12月13日のK-1・両国国技館大会では、メインイベントでゴンナパー・ウィラサクレックが林健太を下し、ライト級新チャンピオンとなった。
同時にこの大会では、次期挑戦者の有力候補も登場している。朝久泰央だ。福岡で父の道場で練習に励んできた22歳。3月の大会で当時チャンピオンの林に勝つと、9月の大阪大会ではKO勝利。勢いに乗って出場した今大会でも蓮實光を3ラウンドKOに下した。
蓮實も連勝中だったが試合は朝久ペース。インファイトを狙う蓮實に対し蹴りで距離をキープし、飛びヒザ蹴りやハイキックをヒット。蓮實のタフさも目立ったが、最後は朝久がボディへのヒザで悶絶させた。
これで朝久はK-1で3連勝。Krushも含めると6連勝だ。キャリア20戦を超えて“倒す闘い”も板についてきた。王座交代があったライト級で「次にベルトを獲るのは俺」と朝久。ムエタイのゴンナパーに対し“朝久流”格闘術の蹴りで対抗する姿は確かに見てみたい。
若い朝久だが、試合中の落ち着いた表情も印象的だ。この選手の最大の持ち味は、その精神力と言っていいかもしれない。蓮實に勝つと、彼はインタビュースペースで言った。
「今は殺す覚悟も殺される覚悟も持ってやらないと勝てない相手になってきてます。“勝てればいいな”くらいの気持ちでは勝てない。そういう気持ちになって、攻撃力や殺傷力が増したと思います」
強さを求める気持ち、勝ちたい気持ちは階級さえも超えている。
「この階級のチャンピオンを目指してますけど、僕は本気でヘビー級のチャンピオンも全員倒すつもりでやってるんで。全階級を統一してチャンピオンになりたい」
途方もない目標だが、朝久は“スポーツ選手”である以上に“武道家”なのだろう。その一方で、リング上での「今日はばぁばの誕生日なので、この勝利をばぁばに捧げたいと思います」というマイクで観客を和ませてもいる。
前回の試合で足を骨折していたが、それでも練習を重ね、両国のリングに上がって連続KO勝利を収めたという。「工夫しながら練習しました」と朝久。たとえば地元の「田んぼのあぜ道」で軽トラックを押すといった練習だ。
実力派であると同時に、個性も相当なもの。Krushから期待されてきた朝久だが、来年はいよいよK-1タイトル戦線での活躍が見られそうだ。その試合ではコメントにも注目したい。
文/橋本宗洋