年明け早々、プロレスリング・ノアのタイトル戦線に異変が起きた。
1月4日の後楽園ホール大会で組まれた6人タッグマッチ。杉浦貴&桜庭和志&村上和成vs拳王&中嶋勝彦&マサ北宮だ。拳王率いるユニット・金剛はことあるごとに杉浦軍と対抗戦を行なってきた。昨年の最終大会、杉浦軍興行でも7vs7イリミネーションマッチで闘っている。
そのイリミネーションで杉浦軍入りしたのが村上だ。総合格闘技で活躍するとPRIDEにも参戦。プロレスラーとしてはアントニオ猪木が旗揚げしたUFOから新日本プロレスに乗り込んだ。試合前の橋本真也を襲撃したことから“平成のテロリスト”とも呼ばれる。
そんな危険な男が令和になって杉浦軍へ。1.4後楽園でもケンカファイトで暴れまくった。とはいえまだ2戦目。まずは肩慣らしからと思われたのだが、村上はそんな予想を覆してみせる。
拳王と真っ向からの打撃戦を展開するとヒザから顔面蹴り。さらにスリーパーを完璧に決めて拳王を絞め落としてしまった。GHCナショナル王者からの勝利は値千金だ。
「チャンピオンが落ちちゃうのは恥ずかしいんじゃないの」
そう挑発したのは杉浦だ。それを聞いた村上も「あれがチャンピオン? じゃあ次、俺がやってやる。逃げんなよ」。
チャンピオンに直接勝利しているのだから挑戦資格は十分。団体はこのアピールを受け、さっそく1.23エディオンアリーナ大阪第二競技場大会でのタイトルマッチを正式決定した。
(衝撃の勝利を飾った杉浦軍)
拳王にとっては、屈辱の敗戦。しかもスリーパーはこのところ自分でもフィニッシュにしていた技だけに悔しさが増す。
ベルトをかけてのリベンジマッチは当然の流れ。同時に、この負けを長く引きずってはいられない理由もある。
2月12日、ノアは久しぶりに日本武道館大会を開催する。現在のノアで誰よりも早く“武道館帰還”をアピールしてきたのが拳王だった。その晴れ舞台に、村上への屈辱を抱いたまま上がるわけにはいかないだろう。
だが、もし再度、敗北を味わえばベルトなしでの武道館という最大級の屈辱も待っている。これまで対戦が少ないだけに危険な相手、しかし絶対に負けるわけにはいかない相手。武道館決戦に向けても、このタイトルマッチは重要な意味を持つ。
文/橋本宗洋
写真/プロレスリング・ノア