じでボーっと見ている。でもオタクと名乗るにはまだダメかもしれないが(笑)」と話す。
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ゲームソフトなどを手掛けるブシロードの執行役員で早稲田大学ビジネススクール非常勤講師も務める中山淳雄氏は、「10代の若者に“あなたはオタクですか?”と尋ねると、5割の人が“オタクだ”と答える。言葉自体に悪いイメージもない。Z世代とミレニアム世代の3500万人の半分、団塊の世代5000万人のうち10分の1くらいがオタクだとすると、2、3000万人程度が何らかのオタクという状態だ」と話す。
「その意味では、広辞苑の定義は、どちらかと言えば90年代くらいの雰囲気が残っている感じだ。確かにかつては宮崎勤事件や宅八郎などのイメージもあったが、2000年代に入ると『電車男』が出てくるなどして、好意的なイメージに変わっていき、今ではマスなものになっている。やはりオタクは情報感度が高いし、僕の統計では学歴も高く、可処分所得も多い。また、特にアニメは海外で2兆円くらいの市場を生んでいる。制作費がその5%くらいなので、非常にコンバージョンがいい」。
ライターの藤谷千明氏は、“オタク女子”4人でシェアハウスに暮らしている。「やはりオタクはグッズや本とか多いので、都内だと高い家賃が負担になる。でもイベントは東京で開催されることが多いので、地方では困る。そこでみんなで広い部屋に安い家賃で住もうと。私はビジュアル系バンドが好き。被っているジャンルもあるが、ほとんどはバラバラ。みんな情報感度がものすごく高いので、リビングにいると何かしらの流行りのものに触れられるので、フリーライターという仕事にも役立っているなと感じる」と話す。
「私は39歳なので、宮崎勤事件が起きたのは小学生の頃。やはり暗いイメージがあったという記憶もあるし、電車男についても、まだ“気持ち悪い”という印象があった時代のもの。ただ、いまオタクと名乗っている子たちは、おそらくそういう時代を知らないんだと思うし、生活の中で趣味の比重が高めというくらいでも“オタクなんです”と言っている印象はある。ただ、昔は気持ち悪がられていたとか、いじめられていたとか、隠していたということがあったのに、最近では“経済にいいよ。仕事に活きるよ”みたいな感じで持ち上げられている。そこはオタクをずっとやってきた人たちからすると、狐につままれている感じもあるのではないか。私の場合、趣味と実益が噛み合っているし、充実しているという実感はあるが、そういう点では落ち着かないとも思う。こういうところにお呼ばれして話をするところも含めて(笑)」。
ジャーナリストの佐々木俊尚は「かつてクラシック音楽を聴くのは教養のある人のすること、みたいなイメージがあったが、最近ではクラシックオタク(クラオタ)と呼んだりするし、かつて文学青年と呼ばれていた純文学愛好家も、最近では文学オタクと呼んだりする。昭和の時代はみんなと同じことをやらないといけないという抑圧があった。例えば大学生なら夏はテニス、冬はスキー。あるいは野球は見ているものだという共通前提がったので、タクシー乗ると、いきなり“昨日は負けましたね”と話しかけられる。そういうものが消えて、それぞれが自分の好きなことに走るようになり、“1億総オタク化”していった。一方で、島宇宙化が進んだ結果、そこにいるのが居心地いいばかりに、文化同士の分断も進んだ。だから同じ音楽好きの間でも、ジャンルが違うと会話が成立しない。『鬼滅の刃』が大ヒットしたことで感じたのは、まさにみんなが同じコンテンツで会話できるという感動だと思うし、それがヒットを加速させている理由だとも言われている」とコメントした。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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