“2025年問題”で誰もが親の介護・葬儀に直面する可能性…代行業者に依頼する子どもは“血も涙もない”のか?
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 5人に1人が75歳以上という超高齢化社会が到来し、多くの人が家族の介護に直面することになる。いわゆる“2025年問題”が目前に迫ってきている。

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 そんな中にあってベストセラーになっているのが、直木賞作家の桜木紫乃氏の小説『家族じまい』だ。物語は、子育てに一区切りがついたアラフィフ女性のもとに、母親の認知症を知らせる妹からの手紙が届くところから始まる。それまで両親と疎遠だった女性は、母親の介護を機に、家族との関係を見つめ直していく。

 同作の読者からは共感の声とともに、家族と「距離を置きたい」「縁を切りたい」という、“家族じまい”を望む声も上がっているようだ。

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 鈴木さん(仮名・40歳)は、幼い頃から不倫やDVを繰り返してきたという父親が介護施設に入所する際の保証人になるのを断ったという。音信不通状態にあった鈴木さんと父親をつないだのが、一般社団法人「LMN」だ。高齢になった家族の生活状況を把握し、サポートする事業を展開している。父親の恋人が、鈴木さんの行方を探すよう依頼したのだという。

 代表理事の遠藤英樹氏は「本人もご高齢になり、もしかすると面倒を見きれなくなるかもしれないということだった」と話す。

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 遠藤氏からの連絡に驚いたという鈴木さん。しかし、遺産の問題や父の女性関係がそれを阻んだ。「愛人みたいな人と一緒に不動産を売ってしまった。そのことで私の相続の分が少なくなった。介護施設への入所を希望したのも、女性問題が発覚して離婚に至ったという経緯があった。「一緒に食事をしたり、子どもの頃の話をしたり、孫の話をしたり。そういった何気ないことが普段からできていれば、関係も修復できたのではないかなとも思った」。

 それでも鈴木さんは“家族じまい”ができたとは思っていないと話す。「最終的には葬儀をするかしないかという話もある。そこまでして、私は家族じまいだと思う」。

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 遠藤氏によると、鈴木さんのように遺産の問題に関連して依頼が来るケースは少なくないという。「葬儀だけには来たが“遺骨もいらない”“部屋もかたして(片づけて)下さい”」といった要望もあるという。

 「やはり今は離婚も多いので、パートナーがおらず、子どもとも離れているというケースが多い。億の遺産があるのに“いらない、とにかく何もしたくない”という方もいるし、中には全て電話で済ませ、私たちが納骨まで終わらせてしまうケースもある。そのくらい“家族じまい”は人それぞれなので、“これだ”という答えはない。ただ、私たちが言われてホッとするのは“肩の荷が下りた”という言葉だ」。

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 遠藤氏らがそのように感じるのには理由がある。

 「1960年代には1人を9人くらいの兄弟や親族で見ることができていた。それが今や2.2人、2.3人という状態になっている。介護を受ける側は少しでもお金を残そう、介護をする側も、生活が目一杯のところに新たな問題が現れてくる。皆さん焦って、どうしようとなる。“家族じまい”という言葉には違和感も残るが、やはり日本には“血縁”という独特なものがある。DVや虐待を理由に親を受け入れられないという方も、私たちにつながると“やっと見つけた”みたいな感じになる」。

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 作家の乙武洋匡氏は「海外に比べ、日本は肉親に負担をかけがちな仕組みになっていると感じる。私の場合、母親との関係は良好だし、むしろ愛情をかけて育ててもらったことに感謝している。しかし私はこの身体だし、今は離婚して独身の状態。母親に介護が必要になったとしても、自分で見るのは難しいので、最終的には施設や、遠藤さんのようなサービスにお願いするしかない。私のようなケースでなくとも、仕事で地元を離れている人もいる。“なんで親の面倒を見ないの?”という風潮は変えていかないといけないと思うし、依頼する人=血も涙もない人、というイメージは払拭しないといけないと思う」と指摘。

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 ドワンゴ社長で慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏も「いまだに昭和の時代の“家庭”を基軸にした、“家族のことは家族で見ろ”という仕組みになっていると思う。離婚率も高まっているし、親の介護のために会社を辞める、という人も珍しくなくなってきている。これまでの仕組みでは上手くいかないことは明白だ」とコメントしていた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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