魔裟斗がそう話すほど、圧巻のKO劇だった。精密機械のように正確無比な打撃が終始降り注ぐと、最後は左ハイが右のテンプル付近を直撃。あまりの衝撃に一瞬、身体が硬直し、真っすぐ伸びたまま真横に崩れ落ちた。1ラウンド2分3秒の出来事だった。
12月13日に両国国技館で開催された「K-1 WORLD GP 2020 JAPAN ~K-1冬の大一番~」で、和島大海が猛攻の末に、鮮やかな左ハイキックを振り抜いて藤岡裕平をKO。解説席を務めたK-1レジェンドの魔裟斗が「本当に強くなっている」と太鼓判を押した。
K-1スーパー・ウェルター級のトップ戦線のなかでベルトが見えてきた和島は、トーナメント決勝で敗れた木村ミノルとの再戦に向け重要な一戦。一方、この日がK-1デビューとなる34歳の藤岡は、九州から来た未知なる相手だ。
試合が開始すると和島がファーストコンタクトから強烈な左ミドルを藤岡の脇腹に放つ。この衝撃で一瞬、動きが止まり苦悶の表情を浮かべた藤岡。平静を保ちながら右ローを飛ばすがその表情はカタい。さらにローを蹴り続ける藤岡だが、打ち際に和島が左ロー、前に出ると新兵器の右アッパーを当てる。さながら手数よりも、威力と精度が光る打撃だ。
ゆったりとした構えから和島が右ストレート、ボディへのヒザと流れるような打撃を繰り出すと、藤岡に対して追い打ちの左ミドル。思わずクリンチに逃れた藤岡に対し、ブレイク後も左ストレート、左ミドルと続けざまに叩き込み、追い打ちの左ストレートで藤岡からダウンをもぎ取った。
こうなると和島の勢いは止まらない。立ち上がった藤岡に跳びヒザで襲い掛かると「和島はもう遊んでますよ」と魔裟斗。左右の連打で動きが止まった相手に無慈悲なヒザ。グッと堪える藤岡だが、立ったままフラフラと後退…決着は近い様子だ。その後もワンツーを被弾してダウンを喫すると、なおも必死に立ち上がろうとする藤岡に魔裟斗も思わず「もう無理だ。立ち上がれるんですけど、もう立ち上がりたくないと思う。でも(藤岡選手は)気持ちが強いですね、もう心が折れてもおかしくないですよ」とエールを贈る一方、「僕がセコンドだったらタオルを投げてますね」と話し、藤岡がすでに危険水域に達していることを指摘した。
残り1分、ここまで一方的に攻撃を浴びてきた藤岡だが戦う姿勢は崩さない。しかし、和島の精密機会のような左ハイキックを右のテンプル付近に被弾すると、身体を硬直させ、真っすぐに伸ばしたまま、真横に崩れ落ちた。
一方的な勝ちっぷりを見せつけた和島に対して、魔裟斗も「以前は木村(ミノル)とやらせるには早いなと僕は思っていたんですけど、順調にキャリアを積んできて一時期の負けを乗り越えて本当に強くなってますね」と驚いた様子で話し、賛辞を惜しまなかった。