コロナ禍でニーズが高まる一方、人手不足から体調不良になる人も…今井絵理子議員と考える「手話通訳」
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 政府や自治体の記者会見などで頻繁に目にする手話通訳。しかし、そのなり手が不足しているということをご存知だろうか。

・【映像】今井絵理子議員と学ぶ手話通訳士の世界 コロナ禍の記者会見で活躍する舞台裏

 東京手話通訳等派遣センターの高岡正センター長によると、障害者差別解消法の施行(2016年)以降、社会のニーズが急増。現在、160人で年間1万6000件もの依頼をこなしているという。昨今はコロナの影響により自治体や医療機関、民間企業などがタブレットを使った遠隔手話通訳サービスを導入。さらに“引く手あまた”の状況だ。

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 生まれつき耳が聞こえない先天性難聴の長男・礼夢さんを育てた経験から、国会で手話を交えて質問するなど、手話通訳の重要性を訴えてきた今井絵理子参議院議員は「情報保障の観点から、選挙の活動の際に手話通訳をお願いすることがあるが、やはり人が足りていないと感じる」と話す。

 手話通訳には、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが実施する厚生労働大臣の認定試験「手話通訳技能認定試験」を合格し「手話通訳士」の資格を得た人(2020年現在3822人)のほか、社会福祉法人全国手話研修センターが実施する「手話通訳者全国統一試験」に合格、各都道府県の独自の審査により手話通訳者となった人がいる。

 いずれも合格率は低く、これらの資格は持たないものの、要約筆記を行う「奉仕員」もいるが、約30万人以上いる聴覚障害者に対して不足している状況が続いている。

■首や肩を痛めたり、メンタルを病んだりする人も

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 東京都からの依頼を受け、小池知事の会見に派遣される手話通訳士の渡邊早苗さんに同行させてもらうと、開始30分前に会場入り。共同で担当する別の手話通訳士とともにカメラリハーサルや、資料の中に分からない言葉がないかチェックを行うなど、準備に余念がない。

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 40分の会見では、交代を繰り返す。「脳をフル活動させ、手を見えやすい位置に保たなければならないので、15~20分が限界と言われています。無理をすると“職業病”ともいわれる頸肩腕障害で首や肩を痛めたり、メンタルを病んだりする人もいます」(渡邊さん)

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 大学で講師を務めるなど、後進の育成にも取り組む江原こう平さんは27歳で手話通訳技能認定試験に合格、手話通訳士の資格を得た。コディネート業務の傍ら、渡邊さんのように行政の会見のほか、病院、テレビ局、企業の会議でも通訳を務める。

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 「誰でも対応できる現場ではなかったり、同じ人が継続して支援した方がよかったりする現場もあるので、やはり人手不足は感じている。かつては一人で何時間も通訳をするのが当たり前のような時代もあり、手が震えてシャンプーができない、お皿が洗えない、さらには手が上がらないとなり、手話通訳ができなくなってしまう人も出てきてしまった。私たちも意識的に予防に努めているが、残念ながらそういう症状が出てしまうというケースがある」。

■低い合格率と待遇も課題

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 決してAIでは補えない「通訳」の仕事。江原さんは「週一で講座に通って、大体3年くらいしたら日常的なコミュニケーションが取れると言われているので、英語などと同じだと思う」と説明するが、手話通訳者全体の給与の実態を見てみると、必ずしも十分な待遇を得ているとは言えないようだ。「もちろん高い給与をもらっている人もいると思うが、やはり非常勤で雇用されているケースがほとんどなので、安いなと感じると思うし、このままでは家族を養うには難しい状況がある」(江原さん)。

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 ニュージーランドでは2006年、手話が3つ目の「公用語」になっている。

 今井議員は「一口に聴覚障害と言ってもグラデーションがあり、手話がいいという人もいれば、手話は使えないので文字、字幕が必要だという人もいる。100%の情報保障を目指すのであれば、手話通訳と字幕はセットだと思う。もっと言えば、日本語をマスターしないと、文字でも伝わりづらい。手話が一つの言語だと考えれば、第二言語として日本語を獲得しなければならないので、私の息子の場合も、そこがすごく大変だった。やはりこれまで光が当たりにくいテーマだったと思うので、皆さんの理解や手話の必要性を訴えていきたい。現在、全国347の自治体の自治体で、手話への理解をしてもらう手話言語条例ができている。国の方でも、手話言語法案について議論しているところだ」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

今井絵理子議員と学ぶ手話通訳士の世界 コロナ禍の記者会見で活躍する舞台裏
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