野党も賛否分かれる特措法改正案の「罰則規定」 西田亮介氏は“補償ありき”にも疑問符「事業継続よりも優先されるべきは経営者の命と生活」
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 政府が成立を目指す新型コロナ対策の特措法改正案。政府は休業要請などに応じない事業者に対し、刑事罰とならない「行政罰」として、50万円以下の過料とする案を検討している。

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 「給付金と罰則」をセットにする方針を示している菅総理に対し、野党でも罰則を盛り込むかどうかについて賛否が分かれている。国民民主党の玉木代表は「補償と罰則をセットでやるべき。現在の特措法では実効性が担保できないのでは」と賛成の立場をとる一方、共産党の志位委員長は「私たちは罰則を入れ込むことには反対。もし罰則どうしてもとなると私たちは賛成できない」と反対の意思を示した。

 5日の与野党間で行われた協議では、「私権の制限」につながるとの懸念から、立憲民主党や共産党からは「罰則に頼るのは危険」という指摘や、「補償が薄ければ罰則覚悟で営業する業者が出かねない」といった意見が相次いだ。立憲民主党の枝野代表は「まず一番大事なのは補償の議論だ」と、罰則に反対かどうかについては明言していない。

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 特措法改正の焦点となっている罰則について、東京工業大学准教授の西田亮介氏は「反対」の立場から次のように述べる。

 「少なくとも平時あるいは感染が落ち着いている時期にしっかりと議論しないといけない。なぜかというと、あまり認識されていないが事業者の営業自由度を著しく制限しうるからだ。罰金の金額もさることながら、“違法事業者”“違法店舗”というラベリングを施すことになる。そうした中で営業することは今以上に難しくなってしまう。仮に感染対策を十分に行っていたり、その店舗が立地する場所の感染が落ち着いていたとしても営業が困難になってしまう。行動変容を促すために特措法でできることはまだあるはずし、緊急事態宣言でもまだ使っていないメニューがある。一足飛びに罰則を導入することには反対だ」

 一方で、立憲民主党の枝野代表が訴えた「補償ありき」についても疑問を呈する。

 「補償というのは当然、国や自治体から何か強制があった時になされるべきものなので、補償ありきという主張はよくわからない。事業者の困窮のたびごと国が資金をばらまくのも変だが、それは補償ではなく補助金だ。過去の持続化給付金や休業協力金の給付措置も、補償ではなくあくまでも協力金であって、あくまで要請=お願いとして事業者がそれに賛成するもしないも一応裁量が残されている。それから、このようなアプローチには事業者が自ら感染予防の環境を作っていくインセンティブがほとんどないという問題もある。すでに感染防止対策の補助は自治体が出したりしているが、例えばデリバリー中心にする業態変更やアクリル板を導入するといった施設の整備を促すなど、感染防止措置や業態転換促進を行うための補助金、貸与をさらに手厚くするやり方もあるはずだ」

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 こうした経営環境の激変の中で、事業の継続よりも優先されるべきは経営者の命と生活だと西田氏は指摘した。

 「事業に対して国が給付をするのではなく、経営者の命や生活を手厚く補償するべきだ。業態変更のみならず、過去の災害対応で行われた、事業継続に際して二重ローンを引き取るスキームがあった。それらと同じようなスキームを立法で作り、コロナ禍での廃業の際にも債権を買い上げるようなスキームを混ぜ込んでしまうやり方もありえるのではないか。有効求人倍率も、北海道や沖縄などを除くと1を割り込んでいないし、完全失業率も3%前後で一時期は上がると思いきやまた下がり始めている。いろいろな選択肢がある中で、事業継続に対してだけ本当に効果があるかわからないお金をまくより、しっかり経営者の生存権や生活を守り、状況に応じた業態転換や雇用流動にもお金をつけていくことが重要だ」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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