「結局は日本に対して払われているお金だ」「沖縄と一緒に負担しようと手を挙げる自治体がない」 “思いやり予算”、そして米軍基地をめぐる日本人の誤解
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 日米両政府は17日、在日米軍の駐留経費負担、いわゆる“思いやり予算”について、従来の水準で1年間延長することに合意した。トランプ前政権が大幅な増額を求めたことから交渉が難航していたが、バイデン政権への交代に伴い、現状の2000億円規模を維持することとなった。

・【映像】在日米軍と"思いやり予算"とは?海上自衛隊元海将に聞く

 この“思いやり予算”、そして在日米軍の“基本”について、海上自衛隊の元海将、伊藤俊幸・金沢工業大学虎ノ門大学院教授に話を聞いた。

■「結局は一部が税金として戻ってくる」

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 1978年以降、「自主的な努力と」して日本側が負担し始めた「思いやり予算」。

 伊藤氏は「当時の金丸信防衛庁長官の発言から“思いやり予算”と呼ばれるようになったが、もともと基地の光熱費などはアメリカ軍自ら負担するつもりだった。しかし日本側が“そこは我々が持ちますから”と言って負担をし始めたものだ。そもそも“片方がやられた場合、もう片方が助けます”というのが本来の同盟関係だが、残念ながら日米同盟はそうではない。日本がやられた場合はアメリカが助けるが、アメリカが困った時でも日本は助けないことが許されているのが日米安保条約だ。だからこそ、“せめて基地にいる時のことは面倒を見てよ”、となる。日本が自ら“思いやり予算”の負担に進んでいったのは、そういう背景がある」と説明する。

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 「例えば普天間の移転などはSACO(沖縄に関する特別行動委員会)という枠組みの中で決定するが、その中で費用も決定される。米軍の再編や移転のために使われる費用も、日米の条約の枠組みの中で決定される。それとは別に、米軍基地の光熱費や施設費、働く日本人従業員の給料を負担しているのが“おもいやり予算”だ。つまり誰に払われているのかと言えば、アメリカ軍やアメリカ人ではなく、日本の電力会社や工事を請け負う日本の建設会社、そして日本人ということになるし、結局は一部が税金で戻ってくるわけで、うまく回るようになっている。米軍基地を設置している自治体への交付金、騒音対策でクーラーや二重サッシにするための予算などを合わせると日本政府は年間7000億円くらい負担しているが、全てが日本人、日本の会社に払われている。そういう点が、だいぶ誤解されている。

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 アメリカ軍が自分で戦争するためのお金と、アメリカ軍の軍人に対する給料、合わせると6000億円だ。ということは、アメリカが日本にいることで1兆3000億くらいの防衛予算が使われているのと同じことになるが、トランプ前大統領は、このアメリカ軍の作戦費用や給料まで払えという馬鹿なことをいい出した。しかしそこまで日本が負担することになれば、傭兵のようになってしまう。それはアメリカのために働いていると思っている軍人たちとしても許せないことだ。軍人たちは現状に納得しているし、国防総省のメンバーたちも“こんなにありがたいことはない”と思っているのが実態だ」。

■「沖縄と一緒に負担します」とは言わない本土の自治体

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 茂木敏充外務大臣は17日、「日米同盟および在日米軍は我が国の防衛のみならずインド太平洋地域の平和と安定のためにいなくてはならない存在だ。その中で在日米軍駐留経費は在日米軍の円滑かつ効果的な活動、米軍の地域への前方展開を確保するうえで重要な役割を果たしてきている」と述べている。しかし、“そこまでしてアメリカ軍に守ってもらわなければならないのだろうか”という疑問を抱いている人もいる。

 伊藤氏は「現在、自国だけで戦争ができ、しかも勝てるという国はおそらくアメリカだけだ。先進国のイギリスもフランスもドイツも含め、自国の軍だけで自国を守れる国はない。だからアメリカと同盟関係を結ぶ。そして、日本よりも厳しい条件で駐留してもらっている国もある。例えば沖縄ではアメリカ人が結構捕まっているが、韓国ではアメリカが全て持っていってしまう。そういう意味では、国際政治の中で“ずるい”と言われるくらい、いわば“三方良し”の状況で安全保障環境を保っている。そして外務大臣も指摘していたことだが、アメリカ軍が日本にいるからこそ、中国がフィリピンやベトナムといった国々に簡単には悪さができない。いわば“地域全体にとっての公共財”、という意味もある」と説明する。

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 「例えば高速道路でアクセルを踏んでいる時にパトカーが見えると、みんな踏み込むのをやめるだろう。日本の周りには、残念ながら日本とは異なる価値観を持っていて、現状に満足せず、機会さえあれば力を使ってでもルールを変えたいと思っている中国、北朝鮮、ロシアという国がいる。しかしアメリカ軍がこの地域にいるというだけで、これ以上アクセルを踏むのはやめておこうと思うだろう。この“そういう気持ちにさせない”という抑止力、そのための一定の軍事力が必要だということだ。それが在日米軍であり、自衛隊、東南アジア諸国の軍隊だ。軍事力さえなくなれば戦争がなくなると習ってきたかもしれないが、冷静に考えればそれは大間違いだと知る必要がある」。

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 他方、16日の沖縄県議会で玉城デニー知事は「沖縄の基地負担の状況は異常であり、到底受忍できるものではない」と指摘、「当面は在日米軍専用施設面積の50%以下を目指すとする具体的な数値目標を設定し、それを実現するよう日米両政府に対して求める」として、改めて基地負担の軽減を求めた。

 伊藤は「私も、沖縄だけに7割も負担させているのは異常だと思う。そして、やろうと思えば分担はできる。ただ、本土の自治体が“うちも負担します”と手を挙げてくれればいいが、全国の知事の中で“私が受けます”と言ったのは元大阪府知事の橋下徹氏だけだ。“沖縄は大変だ”と言いながら、自分のところには持ってこないでね、と言う。これはアメリカからすれば日本の問題だ。その解決策の一つが、辺野古移転だった。もともとあった海兵隊の基地を大きくしようという議論だったが、新しいアメリカ軍の基地を作るかのようなイメージの報道もあるので、ここにも誤解がある」と指摘した。

■「原発問題と根っこは同じ」

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 両親が教員だったという慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「僕の地元・福井県には日本で最も多くの原発がある。もともと貧しい地域だったので、リスクも踏まえて引き受けたという経緯があるが、これと根本的には同じだと思う。戦後の学校教育では、戦争に加担しないと宣言したことによって戦争をしなくて済んだと教えてきたと思う。しかし太平洋戦争が終わって75年以上が経つが、地球上で戦争がなかったという年はない。本当に対話だけで対等な交渉ができ、平和も守られるかといえば、それも難しいのだろう。その前提で自衛隊の方々も命をかけて働いているし、アメリカ軍が駐留している。それでも問題が起きるぐらいだから、自分たちが戦わないと言えば絡まれないというのは嘘、子どもだましだ。だから自らが強くなるか、それともお金を払って誰かにお願いするかという中で、僕たちはアメリカに外注しているということだ。冷静に計算すれば、その“外注費”としては決して高いものではないと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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