K-1の2020年最終戦となる12月13日の両国国技館大会で、スーパー・ウェルター級チャンピオンの木村“フィリップ”ミノルが王者としての第1戦を迎える。対戦相手はネパール出身のアビラル・ヒマラヤン・チーター。10戦9勝8KOという高いKO率を誇る新鋭だ。ノンタイトル戦ながら難敵と言っていい。
しかし木村も連続KO勝利中。実に9戦連続でKO勝利を収めており、今回は10連続KOをかけての試合としても注目されている。
まさに絶好調と言っていい木村。以前はアグレッシブであるがゆえに隙もあり、勝ったり負けたりというイメージもあった。しかし現在は大変貌を遂げている。そんな成長のキーマンが、トレーナーを務める矢口哲雄氏だ。一度は矢口氏から離れた木村だが、ジョーダン・ピケオーに敗れた後で再び指導を受けるようになった。そしてそこから9連続KOの快進撃が始まったのだ。試合に向け、矢口氏は木村を古くから知る芸人・佐田正樹(バッドボーイズ)との対談で“強さの秘密”を語っている。
木村が初めて大きな屈辱を味わったのは、Krushでの山崎秀晃戦。この試合でもセコンドについた矢口氏は「私のせいで負けたと思っている」と語った。左の蹴りを警戒して左周りに動くよう指示したが、その結果として右のパンチを被弾したこと。またテンション高く試合に臨む木村を落ち着かせるのではなく、気持ちを余計に煽ってしまったとも。
そういう苦い経験もあるからこそ、矢口氏は木村の長所も短所も把握している。なかなか頂点に立つことができず、苦しんでいた時期の木村について、矢口氏はこう表現した。
「足りなくないのに、足りないと自分で勝手に思っていたんです」
能力は充分にあったが、それを使い切れていなかったのだ。木村とのコンビを“再結成”した矢口氏は「ディフェンス、構え、力の入れ方を矯正しました」。そのことで、木村の最大の武器であるパンチの強さを活かしたのだ。実際には倒して勝っているから、そのディフェンスが目立つことはない。しかし前に出て圧力をかけ、攻撃することも「防御」のうちだと矢口氏。
「結局は前に出たほうが勝つ。下がっちゃダメなんです。それに格闘技は長所を最大限に表現するもの」
木村とは違うテクニカルなスタイルを極めた久保優太のトレーナーとしても知られる矢口氏。どちらの場合も、それぞれの個性を引き出したと言えるだろう。チャンピオンとしての初戦に向け、佐田は木村の精神面を気にしていた。
「あいつは調子乗りやすいところがあるから(笑)」
しかし矢口氏によると、今の木村にその心配は無用のようだ。
「自分はまだ挑戦者」
木村は矢口氏に、そう言っていたという。精神面でも隙なし。12.13K-1両国大会、10連続KOに期待してもよさそうだ。