やはりこの男は“K-1の申し子”だ。12月13日のK-1両国国技館大会、スーパー・ウェルター級王者の木村“フィリップ”ミノルが10連続KO勝利を達成した。
今年3月、1DAYトーナメントを制してK-1王者となった木村。それ以来のリングとなる今回は、HEAT王者の新鋭アビラル・ヒマラヤン・チーターと対戦した。
ネパール出身で日本在住、9勝2敗8KOという戦績のアビラル。K-1初参戦ながら、高いKO率が評価されての木村戦実現だった。
試合が始まると、アビラルは期待以上の爆発力を見せる。いきなり右ストレートでダウンを奪ってみせたのだ。185cmの長身、リーチの長さという武器が木村を直撃した形。これで一気に試合に火がついた。
もちろん木村も黙ってはいない。アビラルが接近戦でヒザを狙ったところに左フック。アビラルにとっては死角だったはずだ。さらに猛攻を重ねた木村は左右のフックでダウンさせる。これでポイント上も逆転だ。やはり今の木村には、簡単には崩れない底力がある。
これで木村が倒し切ってしまうかと思われたが、アビラルは粘る。パンチで出血しながらも立ち続け、前進は止まらず。2ラウンドにドクターストップによるTKO負けを宣告されるまで、まったくひるむことなく木村に立ち向かっていった。
結果としては木村の勝利。10連続KOという記録も達成した。しかし同時にこの試合は、アビラルが鮮烈なK-1デビューを果たした試合としても記憶されるだろう。
試合後のリングでは来年2月に日本で試合をするというフロイド・メイウェザーとの対戦をアピールした木村。インタビュースペースでその真意を聞かれると、こう答えた。
「メイウェザーが日本に来る、相手を探してる。自分はK-1で10連続KOしてる。そりゃ名乗り出るでしょっていう。当たり前ですよね」
K-1関係者には何も話していないとのことで、あくまでファイターとしての純粋な思いからの発言だったようだ。また木村は、アビラルを称えることも忘れなかった。理想は格の違いを見せ、圧倒してのKO。しかし強敵との難しい試合を乗り越えたことにも価値があると考えている。
「やってみて思うのは、アビラル選手は今後の格闘技界を担うホープ、逸材だなと。攻撃力が高いし打たれ強い。グラついてるのに倒れないんで、途中から“コイツは倒れないヤツなんだな”と思って闘ってました」
そのアグレッシブなファイトはまさにK-1向き。アビラル自身、木村との再戦を望んでいる。
「木村選手とはチャンスがあればまたやりたいです。自分のパンチには自信がある。これからもHEATの代表として闘って、K-1ファイターと言えるようないい試合をして、HEATのチャンピオンは普通じゃないというのを見せたいです」
そう日本語でコメントしたアビラル。本人によると「英語、日本語、インド語、ネパール語」が話せるそうだ。木村も認めたその実力は、そう遠くないうちにまたK-1で見られるのではないか。
文/橋本宗洋