女子の立ち技において、角度45度、勢いよく真っすぐに振り抜いた前蹴りが顔面を捉える男子さながらの壮絶KOシーンが起こると、実況が思わず「前蹴りでひと刺しだ!」と絶叫。それに呼応するように「はじめてみた」「前蹴りでKOは凄い」など視聴者からも驚きの声が殺到した。
1月23日に東京・後楽園ホールで開催された「Krush.121」。第5代Krush女子フライ級王座決定トーナメント・準決勝で真優(まひろ)とNA☆NAが対戦。試合は2ラウンド、真優が鮮やかな前蹴りでダウンを奪いKO勝ち。4月のKrush後楽園大会での決勝戦へコマを進め、Krushタイトル獲得に大手をかけた。
対照的なバックボーンを持つ選手同士の対戦だ。関西の強豪ジム「月心会チーム侍」所属の真優は20歳ながらアマチュアでの経験も豊富。敗れたもののK-1のリングでKANAや壽美といった強豪と拳を交えている。
一方のNA☆NA(エスジム)は、北海道出身の30歳。ダイエット目的でキックボクシングを始めると、キャリアわずか3年でまさかのKrushへの抜擢。「他力本願」がスローガンだが「年齢は関係なくできる」という意気込みでこのトーナメントにエントリーした。
試合は序盤から真優が前蹴りや左ストレートを当てペースを握ろうとするが、NA☆NAも左右のフックの連打で応戦。技術面では真優に劣るが、気持ちの強さを見せる立ち上がりだ。NA☆NAのアグレッシブな打撃を貰う場面が目立った真優だが、1ラウンド後半になると落ち着きを取り戻し、的確に左フック、右ストレート、さらに得意の前蹴りを当てラウンドを終えた。
2ラウンド、真優がギアを上げゴングとともにロー、ボディへの前蹴り、さらにミドルの連打と固め打ち。後ろによろめきながら下がるNA☆NA。それでもNA☆NAも距離を縮め左右の連打や前蹴りを見せると、真優は下がってひと呼吸置きハイキックなどで冷静に試合をコントロールする。
連打による打ち疲れが見え始めたNA☆NAに対して、真優はこのタイミングを待っていたかのように、左を当て距離を作ると鮮やかな前蹴りを一閃。真っ直ぐに伸びた足がNA☆NAの顔面にクリーンヒット。両手をついて立ち上がろうとしたNA☆NAだったが、ダメージは大きく尻餅をつき、腰から砕けるようにダウンするとゴングが打ち鳴らされた。
ABEMAで解説を務めた石川直生も女子マッチでのKO、しかも異例の前蹴りでのフィニッシュについて「ダウンはあってもKOまではなかなか見たことはないですよね」とコメント。鮮やかな前蹴りにABEMAのコメント欄も「まじかー」「前蹴りでKOは凄い」「はじめてみた」「アゴか?」「クリティカルヒットだな」と反応した。
ゲスト解説を務めた佐々木大蔵は「あの前蹴りは見えないと思います」と指摘すると、さらに石川が「ダウンするときは脳が防衛本能ができてないから倒れてしまうので、ちょっとでも見えていれば反応したり立つことはできるのですが、全く見えてなかった結果でしょうね」と話し、壮絶なダウンシーンに至ったプロセスを解説した。