「We Will Make America Great Again.(私たちはもう一度アメリカを偉大にしよう)」
今から4年前、「アメリカを再び偉大な国に」をスローガンに第45代アメリカ合衆国大統領に就任したトランプ大統領。まず注目されたのが、メキシコとの国境に壁を建設するという公約だった。不法移民対策として、建設費はメキシコに支払わせると豪語し、掲げられた目標だ。しかし、メキシコ政府が拒否したことから結局アメリカ国民の税金から捻出されることになった。
【映像】通り抜け不可能? 高くそびえ立つアメリカの“国境の壁”(40秒ごろ~)
トランプ大統領は任期終了間近となった今月12日、テキサス州の国境を訪れ壁の成果をアピール。
トランプ大統領「国境の壁の建設について、驚くべき素晴らしい成果を祝うためにここにやってきたんだ。我々は次の政権にこの壁を解体させるわけにはいかない」
常に強気な態度が印象的だったトランプ大統領だが、軍事面においては、激しい他国との対立の中でも戦争による問題解決は回避する姿勢を見せてきた。
2018年、トランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都として正式に認め、「テルアビブからエルサレムへの大使館移転」の方針を発表。長年対立してきたイスラエルとアラブ諸国の仲介役として国交改善を進めた。
トランプ大統領「(国交正常化の合意ができたことは)本当に歴史的な瞬間だ」
また、北朝鮮に対しても歴史的な歩み寄りを見せるなど、積極的な武力介入に踏み切ることはなかった。その代わり、敵対する国に行ったのが経済制裁だ。特に中国を相手にした米中貿易戦争は、アメリカ側が中国からの輸入製品への関税引き上げを発表すれば、中国も対抗し、世界中から動向に注目が集まっていた。
さらにアメリカはファーウェイなど中国企業5社の製品を使う企業との取引を禁止にするなど中国企業排除の動きも加速。今年に入っても、ニューヨーク証券取引所が中国の通信大手3社の上場を廃止すると発表した。トランプ大統領が去年11月の大統領令で中国の人民解放軍と関係のある中国企業への投資を禁止したためだ。
アメリカに不利益をもたらすと判断すればパリ協定やTPPからも離脱。アメリカ第一のためには、国際社会との協調に縛られることもなかった。
強烈なリーダーシップが批判を生むこともあった一方で、熱狂的な支持者が多くいたのも事実だ。「トランプ氏のもっとも偉大な功績は?」と聞くと、支持者は「2週間くれれば片っ端からお話ししますよ。信じられないほどたくさんあるから」と語る。
しかし、大統領選に敗北した今、主張の場として利用してきたTwitterなどのSNSからは排除され、さらに2度目の弾劾訴追を受けるなど、逆風の中での退任となった。
■連邦議会襲撃は歴史の汚点 南北戦争の時代に“先祖返り”したアメリカ
強烈な個性を貫いた4年間。トランプ大統領がアメリカに残したものとは一体なんだったのだろうか。テレビ朝日の元アメリカ総局長・名村晃一氏は「強烈な4年間だった」と振り返る。
「トランプ氏が発表したビデオメッセージの中でも『レーガン(※第40代アメリカ大統領)以来の大幅減税をした』と自負していた。新型コロナが拡大する前までは、景気は下降曲面になく、アメリカは強かった。経済を見ると、そこは非常に大きな役割を果たしている」(名村晃一氏)
その上で名村氏は「この4年間でアメリカが変わってしまったところ」について、「分断によってアメリカの根本が少しおかしくなった」と苦言。「トランプ氏は全員に支持してもらおうという考え方ではない。自分の支持者だけに特化して支持を訴えたことで、分断ができてしまった」という。
「アメリカは多民族国家で、いろいろな人種の人がいて、いろいろな考え方がある。当然心の中に差別的なものがあっても、それを抑えて1つの国として発展してきた。それをトランプ氏は白人至上主義の人たちを中心に、その人たちだけに気持ちを伝えたことで、6日(現地時間)に起こった米連邦議会の乱入事件につながった。南北戦争の時代、奴隷を認めるか廃止するかというところまで、アメリカは先祖返りしてしまった。それをトランプ氏が誘導した。特に連邦議会への襲撃は、本当に“アメリカの歴史の汚点”という風に表現されている」(以下、名村晃一氏)
中でも評価が決定的になったのは選挙中における行動だったという。
「選挙に負けても負けを認めないなど、選挙中からトランプ氏は根拠のない主張で駆り立てた。ここで決定的に評価が下ってしまった。それまでもいろいろなことがあったが、民主主義のもと大統領として“国家の代表”だった。選挙以降のトランプ氏の行為で、一気に評価ができてしまった」
さらに、名村氏は、過激勢力「boogaloo(ブーガルー)」に注目。米連邦議会に乱入した複数の抗議者が自分たちを「ブーガルー」と称していたのだ。
ブーガルーは人種差別や反政府の動きを指す言葉で、映画『ブレイクダンス2:エレクトリックブーガルー』に由来。同映画は地元コミュニティセンターを腐敗した政治家や企業から救うために戦う10代の若者たちの物語だ。
南北戦争のような人種間戦争を呼びかけるブーガルー。名村氏は「人種差別的な動きがブーガルーという言葉によって定着してしまった」という。
「それぞれのブーガルーを組織しているのは、個人であったり、団体だったりが別にある。みんなネットを通じて情報交換して集まってきて、集会を開く。トランプ氏もTwitterを使って発信をした。インターネットの強さを十分に利用したのがトランプ氏で、人種差別的な動きがブーガルーという言葉によって定着し、任期の最後に向かって大きくなってしまった。トランプ氏はビデオメッセージでも『まだこれから始まるんだ』という言い方をしている。FBIもこういった運動(連邦議会への襲撃など)がこれからまた出てくることを非常に警戒している」
FBIも危機感を募らすブーガルーの存在。20日(現地時間)に就任式を行なった新大統領のバイデン氏にはどのような影響があるのだろうか。
「社会が不安になってくると『もう一度アメリカ全体が一つになりましょう』『みんなで考え方を理解し合いながらやりましょう』と言うのがバイデン氏のやり方。ただ、社会不安がもっと高まってくるとバイデン氏がそう言っても、社会が向いてくれなくなる。南北戦争は、リンカーンが大統領に就任してから始まっている。歴史がどう動くのか非常に気になるところだ」
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