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 12月13日に東京・両国国技館で行われた「K-1 WORLD GP 2020 JAPAN ~K-1冬の大一番~」は、プレリミナリーファイトを含め合計「11」のKOシーンが生まれ、大盛り上がりのうちに幕を閉じた。そして、その熱気を引き継ぐ形で行われた『K-1 DX』において、K-1 WORLD GPスーパー・ライト級の元王者である安保瑠輝也が登場。『安保瑠輝也、誰とでも戦います』と銘打った今回、“体重差50キロ”の異例ともいえる無差別級マッチ、さらに元THE OUTSIDER王者などの腕自慢たちを一掃し、元王者の貫禄を見せつけた。

【画像】安保も愕然…“体重差50キロ”の驚愕マッチョ

 しかし当初、通常の大会では見られない企画や、K-1ファイターとYouTuberの対戦などのエキシビションマッチを中心に無観客ライブを行う『K-1 DX』への安保の参戦が物議を醸したことも事実。安保は9月に大阪で行われた山崎秀晃とのタイトルマッチに敗れるまで、K-1スーパー・ライト級の王者だった。敗れてもなおK-1の現役トップ選手の一人という認識の裏返しだろう。

 そんな『K-1 DX』を終え、安保は自身のSNSで「炎上がどうした 格闘家らしくないがどうした この商売人に知られてないことが 一番寂しい事なんやと俺は割り切った。もちろん格闘家としても一流の結果出すけどな」と“らしい”ツイートをし、さらなる反響を呼んだ。渦中の本人に、『K-1 DX』への参戦。そしてツイートの真意について話を聞いた。そこには、安保が格闘家として目指す“一流の結果”に対する思いがあった。

■名前を広めるうえで「すべてのファンを喜ばすことはできない」

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 「元王者が…という反応が来ることは分かっていましたけど、今回臨むにあたって元王者ということは関係ない。YouTubeチャンネルでも“喧嘩自慢”と称して一般の方と闘ったりもしている。皆が楽しんでくれている企画であることは数字を見ても明らか。K-1選手として自分が出れば盛り上がることは確信していたので、周囲の雑音は気にならなかったです」

 全対戦を終え、安保はリング上で「本職は格闘家。安保瑠輝也、格闘技を広めるための遊び」と発言を残している。安保瑠輝也という名前、なおかつ格闘技を広めるために「迷いはなかった」と話すが、一方では「少し前の自分だったら…」と最近になり、考えに変化が生じていたことも明かした。

「少し前の自分なら、周囲の反応を気にして迷うこともあったかもしれない。『格闘家らしくない』『試合に負けたのに何をやってるんだ』といった“格闘家らしくあれ”みたいな意見は多かった。それでも楽しみにしてくれている人もいる。今回で受けた批判の声は、“一部の雑音”でしかないと思っていました。もちろん本気で『格闘家らしくあれ』と思って批判をしてくれている人もいると思います。ただ、“安保瑠輝也”という名前を広めるにあたって、すべてのファンを喜ばすことはできない。名前が売れれば売れるほど、安保反対派は絶対に現れる。反対の声は気にせず、そんな僕に付いてきてくれるファンを精一杯大事にしたいと思っているんです」

 では、『K-1 DX』を終え、14日夜に投稿したツイートで伝えたかった真意とは。そこにも安保特有のこだわりがあった。

「最初は10人中9人が『お前がやることではない』と今回の企画に反対でした。でも終わってみれば歴代最高の数字。批判や反対にビビって『俺がやるべきことじゃない』と断ることはできたかもしれないけど、人に知ってもらうきっかけを自ら失うことはしたくなかった。格闘家としてやっていく以上、もちろん強さは大事。ただ炎上しようが、格闘家らしくないと言われようが、人に知られることがほぼ全てだと思っているんです」

■安保が抱く危機感「“知られていない”ことが一番悲しい」

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 「強い選手はたくさんいる」と話す安保だが、“自身への言い聞かせ”としたうえで、格闘家として強いだけではダメだとも指摘する。そこには、YouTuberとしての活動を始めた安保の考え、理由がある。

「試合の再生回数、SNSなどの反響も含めて今の時代はすべてが数字で明らかになる。そこで数字が出なかったら、一部の格闘技ファンは喜んでいても、一般の方には広まっていない。つまり、格闘技自体が広まっていないということになります。知ってもらうというのは当たり前のことで、逆に知られていないことが一番悲しいことと考えないといけない。そこで出る杭は打たれるけど、出過ぎた杭は打たれない。出過ぎた杭になろうと思っているし、『炎上がどうした』と思っています。安保瑠輝也が広まれば、結果的に格闘技を広めることができるんです」

 とはいえ、「身長体重関係なく、誰とでもやる」と呼びかけた今回の『K-1 DX』には、レスリングの元全日本王者であり、元新日本プロレスラー、さらに総合格闘家も経験している北村克哉選手が現れ、体重差約50キロの無差別マッチも行われた。普通ならあり得ない対戦について、怖さはなかったのか。全試合を闘い終えた直後、安保は元アウトサイダーの王者・啓之輔に一番怖さを感じたと話していたが、本音は違った。

「普通に考えて体重が50キロも上で、かつ格闘技を経験している“筋肉マン”なのでビビっている部分は正直ありましたね。北村さんに関しては“万が一”があり得る可能性を感じていたので、作戦をずっとイメージして臨みました。そりゃ、あの身体のフルスイングが当たったら絶対に倒れますからね(笑)」

 しかし安保は、ステップを使って距離を外し、長い距離で脚から攻撃を当て、上を攻める。イメージどおりの動きで北村を圧倒し、ジャブのようなフィニッシュブローで鮮やかにKOしてみせた。本人いわく「脚の形的にはジャブだけど、肩を下げて思い切り振り抜いたので、左ストレートです」。一方、啓之輔については「構えて向き合ったときに、一番落ち着いていて、リングに慣れていると感じた。技のキレは確かにあったが、同じ土俵であれば、負ける気はしないと思っていた」と対戦を振り返った。

■格闘家として追い求める“一流の結果”とは?

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「本職は格闘家」

 そのように口にする安保は、年明けの1月24日に国立代々木競技場第一体育館で開催される「K-1 WORLD GP 2021 JAPAN~K'FESTA.4」において、階級を一つ上げてウェルター級での再起戦を迎える。階級を変えることに関して「今まで無理をしていた」と話す安保は、事実、スーパー・ライト級の王者として迎えた不可思との2度目の防衛戦の際に極度の脱水症状で病院に搬送されている。3度目の防衛戦の相手となった山崎との対戦については、すでに闘っていたのでやるつもりはなかったというが、結果は1ラウンド1分19秒に山崎の“ゴールデンフィスト”が炸裂。強烈な左フックの前にKO負けを喫した。ただ安保は、この敗戦、王座陥落を非常にポジティブに捉えている。

「(山崎戦での)敗戦後にリベンジしたいと言っていたし、その気持ちは今もあります。ただ65キロという自分の力を100%発揮できない階級にこだわって続けていくことに対する疑問もあった。むしろ、前回負けて自分に何が足りないのか。心に慢心はなかったのか立ち止まり、考えることができた。今までは自分がジムのボスだったので、人の意見を聞きにくい状況だったけど、今はボクシングのいい指導者を見つけることができたので、ひと味違った安保瑠輝也をお見せすることができる。負けていいことはないけど、将来自分の人生を振り返った時によかったなと思える負けにするためにも、いつかはリベンジしたいですね」

 「2021年中にはウェルター級のベルトを獲る」と言い切る安保は、格闘家として「一流の結果」を出すことを常に思い描いていおり、一流の結果には3つの条件があると話す。一つはKOできる選手であること。次に一流なので、一番という意味でチャンピオンになること。もう一つは、人から求められるチャンピオンであること。これは安保が認知度の指標として重視している「数字」がとれるチャンピオンであることだ。この三つを兼ね備えたファイターが一流の格闘家であり、それをウェルター級で目指すと意気込みを語った。さらに、こんな夢も……。

「まずは二階級制覇。それからK-1に限らず、格闘技の醍醐味は『誰が一番強いか』というところ。階級にとらわれず、木村“フィリップ”ミノル選手、山崎秀晃選手など違う階級の王者と戦いたい。違う階級、近い階級のチャンピオンと戦って、勝っていきたい。勝った負けたでチャンピオンの価値が落ちることもそんなにない。むしろ、二人のキャラも立っていい相乗効果が生まれれば、K-1の活性化につながります。山崎選手には『ウェルターに上げますけど、キャッチウェイトでお願いできれば』と話し、ぜひという返事をもらいました。ただ、次やるとしたら、間違いなく俺が勝ちますけどね(笑)」

 さらに安保はこんなプランも。

「そうなったら、ぜひPPVでやってみたい。その方が、価値が上がりますよね。後日無料でもいい。“リアルタイムで見るという価値”を作っていければと思うし、作って欲しいと思います。価値の高いファイターはもっとファイトマネーが上がるようになるべき。数字がとれるファイターは、そこに付加価値をつけていけばいい。K-1だって、メインを張れる選手は価値が高い。メインまでの後ろ3試合がPPV。それもいいと思っています」

 安保が自身の認知度を意識し、重きを置くようになったのは、山崎との対戦が決まってからだという。それは格闘家としての価値を高めること、ただのチャンピオンではなく唯一無二のチャンピオンになりたいと考えたのがきっかけだ。「YouTubeなどの活動で人に叩かれたり、罵られたりもしましたけど、確実に応援してくれる人も増えている。ゆくゆくは格闘家・安保瑠輝也ではなく、『安保瑠輝也』としてやっていけるように。まぁ、『職業・安保瑠輝也』で(笑)。そうなれるように、まずはK’FESTA.4でしっかりと勝利しますよ」

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