初日から3日連続で大関撃破、その後も勢いが止まらない大栄翔は1991年秋場所の若花田(のちの横綱3代目若乃花)以来となる対戦する役力士全員から白星を奪った。初めての平幕戦となった八日目は長身でリーチの長い輝の突っ張りに今場所初めて土俵際まで攻め込まれたが、窮地で相手のかいなを手繰るととったりで逆転勝ち。ただ一人ストレートで給金を直すと1敗だった大関正代が敗れ、後続に2差をつけて初優勝の期待も大きく膨らんできた。
個人優勝制度が始まった1909年夏場所以降、47都道府県でいまだ優勝力士を輩出してないのは大栄翔の出身地である埼玉県をはじめ、宮城、福井、静岡、岐阜、滋賀、京都、和歌山、島根、徳島、宮崎、沖縄の12府県。宮城県出身の青葉城、静岡県出身の天竜三郎、岐阜県出身の羽島山、和歌山県出身の栃乃和歌らは千秋楽まで優勝争いをしながら、惜しくも及ばなかった。
埼玉県出身力士で過去、もっとも優勝に近づいたのは秩父市出身の若秩父だろう。10代で三役に昇進し、将来を大きく嘱望された力士だった。1958年秋場所は新入幕ながら十二日目の時点で10勝2敗と優勝戦線に顔を出したが、最後は優勝した同じ花籠部屋の横綱初代若乃花と2差の12勝に終わった。1960年夏場所は十二日目を終わって横綱若乃花、平幕の若三杉(のちの大豪)とともに“花籠トリオ”が1敗でトップに並んだが翌十三日目に若乃花、若秩父が2敗に後退。1敗の若三杉がそのまま逃げ切って初優勝。後続の2人は13勝とわずかに及ばず。
若秩父に三たび、チャンスが訪れたのは1962年初場所。1敗の横綱大鵬を1差で追っていたが十三日目から痛恨の連敗で優勝した大鵬とは2差が開いて11勝だった。
その後、埼玉県出身力士が優勝戦線に大きく絡むことはなかったが2017年九州場所、同県所沢市出身の北勝富士が同じ八角部屋の兄弟子、隠岐の海とともに“プチ旋風”を巻き起こした。1敗の横綱白鵬を“八角コンビ”が2敗で猛追も十四日目に揃って敗れ、この日勝った白鵬の40回目の優勝があっさり決定。優勝争いの盛り上がりはあっけなく萎んでしまい、3敗に後退した2人は気持ちの糸が切れたのか、千秋楽もともに黒星で11勝と最終盤で躓いた。
同郷の先人たちが挑んで届かなかった賜盃に向かって突っ走る朝霞市出身の大栄翔は地元の小中学校を経て埼玉栄高から埼玉県草加市にある追手風部屋に入門。生粋の埼玉県人が一躍、郷土のヒーローに躍り出ようとしている。
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