「次は法廷の可能性も」大富豪アリババ創業者2カ月行方不明で憶測相次ぐ…国有企業の“縄張り”進出が理由か?
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 欧米メディアなどが今月に入り、「中国の巨大IT企業・アリババの創業者、ジャック・マー氏が去年10月を最後に公の場に姿を見せていない」と次々に報じている。

【映像】ジャック・マー氏が失踪前に行ったSNS投稿(4分30秒ごろ~)

 マー氏は、1999年にアリババを創業。中国にインターネット通販や電子決済サービスを普及させた。そして、アリババの創業20周年の節目となった2019年、55歳の若さで会長を退任。中国の民間シンクタンクが発表した富豪ランキングでは、日本円で約6兆4000億円の資産をもって4度目のトップになるなど、資産家としてもその名が世界に知られている。

 わずか一代で巨大IT企業を築き上げたマー氏。マー氏には、会合時、アメリカのトランプ大統領も「彼は世界で最も偉大な起業家の一人、そして彼はアメリカも中国も愛している」と賞賛の声を送った。

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 今回の失踪報道では、姿を見せなくなる直前の去年10月、政府の要人らが出席した上海の会合で、率直な物言いをしたことが原因ではないかとも言われている。

 上海の会合で「バーゼル合意はまるで老人クラブ。欧米の老朽化した複雑な金融システムには合うが、中国は真逆で金融システムがまだないのがリスク」「銀行は今も質屋の発想だ。質屋の発想をやめてビッグデータに基づく信用システムに切り替えるべき」と発言したマー氏。その直後の去年11月には、スマホ決済サービス「アリペイ」を運営する「アリババグループ」傘下「アント・グループ」の新規上場が突如延期に。さらに、マー氏らが中国の金融当局から事情聴取を受けていたことも明らかになっている。

 去年12月18日には、中国共産党が「アリババグループ」などを念頭に「独占に断固反対する」として、中国国内のインターネット企業への規制を強化する方針を表明。同月24日、中国当局は「アリババグループ」が市場での独占行為を行った疑いがあるとして、立件して調査を行うと発表した。今月10日には中国最高裁がトップを集めた会合で「今年はプラットフォーマーの独占禁止法違反、不当競争に厳しく対処する」と改めて表明した。

 背景には中国政府が導入を進めている「デジタル人民元」普及のため、ライバルとなる「アリペイ」や「WeChatペイ」などをけん制している説も浮上。この一連の動きと、マー氏の失踪との関連は明らかになっていない。

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 マー氏の行方について、今月5日に、アメリカのジャーナリストが「行方不明ではなく、中国で身を潜めている」と伝えたが、マー氏自身のSNSの更新は去年10月の投稿を最後にストップし、現在も公式な声明は出ていない。

 表舞台から忽然と姿を消してしまった、ジャック・マー氏。海外メディアからはさまざまな“憶測の声”が飛び交っている。ネットでは「消された」か「亡命した」と噂されているが、関係者によると「マー氏が“消された”可能性は非常に低い。おそらく自宅もしくは『非常に快適な場所』で時間をつぶしている」という。

 中国人民大学に留学経験もあるニューズウィーク日本版編集長・長岡義博氏はこのニュースに「推測になってしまう部分もあるが」と前置きした上で、「過去の例から見て、要人や学者、ジャーナリストが突然消えるのは、どこかに軟禁されている可能性が高い。次に出てくるのは法廷というパターンだ」と語る。

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「アリババの電子決済サービス『アリペイ』は、中国でかなりのシェアを誇っている。アクティブユーザーが7億人強。ただ、電子決済サービスはそこまで利益率が高くない。ジャック・マー氏はアント・グループの上場によって、投資・金融部門に乗り出そうとしていた。投資・金融の分野は非常に儲かる。中国でこの業務を主にやっているのは、国有企業。国有企業は中国共産党の基盤で、もしアリババがこの分野に進出することになると、中国共産党支配の脅威になる」(以下、長岡義博氏)

 11月3日に決定したアント・グループの上場延期に着目した長岡氏。ジャック・マー氏が象徴する民間企業の存在感の増大が、共産党の危機感を呼び今回の失踪へとつながったのだろうか。

「歴史的にいうと、中国は昔、貧乏な社会主義国だった。しかし、鄧小平(中国第2代最高指導者)氏の力によって、『改革開放』を掲げ、民間の力を経済発展に利用するという方向に変わった。それが江沢民氏、胡錦濤氏の政権でも続いた。しかし、習近平主席になってから逆に民間企業の力を押さえ、中国共産党の力を強くする方向に政策を変えた。このアリババへの仕打ちを見ていると『共産党の利益を犯さない枠の中であればビジネスをやっていいが、それを超えるとペナルティを課す』というメッセージ送っているように感じる。貧乏な強権主義国家だった中国が、経済成長によって金持ちの強権主義国家に変わった。非常にやっかいな存在で、隣の日本だけでなく価値観の異なるアメリカやヨーロッパにとっても脅威だ」

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 過去に「起業家になることは素晴らしい経験ですが、容易ではありません。困難なのです」と語ったジャック・マー氏。世界的な大富豪の失踪に、世界中のメディアが注目している。

ABEMA/「ABEMAヒルズ」より)

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