Fリーグには、がんと闘いながらプレーする選手がいる。湘南ベルマーレの久光重貴だ。
12月13日のバルドラール浦安vs湘南の試合前には、2013年から右上葉肺腺がんと闘病する久光のために製作された応援Tシャツを両チームの選手全員が手にして合同で集合写真を撮影した。
この光景にネットでは「こういう姿はほほえましい」、「いい演出だね」という声が挙がった。
選手が手にしていた応援Tシャツは、湘南の奥村敬人監督が直々に製作したもの。胸部分に記されているロゴは、ポルトガル語で「貴重」を意味する「VALIOSO」を逆さにした「OSOILAV」。「貴重」を逆さにすると、「重貴」となる。がんと闘い続けるフットサル選手、久光重貴の名前だ。
応援Tシャツの売り上げは、諸経費を引いた全額を久光選手に寄附されるため、フットサル界ではチームの垣根を越えて数多くの選手や関係者が購入。Fリーグを試合中継するアベマの実況や解説者たちも応援Tシャツを着て番組に出演するなど、久光へのエールを送り続けている。
さらに、北海道から沖縄県まで全国各地で注文が殺到。奥さんと手作業で発送している奥村監督は、「全国からの問い合わせに日々感動しています。人間が手を取り合ったときのすごいパワーを日々感じています」とSNSに想いを綴った。そしてこの活動はフットサル界を飛び越え、Jリーグにも波及。湘南ベルマーレの選手が12月6日のガンバ大阪戦で応援Tシャツを着用し、集合写真撮影を行った。
それだけではない。16日のJ1第33節・大分トリニータ戦では、スタジアム場外のキングベルパークに販売ブースと寄せ書きスペースが設けられ、Tシャツは完売した。
このTシャツは現在、『久光重貴選手応援サイト Vamos! Hisa!』で、引き続き販売中だ。
「ベルマーレを通じて応援してもらえることは、本当に嬉しいです。皆さんからのたくさんの温かい言葉が、自分の生きる力や頑張る勇気に変わります」
病室に届けられた寄せ書き入りの段幕を見て、久光がSNSを更新。「気持ちが辛くて折れそうになるときもあるけれど、支えてくれる仲間やサポーターがいるから負けられない。想いを力に変えて頑張ります!」とコメントを残した。久光が最後にピッチに立ったのは今年の1月11日。昨シーズンの出場はその1試合だけだった。湘南は優勝圏外にいたが、1試合、1分、1秒のために全力で戦う姿は、多くの人を勇気づけた。
奥村監督が始めた応援企画は今、ハッシュタグ「#ヒサと共に」を合言葉にたくさんのフットボールファミリーを巻き込む一大プロジェクトへと広がりを見せている。これまで何度も何度も闘病生活を乗り越え、ピッチに立ってきた。これからもきっと、ヒサはやってくれるに違いない。再び、ピッチに戻ってきてくれる。そう願い、信じる本当にたくさんのファミリーが、久光重貴へのエールを送り続けている。
文・舞野隼大(SAL編集部)