「いたー!!いた、いた、いた」「ないー!!」「裏3、何だこれ!?」。部屋に響き、場合によってはその外にまで漏れ伝わるほどの絶叫。それが熱血麻雀実況として知られる日吉達也(連盟)の持ち味だ。プロ麻雀リーグ「Mリーグ」の公式実況として2019シーズンから参加。小林未沙、松嶋桃(協会)の女性2人が冷静、かつ的確に伝えるスタイルの中、日吉はとにかく声を張り上げて叫びまくる。なぜ彼はそんなに熱いのか。麻雀ニュース番組「熱闘!Mリーグ」ではその理由や、本人が持つ信念を伝えるべく密着した。
Mリーグは初年度の2018シーズン、小林・松嶋の2人体制で実況を回していた。そこに参戦してきたのが日吉。小林が「パワーワードを生む力がすごい」、松嶋が「一番素敵だと思うのは勢いとか熱量」というように、とにかく熱く、力強い。現在の麻雀界における唯一無二の存在だ。
試合のハイライトシーンに合わせて絶叫する日吉だが、工夫は入場シーンからも入れている。選手紹介でも、そのまま語り口調ではなく、本人が言っているようなセリフ調にすることで視聴者に伝わりやすくする。これも自分で考えたことだ。
実況者として有名になった日吉だが、最初からこの仕事に就いたわけでも、目指していたわけでもない。KONAMI麻雀格闘倶楽部の佐々木寿人、KADOKAWAサクラナイツ・内川幸太郎、渋谷ABEMASの白鳥翔と、日本プロ麻雀連盟の中でしのぎを削ってきた面々だ。10数年前は、このMリーガーたちとともに「プレイヤーとして成り上がってやろうという気持ちはすごく強かった」と、頂点を目指した。だが、ここも勝負の世界。全員が勝つことはない。日吉は敗れた側に入った。「(悔しい気持ちは)めちゃめちゃありましたね」と、ライバルたちに水を開けられ、腐りかけたこともあった。この時期に声をかけられたのが実況の仕事。「メディアに出るというのはチャンスで、麻雀に携わる仕事として興味があった」と挑戦したところ、才能が開花した。
持って生まれた美声とセンスだけで務まる仕事ではない。ルーティンとして行っているのは、全チームの控室を訪問しての事前取材だ。「Mリーグはエンターテインメントの要素がある。(選手)30人は、どう思っているか、どう考えているかを視聴者に伝える義務がある」という強い思いがある。選手も試合前に気持ちが張り詰める時間だが「集中したい時間はわかりますけど、『ください』と思っています。あなたたちには、その義務があると思っています」と、しっかりと話を聞き、プレーに合わせて的確に伝えていく。
試合後、飲み仲間でもあるEX風林火山・滝沢和典(連盟)と談笑していた時のこと。ここでも熱さが溢れた。「僕はMリーガーを輝かせたいわけじゃなくて、麻雀に興味を持ってくれる人が一人でも多く増えればと思って実況しています。それが選手の個性を引き出すことで増えるならいい」。Mリーグという舞台をベースに、成し遂げたいのは選手と同じレベルで麻雀自体を盛り上げ、ファンを増やすこと。選手たちが喜び苦しみながら戦うその横で、日吉は今日も絶叫する。
(ABEMA/熱闘!Mリーグより)
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