新入幕の翠富士が七日目の琴ノ若戦で今場所2度目となる得意の肩透かしで5勝目を挙げた。ちなみに十両優勝した先場所は10勝のうち、この技を4番も決めている。肩透かしとは差し手で相手の腕のつけ根を抱えるか、脇に引っかけるようにして前に引き、同時にもう片方の手で相手の肩口あたりを上から叩くように引き倒すという決まり手。これと似ている叩き込みは片手、または両手で相手の肩や背中を上から叩き落とすことを言う。また、相手の脇の下か脇腹に当てた手で横に相手の重心を傾かせ、斜め下に押さえつけるように倒せば突き落としになる。
通常、技能派と言われる力士でも大半は寄り切り、または押し出しが決まり手のトップを占めるが、入門から約4年半の翠富士は先場所までの通算勝ち星123勝のうち、肩透かしが30番もあり、全勝ち星の約25%という圧倒的シェアを誇る。
寄り切り、押し出し以外の決まり手に偏向する技の使い手は過去にも何人かは存在する。“技のデパート”の異名を持つ舞の海や同時代に活躍した智乃花は下手投げが突出していたし、昭和30~40年代に活躍した明武谷、若浪、陸奥嵐などは寄り切りよりも吊り出しがはるかに多く、「吊りと言えば……」と決まり手自体がその力士の代名詞になるほどだった。最近ではロシア出身の阿覧は叩き込みが群を抜いていた。
こうした“一点突破”を貫いた力士にはそれぞれ自分にしかない“技の奥義”があっただろうが、技を繰り出すタイミングという点では、これほどまでに肩透かしを決めるというのはかなりの難易度であろう。しかも、翠富士のすごいところは左右、どちらからでも繰り出せることだ。日ごろの稽古の賜物であろうが、持って生まれたセンスも相当なものに違いない。小兵ながら立ち合いは真っすぐ当たる正攻法を貫き、相手を押し込んでいるからこそ、その反動も利用しながら面白いように決まるのだ。
いつの時代でも小兵の業師は土俵を沸かせてきたが、その中でも24歳の新入幕はこれまでにない異彩を放っている。
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