年末を前に観光地や飲食業が窮地に立たされる中、菅総理が“5人以上の会食”をしたことに疑問の声が上がっている。
「国民に対する一定のメッセージ性というのもあると思いますから、よく配慮しながら、今後検討していただきたいと思います」
15日、与党・公明党の山口代表が注文をつけた菅総理による「5人以上の会食」。共同通信によると、菅総理は14日、経営者15人と会食したのち、東京・銀座の高級ステーキ店を訪れたという。ここでは、自民党の二階幹事長や、福岡ソフトバンクホークスの王貞治会長、タレントのみのもんたをはじめとした、5人以上で会食したと報道されている。
【映像】「マスクは外したか?」高級ステーキ店から出てきたみのもんたの回答(2分ごろ~)
先月16日、西村経済再生担当大臣は専門家の議論を元に「5人以上の飲食では感染リスクが高まる」と発言。また、同月19日には菅総理も「GoToについては原則4人以下で飲食をすること、こうしたことを知事に検討することをお願いをいたしました」と自治体に検討を求めていた。
「静かな『マスク会食』。皆さんにこれをぜひお願いをしたい。私も今日から徹底をしたいと思います」
一定数以上の会食はリスクが高いということは、菅総理自身も理解していたはず。「マスク会食」の検証でもしていたのだろうか。会食に参加したみのもんたに記者が「食事しているときはマスクは外さなかったのですか?」と聞くと、みのは「食事をするときマスクしながらって……そういう人がいたらテレビの番組出てほしい」と答えた。
さらに15日、会食について聞かれた自民党・二階幹事長は「マスク取らなきゃ食事できないから。まぁ、みんな十分注意しているでしょう」とコメント。
11日配信のニコニコ生放送「菅義偉総理が国民の質問に答える生放送」では「みなさんこんにちは、ガースーです」と、ネット上で親しまれている愛称であいさつした菅総理。ネットの生放送であることを考慮したのかもしれないが、この日は東京都の新型コロナ感染者数が初めて600人を超えた日。「今はふざけている場合じゃない」と一部から批判もあり、このコロナ禍で、世間の目は厳しくなっている。
世界中がウイルスで混乱する状況をどう切り抜けるのか。国のトップの一挙手一投足が大きく注目される中、その言動が称賛された人もいる。ドイツのメルケル首相だ。
「(厳しい制限措置には)本当に心苦しいが(クリスマスシーズンを楽しむ)代償として1日に590人が亡くなっていることは、受け入れられない。だから、私たちは厳しくしなければならないのです」
今月9日、1日の死者が過去最多の590人に上ったことを受け、激しい口調で訴えたメルケル首相。「情熱的なスピーチは得意ではない」と言われてきたメルケル首相の身振り手振りを交えた訴えは、世界中にインパクトを与えた。
「私はこれを伝えたい。このクリスマスシーズンに接触が増えると、祖父母と過ごすクリマスは今年が最後になってしまう。そんなこと、ありえない、あってはならないんです」
このニュースにニューズウィーク日本版編集長の長岡義博氏は「事情も環境も違う中で、自国と他国のリーダーを安易に比べるのは好きではない」とした上で、「それでも“ガースー”発言はひどい」と言及。
「動画を見たところ、(菅総理が)自分で言っている感じではなく、言わされているように見えた。誰かに『言った方がいいんじゃないか』とサジェスチョンされていたのではないか。であれば、言わせた人は国民を軽視している。ネットで流行っている言葉を使えばウケるのではないか、支持率が上がるのではないかと思っているのであれば、国民を舐めている」
一方、これまで情熱的なメッセージを発信することが得意ではないと見られていたドイツのメルケル首相。長岡氏は「メルケル首相は東ドイツの出身で、物理学者というバックボーンがある。ドイツの東西分断という歴史的難局も乗り越えてきた」とメルケル首相の経歴に着目。「自国のひどいコロナ被害を見て、このような言葉が心から出てきたのでは」と語った。
対して菅総理には「菅さんが総理になった頃から不安を覚えていた」と指摘。長岡氏は「菅さんはビックピクチャーをあまり語っていない。演説や答弁もうまくない。国民に自分の言いたいことが伝わらない。自分たちの針路が見えないと国民は不安に思う」と危惧する。
「演説や答弁はスポーツと同じで、得意な人も苦手な人もいる。何十年も政治家をやってこられた方であればある程度のレベルがあるかと思ったが、あまり国民に言葉が伝わっていない。元総理の小泉純一郎さん、亡くなった田中角栄さんは上手だった。田中角栄さんの娘・眞紀子さんも、賛否あるが笑いのツボを抑えた演説は迫力がありうまかった。国民に自分の言葉が伝わらないと、選挙のときにダメージになる。これまで名官房長官は名首相になっていない。小泉政権で名番頭だった福田康夫さんも最後はボロボロになって総理を辞めた。菅さんもそうなる恐れがある」(ニューズウィーク日本版編集長・長岡義博氏)
ネットでも一部批判の声が上がっている菅総理の行動。新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、国を牽引する強いリーダーシップが求められている。
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側