コロナ禍で、国や自治体が様々な経済支援を打ち出す中、「本当に困っている層にこそ手を差し伸べるべき」と主張、とりわけ子育て世帯の支援に力を注いでいるのが、兵庫県明石市の泉房穂市長だ。
・【映像】「子育て支援をすれば財政は健全になる」明石市が独自の支援策を次々打ち出せる理由は?
「就任後、子どもにかけるお金の予算を倍以上にした。そして子どもに寄り添う職員数を3倍以上にした」と話す泉市長は、先月26日、ひとり親世帯に対し、新たに現金5万円を支給することも発表している。
明石市は、なぜ次々と支援の手が打てるのか。2日の『ABEMA Prime』では泉市長を生直撃した。
■スピード最優先、困っている市民に寄り添い、感染対策と両立しながら経済対策を
「私は市長だから、市役所から一歩出れば市民に色々なことを言われる。そうした声を受けて、やるべきことを順番にやっているということだ」と説明する泉市長。
「今年4月には個人商店に100万円を支援し、大学生にも100万円の学費を本人になり代わって大学に振り込んだ。5月には10万円もお渡ししている。また、旅行や食事を楽しめる層も大事かもしれないが、特にしわ寄せがいっているひとり親家庭、子どもたちに手厚い支援をすることが必要だ。明石市では全ての小学校区に子ども食堂を設置して対応いただいているが、やはり無料のお弁当を取りに来る子どもが増えている。言葉を選ばなければならないが、飲食関係のパートや、いわゆる接待を伴うようなお仕事の中で子育てされている方の中には、収入が絶たれている方もいる。支援を求める、本当に切実な声が上がってきていることをリアルに感じている。子どもは親だけの子どもではなし、親だけに責任を押し付けてはいけない。明石の街のみんなの子どものような存在だからこそ、街のみんなで応援する」と訴える。
その上で、「明石市は、何においても“スピード最優先”。困っている市民にこそ寄り添い、感染対策と両立しながら経済対策をする。そして、最後にお金は何とかするという考えでやっている。ここもいわゆるバラマキではなく、狙いを定めて政策を2つに分けている。子育て支援については基本的に無料化する負担軽減策。もう一つは、明日のお金が必要というような、本当に困っている方々には限定的に給付する。今回で言えば、ひとり親家庭のお子さんに対し、プラス5万円の支給をすることにしたいと思っている。言葉は選ばなくてはいけないが(笑)、これ比べて、国はスピードが遅いし、困っていない市民にもお金が行っている。そしてGoToでは感染対策との両立ができなくなってしまっているという問題もある。もちろん、GoToの効果もなくはない。明石市でも、今年5月の段階で商店街のデリバリーやテイクアウトで使える商品券を8億円分お配りした。もちろん感染防止対策と経済支援は両立するものだが、そのための知恵は必要だ」と指摘した。
■子育て支援をすれば財政は健全になる。あとはやりくりだ
明石市では、これまでも子育て世代を重視する市政を続けており、「5つの無償化」を実施した結果、出生率は1.7に高まり、人口は8年連続の増加。転入者も相次ぎ地価が上昇、税収も増えたのだという。
「“子どもの貧困”と言われるが、子どもはお金を稼げない以上、それは“親の貧困”であり、ひいては“政治の貧困”だと言っていいと思う。そして、まさに何かを選び、その結果について責任を取るのが政治だ。子ども施策をやれば財政が健全になるということは、数字が証明している。明石の場合も、黒字財政で借金が減り、逆に貯金が増え続けている。それでも、決して明石市はお金持ちではない。簡単に言えば、そこはやりくりだ。ひとり親家庭に対する5万円支給で言えば対象が2400世帯あるので、1億2000万円がかかるが、国からの交付金は28億円のうち、3億円が残っていたのでこれに充てた。やろうと思えば、どこの自治体でもすぐにできる。そもそも皆が一生懸命働いて納めた税金を預かっているわけだから、汗をかき、知恵を絞って国民の元に戻すのが政治の役割。今こそ、その税金を使って困っている人に手を差し伸べる時だと思う。それを自分のポケットに入れたり、身内に横流ししたりするような政治をやっているからお金がないのだと思う。とはいえ、地方に任せてくれればいいのに、国が持ったまま。コロナ対策の経済支援がしたいのに、限界を感じている自治体は多いと思う」。
泉市長の話を受け、慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「昨年のデータだが、ひとり親世帯は全国に140万世帯あるが、このうちの85万世帯がシングルマザー世帯だし、経済的支援を受けられていない世帯の多くが生活保護を受給している。ここに政策的な支援を入れなければいけない。そして、養育費も払わないいい加減な男も多い。こうした問題を解決しない限り、みんな安心して子どもが産めない。明石市のように自治体が立ち上がって、日本の行政全体に良い影響を与えていくことを僕は願う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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