今や国民の7割近くが持っているといわれるスマホ。事件・事故、災害の現場に居合わせた人が撮影した動画がネットにアップされ、ニュース番組の映像素材として使われることも少なくない。また、110番通報の実に4分の3がスマホからの発信が占めているという。
そんな中、警察庁が110番通報をしてきた人に動画を送信してもらうシステムの導入を検討していることがわかった。仕組みは次のようなものだ。
まず、通報者の了承を得た通信指令室がSMS経由でURLを送信、そこに遷移するとスマホのカメラが起動し、ビデオ通話が始まるという。警察庁では映像を現場の警察官に共有するシステムも検討中だといい、リアルタイムで現場の状況を把握できるようになれば、より適切な初動対応が可能になるとしている。
兵庫県警では10月から「Live110」という類似のシステムを運用しており、火災や交通事故の現場、さらには「車が海に落ちそう」「密漁ではないか」といった内容の動画も寄せられたという。
元埼玉県警捜査一課刑事の佐々木成三氏は「例えばケンカが起きているという110番通報を受けて現場に行く場合、“何人もいる”というような情報だけでは何人の警察官が必要なのかという判断がしづらい。あるいは“黒っぽい服装”と言われて行ってみると、実際には紫だったということもある。火災に関しても、それが放火なのか失火なのかを判断する上で、初期段階の映像が見られるのは重要だ。ただ、そうした状況を通報者に電話で実況中継してもらうのは難しい。その意味でも、いち早く映像を通信指令課が受信することで、より確度の高い情報を現場の警察官に伝えることができるようになるメリットはある」と話す。
警察庁のまとめ(令和元年版「警察白書」)によれば、通報を受けてから警察官が現場に到着するまでの平均時間は8分9秒だったという。佐々木氏は「緊急走行で現場に行くわけだが、それでも到着すると通報者がいなくなっていることもあるし、被疑者が逃走してしまっていることもある。その前に現場の動画が警察に届いていれば、どういう人物が、どちらの方に逃走していったか、といったことも分かるかもしれない。この8分9秒の間に様々な準備ができることにもなる」とした。
一方、お笑い芸人のみほとけは「映像に残しておいた方が後で裁判になった時などに証拠になる、ということもあると思う。その意味では、“撮っていないで助けろよ”といった“野次馬批判”に繋がらなければといいなと思う。ただ、まず電話する時点で勇気がいると思うし、身の安全を考えると、さらにカメラを起動して…というのは怖い」と話すと、佐々木氏は「もちろん撮影者の安全確保が最優先になると思う。その上で、今その現場の映像が必要なのかどうなのかという緊急性を判断した上で送ってもらうようにしなければならないし、“このようなことはしないでください”といったマニュアルが必ず作成されると思うし、蓄積も必要だ」とした。
今この瞬間もあらゆる映像がネットにアップされている時代。防犯カメラの増加は犯罪抑止につながったものの、こうした警察の取り組みが、さらなる監視社会につながってしまうという見方もありそうだ。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「よく監視社会化していると言われる中国の人に“でも、自由がなくて安全な社会と、自由だけど治安が悪い社会どっちがいいの?”と聞かれると、返す言葉がない。コロナ対応についても、それこそ中国や韓国のように監視も含めて徹底的にコントロールしている国の方が抑え込めているというような現状を見ると、戦後の自由で民主的な国から、そういう方向に進んでいく可能性もある」と指摘。「これも中国の人が言っていたことだが、“隣の爺さんに見られているのは気持ち悪いが、AIなら気にならないのではないか”と。確かに人に見られる監視は気持ち悪いが、AIによる監視ならいい、ということになるかもしれない。特に日本の場合、国家による監視よりも、隣人や社会の監視の方が多い気がするので、そのようにして社会の秩序が保たれるのは、そんなに悪くない話なのかもしれない」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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