現在、将棋界にはタイトルホルダーが4人いる。序列1位に君臨する渡辺明名人(棋王、王将、36)、豊島将之竜王(叡王、30)、最年少記録を続出させる藤井聡太二冠(18)、永瀬拓矢王座(28)だ。この4人で8つのタイトルを分け合う状況に「四強時代」という声が増え始めているが、十七世名人である谷川浩司九段(58)がタイトル27期、出場57回の経験から「4人はタイトル戦が日常になった」という重みのあるコメントを発した。
谷川九段が四強時代について語ったのは、プロ将棋界初の早指し団体戦「第3回AbemaTVトーナメント」のスピンオフ企画で、日本将棋連盟会長でもある佐藤康光九段(51)、十八世名人・森内俊之九段(50)と「チームレジェンド」で再び集まった時のことだ。年末の収録ということもあり、インタビューでは激動の2020年を振り返った。
やはり今年の将棋界といえば、最年少でのタイトル獲得、二冠達成を果たした藤井二冠の話は欠かせないところ。佐藤九段からも「4人のタイトルホルダーが強かった1年でしたが、他の棋士がどう巻き返すか注目です。藤井二冠が他の棋士に与える影響も大きいのかなと思います」と、その活躍ぶりに目を細めた。
すると谷川九段は「今年はこの4人がタイトル戦に複数回出るようになって、タイトル戦が日常の場になっている」と、独特の表現で説明した。「渡辺さんはもう15年ぐらいそうですが、豊島さんはこの3年ぐらい、永瀬さん、藤井さんは今年から日常の場になった。慣れると実力も発揮できる」と、大舞台での慣れや、超トップクラスの相手と繰り返し戦うことでのレベルアップは、タイトル戦に出てこそ培われるものという重い言葉だ。
また、この四強時代を切り崩す存在の出現にも期待は大きい。谷川九段は「その4人で固まってしまうのはおもしろくないし、20代後半の棋士も奮起して、割って入ってくる人が出てきてほしいなと思います」と檄を飛ばすと、続いて森内九段も「盤上でも革新的な技術がどんどん生まれる時代になっている。誰にでもチャンスがある時代なので、名前を聞いたことがない人がトップに上り詰めてもおかしくない、何が起こるかわからない年になるのでは」と予想した。
将棋ソフトによる研究が進み、新手・新戦法が生まれ、古いと言われた戦法が再評価される時代になった。これを考えれば無名の棋士が、突然脚光を浴びることがあってもなんら不思議はない。レジェンド3人が占った2021年の将棋界。来年の今頃には、この四強の構図はどう変化しているだろうか。
(ABEMA/将棋チャンネルより)