トヨタ自動車が23日、実際に人が住みながら自動運転やAIなど最新技術をフル活用し、新しい暮らしの実現を目指す「Woven City」(ウーブン・シティ)計画を本格始動させた。
経済ジャーナリストの井上久男氏は「一般的には“スマートシティ=賢い街”という言い方をする。トヨタなので自動車の部分が注目されがちだが、自動運転だけでなく、遠隔医療や遠隔教育も含め、新しい街がどのような形でできてくるのかにも注目だ」と話す。
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ウーブン・シティでは自動運転の電気自動車(EV)が走ることも想定されているが、自動車業界の世界では、これまで主流だったガソリン車から環境に優しいEVへのシフトが加速。米カリフォルニア州をはじめ中国、ドイツ、イギリスなどでもガソリン車を禁止する動きが始まっている。ただ、そのEVの販売台数でトップに立っているのが、元々は自動車メーカーではなかったテスラ社だ。さらにアップルもEV開発に参入、2024年からの製造開始を目指しているという報道もある。
「非常事態も含め、EVに蓄電した電気を利用することもできる。つまり、動く電源にもなるということだ。もっと言えば、パソコンやスマートフォンにタイヤが付いて動いている、分かりやすく言えばそのような形になっていくのだろう。アップルが参入すれば、まさにそういう車の“家電化”“スマートフォン化”が加速し、価値観が一気に変わっていくと思う。それをもって、“100年に一度の変革期”だと言われている。これはエネルギー革命、産業革命みたいなものも誘発することになると思う。
そして、これからEV市場は400万円、500万円、というような高級なEVと、安価なEVに二極分化していくだろう。例えば中国では昨年夏にSGMW(上海GM五菱)が45万円のEVを出して、若者の間でバカ売れした。あるいは途上国ではローン制度が無いことが多く、安い車でなければ売れない。そこで安いEVにシフトしていけば、大きなマーケットとして伸びていくことになる。EVの主力部品であるモーターを作っている日本電産の創業者・永守重信会長は“車の価格は5分の1になる”というようなことをインタビューで言っているが、まさにこの状況を指している。ところが日本の自動車メーカーがそうした市場に参入できるのかといえば、現状のコスト構造では無理だ。将来、日本の自動車メーカーの存在感が相対的に落ちて行く可能性はある」。
日本経済を支え、多くの雇用を守ってきた自動車産業だが、EV化が進めば、およそ542万人いる従事者のうちエンジン部品や車体部品など、部品メーカーの雇用が30万人分も減少するとの試算があると共同通信が報じた。
「産業革命が起きた時にも蒸気機関によって多くの人の仕事がなくなったのだろうし、厳しい言い方をすれば自動車業界にも淘汰される部分が出てくると思う。バッテリー、蓄電池では日本は弱く、中国が圧倒的に強いが、モーターは“匠の技”が必要でAIでも解決できず、日本が強い。また、社内教育によって機械の技術者がソフトウェアの技術者に変身していくということもありえる。今後、いかに痛みを緩和していくのか考えておかないといけない。これはメーカーだけにとどまらず、国の政策としても重要だろう」。
また、国は「カーボンニュートラル」、脱炭素社会の実現を目指しており、16日に開かれた国・地方脱炭素実現会議で、小泉環境大臣は「この5年のうちに先行的なカーボンニュートラルの地域を創出して、そこから次々と脱炭素の地域をドミノのように広げていく」と述べている。
「EV化を進めていく上では電力も必要になるが、日本においてCO2を出さない発電の現実解は、やはり原子力発電になってくる。そこについて国民的コンセンサスが得られるのかどうか、という問題もある。昨年12月に政府が発表したグリーン成長戦略を見てみると、小型の原子力発電所は作っていくということも謳っている。CO2は出ないが、核のゴミは出る。その処理問題も含め、エネルギー政策を根本的に考えていかなければいけないということだと思う」。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「自動車が現れた時、馬車の時代の人たちは“これは馬の代替物だ”とは思っても、高速道路ができて、郊外から通勤するような生活が現れるとまでは思わなかった。EVについても内燃機関だけの問題ではなく、自動運転が本格化すれば、街全体がそれに伴ってシステム化、最適化されていく可能性もある。そういう中、日本は原発を作れないし、内燃機関でもいいじゃないかという発想だけでは、世界の趨勢にキャッチアップできなくなってしまうかもしれない。また、かつて海運・輸送業界で“コンテナ革命”が起きたときには、港湾で作業する人たちの仕事が無くなってしまったし、そういうことは歴史上繰り返されてきたことだ。ただしAI革命というのは産業革命や農業革命とは異なり、本当に仕事が無くなってしまう人、働き口が無くなってしまう若い人が大量に出てくる可能性もある。そういう中でいかに雇用を生み出すのかというのは悩ましい問題になっていくだろう」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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