「矢倉は終わった」は終わった“矢倉の大家”森内俊之九段と“元・否定派”増田康宏六段のトークがおもしろい
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 一時期、将棋界で大流行した言葉がある。「矢倉は終わった」だ。当時四段だった、増田康宏六段(23)が言ったもので、居飛車党の代表的な戦型の一つである矢倉が、当時の研究で既に通用しなくなった、という趣旨のものだった。実際、将棋界から矢倉が急速に減り、代わって雁木が多くなったが、現在は矢倉が復活し、雁木が減るという状況になっている。矢倉の研究で知られる森内俊之九段(50)と増田六段が、ファン注目の「矢倉談義」が繰り広げた。

【動画】矢倉について語る森内九段と増田六段(12時間36分ごろ~)

 共演したのは2月18日に行われた竜王戦2組ランキング戦、藤井聡太王位・棋聖(18)と広瀬章人八段(34)による対局でのこと。中継していたABEMAで、2人は藤井王位・棋聖が初めて先手番で相掛かりを指したことについて話していた。

 森内九段 増田さんは相掛かり専門なんですか。

 増田六段 私は相掛かりと矢倉、2つで行きたいんです。

 森内九段 最近、矢倉に復活の兆しがあるとお聞きしたのですけど。昔、(増田六段が)言ったことを、こう…。

 増田六段 ああ(笑)。昔は矢倉が終わったと思っていたんですよね。最近復活したみたいです。

 増田六段はもともと相掛かりが得意戦法。ただ、それだけでは長く戦っていく上で心もとない。2本目の矢として考えたのが以前、自分が否定した矢倉だった。ここに森内九段は、純粋に興味を持っていた。将棋ソフトの研究も熱心な若者が、なぜ矢倉に戻ってきたのかと。

 増田六段 矢倉は最近復活したんで、なかなか優秀なんですよ。米長流とか、急戦もありますし。その中で藤井王位・棋聖だったり、トップ棋士の方も指されているので、優秀な作戦なのかなと思います。

 もともとは矢倉よりも前に「終わった」とされていた雁木に注目した増田六段だけに、評価されるものに対して、おかしな先入観がない。自分が一度は否定したものが再評価され、それを素直に受け入れられる柔軟性を持っている。

 増田六段 森内先生は、最近の矢倉はどうですか。

 森内九段 矢倉もまあ、形がいくつか決まってきて普通にやるか、急戦矢倉か。最近はちょっと別のこともやってみたいなとは思っています。

 増田六段 昔の作戦が復活したことによって、ベテランの先生もまた勝たれるようになるかなと。矢倉対策が難しいなと思います。

 戦法とともに勝ちまくっていたベテラン棋士が、対策されたことで成績を落としたことは数しれず。ただ、その戦法に新たな可能性が見つけられたとしたら、大得意としている棋士もまた、ともに浮上してくることもある。実際、ベテラン棋士の名がついた戦法が、今また最新のものとして研究対象にもなっている。「矢倉は終わった」は終わった。次はどんな戦法が生まれ、生き返るのか。棋士たちによる研究は、尽きることがない。

(ABEMA/将棋チャンネルより)

矢倉の大家と元否定派がトーク
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ぬいぐるみを抱っこする藤井聡太王位・棋聖
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