怒りに満ち、鬼の形相となった桜庭が繰り出した“カーフキック3連発”が視聴者の間で「カーフキックか否か」論争に発展、話題を呼んでいる。桜庭いわく、いま流行りのカーフではなく、急所(痛いツボ)である「三陰交」を狙った蹴り。その破壊力は、対戦相手の悶絶ぶりからも明らかだった。
2月24日に後楽園ホールで開催されたプロレスリング・ノア「STEP FORWARD 2021」の8人タッグマッチで、桜庭和志が総合格闘技を席巻中のカーフキックで中嶋勝彦の足を破壊。格闘界のトレンドを取り入れる桜庭の攻撃を絶賛する声が上がる一方で、ネットで「あの蹴りはカーフか否か」の論争に発展。中には「桜庭はホイス・グレイシー戦ですでにあの蹴りを使っていた」など様々な意見が飛び交った。
杉浦貴、桜庭和志、藤田和之、ケンドー・カシン組と拳王、中嶋勝彦、マサ北宮、征矢学組が対戦したこの試合は、GHCナショナル王座とGHCタッグのタイトル前哨戦としても注目を集めた。
そんな中、この日は中嶋が序盤から桜庭をターゲットとしてロックオン。コーナー際での顔面串刺しムーブなどで桜庭を徹底的に痛めつける。対する桜庭も北宮を挑発すべく、北宮の十八番である覚えたての“セントーン”を連発するが、勢い余って自爆。これを期に両軍入り乱れると、孤立した桜庭が再び中嶋の蹴り地獄の餌食に…。
背後、胸板、ロープに飛んでからの顔面と容赦ない中嶋の蹴りの速射砲にうめき声をあげる桜庭にABEMAの視聴者からは「蹴りすぎ」「オヤジ狩りだ」「かわいそう」といった悲鳴にも似たコメントが並ぶ。あまりの痛々しさにカウントが入ると、ゲスト解説の山田邦子も「もうダメだ…」と悲痛な声。しかしここは、桜庭が根性で返す。
さらに中嶋が不敵な笑みを浮かべながら、バーティカルスパイクで垂直に叩き落とすと、倒れたままの桜庭のボディへ蹴り、ぐったりしたまま腹を押さえる桜庭にニヤニヤの中嶋がブレインバスター。しかし、これをこらえた桜庭が鬼の形相で反撃を開始した。
中嶋の左足首の内側付近をピンポイントで蹴り込むと実況席からは「カーフキック」と指摘が。続けて2発目を繰り出すと、中嶋が苦悶の表情を浮かべる。懸命に左ミドルで反撃に出た中嶋だったが、桜庭がこれをキャッチすると、3発目の蹴りを見舞った。さらに倒れ込んだ中嶋に対してアキレス腱固めから、足をキーロックぎみに極めるカーフスライサー。左足だけを徹底的に責められた中嶋は悶絶し、耐えきれずにタップに至った。
オヤジ狩り状態から大逆転の桜庭のカーフぎみの蹴りに視聴者も騒然。「えげつねえ」「カーフ出した」「えぐいなこの蹴り」「UWFっぽい終わり方だったな…」といったコメントが殺到した一方、足を破壊されて試合後も悶絶する中嶋に山田は「中嶋選手はスネを早く診てもらった方がいいですね。折れたかもわからない…」と心配していた。
この一連のシーンを受け、ファンの間では「カーフキックか否か」論争に発展。「カーフを上手く取り入れた」と絶賛の声が上がる中、「カーフは外だぞ」「インキックやろ」などカーフキックじゃないという指摘も。さらには「桜庭がホイス・グレイシー戦でもカーフキックをすでに使っていた」など指摘する声も上がるなど、やりとりは熱を帯びた。
じつは数日前、桜庭は自身のYouTubeチャンネルで“カーフキック”について言及。その中で「10年前からそれをやってて…僕のはカーフキックじゃないですよ。内側の低いローキック。ふらはぎじゃなくて、内側の痛いところを蹴る“急所キック”。痛いツボ(三陰交)キック。アマレスやってる時から使ってましたよ」と詳細を桜庭流で解説し、三陰交キックの威力について力説していたのだ。
一部、格闘ファンの間では、2014年の「桜庭vsハレック・グレイシー戦」が“桜庭のカーフキックの原点”という意見もあるが、いずれにしても打撃、サブミッション、蹴りとバリエーション豊かな“桜庭ワールド”の恐ろしさを改めて実感するタッグ選手権前哨戦となった。