新型コロナウイルスの感染拡大を受け、栃木県を除く10都道府県を対象に緊急事態宣言の1カ月延長が決まった。菅総理は2日の記者会見で「これまで国民の協力ではっきりとした対策の効果が見られ始めている。これからの期間も飲食店の時短を中心にメリハリをつけたこれまでの対策を続ける」と述べている。
野村総研は、緊急事態宣言が先月8日から2カ月続いた場合、試算としてGDP=国内総生産の年率で1.0%に相当する5兆8000億円の経済損失が生じると発表。外出の自粛によって個人消費が落ち込み、この影響で失業者が22万9000人増加するとも試算している。
また、大和総研でも今年1月から3月のGDPの伸び率がマイナスに転じると予想していて、緊急事態宣言が解除されても厳しい時短要請などが続けば、2桁の大幅なマイナスになるおそれがあるとしている。
このニュースに慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は「飲食店の人たちは家賃や人件費などの見通しを立てることが大切。いつまでこの状況が続くのかがはっきり分からないと、見通しが立てられずどんどん経営が大変になる」と指摘する。
「緊急事態宣言を1カ月やって効果がなかったわけじゃない。むしろ、完璧ではないが『そこそこ効果がありました』というムードになっている。そこそこ効果があったのに、まだ延長するということは、元々1カ月じゃ足りない計算だったんじゃないのかということ。だったら『1カ月やります』と言って後から延長するよりも『長ければ2カ月やりますよ』という悪いパターンを先に伝えておいて、想像以上に効果が出たら短くするやり方の方がよかったのではないか」(以下、若新雄純氏)
緊急事態宣言の延長によって、苦境に立たされる飲食店。まちでは閉店や休業に追い込まれる店舗も相次いでいる。
「うれしいキャンペーンだったら追加や延長はハッピーだけど、(緊急事態宣言は)我慢しなければいけない、つらいキャンペーン。発表時に政府はできるだけ軽めのいい情報を伝えたいだろうが、一番苦労している飲食店や現場の人の『見通し』のことを考えると綺麗事ではなく、悪い場合を先にちゃんと伝えて『うまくいけば短くしていきます』という伝え方が必要だったのではないか。継ぎ足しで延長するよりは『最悪、2カ月続きますよ』と言われた方が、飲食店は休業期間や仕入れ、料金などの計画をそれに合わせてもっと立てやすかったはず」
【映像】若新雄純氏「悪い場合の見通しを先に伝えて」(解説フル)
政府の「あとで追加」するやり方に苦言を呈した若新氏。東京都によると、3日に確認された新型コロナウイルスの感染者は676人で、6日連続で1000人を下回ったものの、依然医療現場が緊迫していることに変わりはない。
「ワクチンも『早ければ医療関係者には2月中旬に』とは言われているが、やっぱり無理だったとなると計画が後ろ倒しになって、どんどん狂っていく。政府は批判が苦しいかもしれないが、厳しい方の見通しを先に国民に伝えて『遅くともいつまでには』『最悪これぐらいかかります』と説明して、うまくいったら前倒すやり方に変えたらいいのでは」
政府の新型コロナ対策に振り回される飲食店や医療現場。1日も早い感染抑制への確実な見通しが求められている。
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