大学4年生のリコさん(仮名・22)は、興味本位で始めた「パパ活」が今もやめられず悩んでいる。
興味を抱いたのは高校生の時。パパ活をしているという女性のTwitterを見て、「なんか“面白そう!”、みんなはやらないだろうけど、私はちょっといけちゃうかも。高校を卒業したらやっちゃおっかなって」と感じたという。
高校を卒業し、大学生になると、アルバイトをする傍ら、マッチングアプリを使ってパパ活をするようになった。主に2人の男性と会い、収入は1回あたり1万~1万5000円、月に5万円ほどを得ていた。当初は「ご飯を食べて話すだけ」。しかし体の関係を求められ、ついに一線を超えてしまう。
「お茶だけ、というのは基本的になくて、やっぱり“ホテル行こうか”みたいな。後悔もあったし、パパに会った後、電車の中で“私、何やっているんだろう”みたいな。だけど、そうやって感情の起伏があるのも楽しい、みたいな感覚もあった」。
アルバイトを続けていたのは、「普通の女の子に戻れなくなってしまいそうだなと思った」から。悪いことをしているという認識もあったが、「そういう自分がかっこいいんじゃないかっていう、おかしな“憧れ”みたいなのもあった」。
その後は風俗店でも働くようになったが、21歳になると、パパ活も風俗もやめた。しかしアルバイトだけでは経済的に困窮するようになり、そこにコロナ禍が追い打ちをかけた。今は風俗時代に出会った“信頼できる”2人とのパパ活により、月に10~15万円ほどの収入を得ている。
「私的にはパパ活って感じではなく、“支えてもらっている人がいる状況”。本当は今すぐにでも辞めたいけど、そうなるとコロナ禍で働けないので、収入がゼロに近くなってしまう。大学4年生なので、新たに雇ってくれるところもないと思う。春からの進路もまだ決まっていない」。
実は実家で暮らしているリコさん。両親について尋ねると、「パパ活を始めてからだいぶ経って母には全部話した。もちろん最初は驚いて、“危ないからやめなよ”と言われた。ただ、最近では強引に止めるということはなく、むしろそういうことをさせてしまっている家庭の経済状況について“かわいそうだなと思うよ”と言わせてしまっている。父は今も何も知らない」と明かした。
それでも違法行為である売春を「やめたくてもやめられない」とはどういうことなのだろうか。
「それは私の意思の弱さも関係していると思う。7時間とか8時間とか立ったままのバイトもある。それに比べれば、ごはんを食べるだけ、一瞬だけ我慢して体を許せばお金を稼げるから、抜け出せなくなっていった」。
“頑張らなくても、効率よく稼げてしまう”。リコさんの思いは複雑だ。「価値観が変わってしまった。一生懸命になることを忘れちゃったし、お金を大切にしなくなってしまった。そして簡単に体を許してしまうことで、自分の価値が下がってもいいというような思考にもなってしまった。最近では、支えてもらっている人と会う回数を減らすようにした。今回取材を受けて、さらにやめようという思いが強くなった。“そのうち”と言うと“いつなんだ”と言われるかもしれないが、遅くないうちにやめられると思う」。
リコさんの話を聞いた作家の乙武洋匡氏は「違法性のある売買春という危険な行為を、“パパ活”という、いわばソフトな言葉で言い換えることによって、“何となく許されるんじゃないか”という雰囲気を作ってしまっていると思う。その認識を、メディアも本人も持つべきではないか」と指摘する。
千葉県警で上席少年補導専門員を務めた経験を持つ少年問題アナリストの上條理恵氏は「売春というのは、相手がいて成り立つ行為。リコさんは後悔しているかもしれないが、では相手の男性たちはどう思っているのだろうか。ソフトな言い方をすることによって軽いイメージになってしまうし、加害者側にも一緒に後悔をしてもらわなければ、問題は解消しないと思う。当事者の多くはやめたいという意思はあると思うが、安易さ、お金になるという現実から若年層にまで広がってしまっている。18歳未満であれば被害児童という言い方をするが、低年齢化もしていると思う」と話す。
その上で「今の社会は情報過多なので、非行に落ちるきっかけになる穴が目の前にたくさんある状態だ。そして、リコさんの話にもあったように、“ちょっとスリルを味わいたい”とか、“自分にもこんなことができる”という部分で頑張りすぎてしまう。そういう中で、わざと自己嫌悪に陥るようなことにも足を突っ込んでしまうということもある。ただ、お金をもらっても幸せではないのかもしれない、ということに気付けたというのは成長だ。前向きに生活をしていって欲しいと思う。そして、そういう時に周囲に安心できる大人、安定している大人がいてくれるかが大事だ。リコさんの話を聞いていると、自分のことを卑下しているように感じる。自己肯定感を高める、他人に認めてもらえるネットワークに入ってほしい。公的機関に相談するなどして足がかりをつけてもらい、色んな選択肢が選べるような関係を他人と作っていただきたい」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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