「罰則が必要なほど要請拒否されているのか」「かえって検査拒否を増やす可能性」政府与党のコロナ特措法改正案に強い懸念
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 昨日始まった通常国会での審議の行方が注目される、新型コロナウイルス対策のための感染症法改正案。与党が提出、今週中の閣議決定を目指している案では、感染者が入院に応じない場合などに対して「1年以下の懲役、または100万円以下の罰金」とする刑事罰を設ける。

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 ところが与党・自民党の石破元幹事長は「どういうような業態に対して罰則をかけてまでやるのかということについて、まだ納得していない方々が多いのだと思う」、大阪府の吉村洋文知事は「罰則については少し懐疑的な考え方を持っている」と疑問を呈している。

■「罰則が必要なほど要請が拒否されているのか」

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 18日の『ABEMA Prime』に出演した国民民主党の山尾志桜里衆議院議員は「これまで自宅やホテルで療養していただくことについては法的な位置づけが無かったし、そうしたことについての必要な改正も入っている。ただ、これはやりすぎだという点、逆効果になりそうだという点については仕分けをしなければならない。閣議決定前に議論をし、良いものを残し、悪い部分は改善するということが大切だ」と指摘する。

 「いわば平時と緊急事態の間に“プチ緊急事態”みたいなものを作るということだが、政府の話をよく聞いてみると、国会の関与が無いままに緊急事態並みのことができてしまうという仕組みになっている。例えば“まん延防止等重点措置”について政府の改正案を見てみると、“営業の時間の変更”の後に“等”という言葉が付いている。これでは休校・休園もお願いできるし、さらに命令、公表、罰則も付けられてしまう。また、補償についても18日に出てきた案では“措置するものとする”となっているが、これは政府の“義務”というよりは政策的なサポートとしての“支援”であって、かなり不安定な規定に留まっている」。

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 さらに山尾議員は、罰則を盛り込まなければならないほどの「立法事実」、つまり必要性にも疑問を呈する。

 「どちらが社会の便益になるかと考えた時、確かに罰則を設けた方が良いという事もあり得るとは思うし、現場を見ている都道府県知事から強力な措置が取れるようにしてほしいという要望が来ていることもわかる。ただ、まずは政府の要請が拒否されているという実態を確認するという手続きが必要なのではないか。実際、どれくらいの人が入院の要請に応じなかったのか、それによってどんな問題が現場で起きているのか、数字も含めて教えて欲しいと厚生労働省に聞いてみた。しかし、“非常に忙しく、各保健所から聞き取って集計するという作業が今もできていない”ということだった。なぜ入院ができないのか、なぜ行動報告をためらうのか、抜本的なところを解決しないまま罰則をかけるというのは順番がおかしい。また、その罰則が本当に必要最小限のものなのか。憲法の下、どのくらい許容されるかという議論も必要だ。結果的に“入院しろ”“行動を報告しろ”と強く威嚇する形になることで、かえって検査をためらったり、結果を隠したりするようになっていく可能性もあり得る。そうしたリスクも分析しなければならない」。

■「検査拒否を助長してしまう懸念」

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 先週には日本医学会連合も「罰則を伴う強制は、国民に恐怖や不安、差別を惹起することにもつながり、(中略)国民の主体的で積極的な参加と協力を得ることを著しく妨げる恐れがある」とする緊急声明を発表している。

 内科医で司法試験合格者でもある米村滋人・東大大学院法学政治学研究科教授も「感染症対策でやるべきことというのはたくさんある。ただ、どれを優先してやっていくかを取捨選択した結果のこの法案というよりも、とにかく現場から声が上がってきたからこの法案を作る、という印象がある。これではかえって全体の感染状況にとってマイナスの結果になりかねない」と指摘する。

 「日本医学会連合も指摘していることだが、やはり入院拒否に対して罰則をかけることが検査拒否を助長してしまう懸念がある。現状でも陽性者に対する差別や偏見があり、他の人に感染の事実を告げることをためらってしまう状況がある。すでに発症して入院が必要な人を病院に収容する以上に、感染を広げている無症状者、未発症者を早い段階で補足し、“あなたは陽性だから家でじっとしていてください”と伝えることが必要なのに、不利益を被る可能性があるとなれば、そもそも検査を受けないことが合理的な行動だということになってしまいかねない。また、未発症者の捕捉率を上げるという意味では、本人の記憶などの不確かな情報でやっていくのではなく、COCOAなどを通じて本人、場合によっては保健所などが行動履歴を把握できるようにしておくというのも制度設計としてあり得ると思う。そういうことも対策として盛り込むべきだが、一切できていない」。

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 また、新型コロナ特措法の改正案では緊急事態宣言下で知事の時短営業の命令に違反した場合は「50万円以下の過料」、さらに宣言前であっても「30万円以下の過料」を科すとしている。

 この点について元経産官僚の宇佐美典也氏は自粛要請について「例えば10店のうち9店が自粛要請に従い、1店が従わなかったとすると、その1店に客が集中し、繁盛することが考えられる。そうなれば、社会全体としては損をすることになる。また、過料のみというのも最悪だと思う。100万円の売上があるなら、50万円を払わされたとしても店を開けておく方が得だということになるし、実質的に政府がそれを認めているということになる。一方で、山尾議員の言うように立法事実の確認してから罰則の措置を議論しようとなると、感染症対策の観点からは手遅れになってしまう可能性もある」と指摘していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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