教員によるわいせつ事案が増加傾向にあることを踏まえ、自民・公明両党は処分を受けた場合、教員免許を再取得できないようにすることを盛り込んだ法整備に向け検討を始めた。両党の検討会では論点整理を行い、ゴールデンウィーク後にも法案を提出したい考えだ。
2日の『ABEMA Prime』に出演した前文部科学大臣の柴山昌彦衆議院議員は、「この議論は昨年から始まっていて、国会でも与党野党問わず“わいせつ教員を教壇から遠ざけることはできないのか”という質問がされ、私の後任の萩生田光一文部科学大臣も“積極的に検討する”と答弁している。ただ、憲法が保障する職業選択の自由との兼ね合いなどの議論があり、通常国会での立法は間に合わなかった。また、再犯の可能性の高いものなのかという線引きが難しいという議論もある」と話す。
「例えばフランスのマクロン大統領が高校時代の教員と恋愛関係になったという話のように、教師と生徒の恋愛というのもあるかもしれない。しかし、いま問題になっている事案というのは、子どもの心に大きな傷を負わせる小児性愛の問題だ。また、教師と生徒という力関係から断れないという背景があるケースもある。アメリカなどでは小児性愛によって罪を犯した人の所在を把握できるような仕組みも導入されているが、日本ではそこまではできない。しかし、教員として雇う側に対して、しっかりとしたアラームを出すというところについては職業選択の自由等を鑑みても許される規制ではないかなと思うし、再犯の可能性が高いケースについては例外を設けることも不可能ではないと思う。悪質なケースについては原則として懲戒解雇にしなさいという通知がすでに文部科学省から出ているし、官報にも載る。今後は官報に載る期間、そして理由についても検索できるようなシステムを作ることを我々は考えている」。
■私的なSNSのやりとりを規制…「実効性のためにはやむを得ない」
そんな中、静岡県教育委員会は今年度に児童・生徒へのわいせつ事案で教員が処分された7件のうち、5件でSNSでの私的なやり取りがあったことを踏まえ、SNSの利用を行った場合に懲戒処分の対象とする方針を示した。今後、具体的な基準や罰則について検討するとしているが、メッセージングアプリやSNSには、悩み相談や部活動の指導などでの活用の道もある。
また、文科省が2019年度に行った調査によれば、いじめの相談先として最も多かったのが「担任」であり、担任や養護教諭などにSNSを使って相談したことで救われたという児童・生徒も少なくないだろう。柴山大臣自身も同年、児童虐待防止対策の一環として、全国の児童生徒に向けて「SNSを使った相談ができる地域もあります」とするメッセージを出している。
柴山議員は「必要な連絡、いじめの経過など、口頭や電話ではしっかり伝わらない場合に、他の人に知られない形で先生に伝えることが可能なものでもある。だから私も“いじめの相談についてはSNSを活用することも検討してください”とわざわざ書いた」としつつも、静岡県教委の方針について「SNSはまさに“閉じられた空間”だし、教師と児童・生徒という立場の違いを悪用して食事やドライブに誘ったり、“相談するなら家に来い”みたいなメッセージをお送ったり、自己の欲求を満たすために使うのはやめてくれ、という意図があると思う。処分歴はその後の業務に影響するので、一定の抑止力、“やめよう”というインセンティブにはなる。これだけSNSが問題事案の呼び水になっていたということを踏まえると、禁止を実効化するためにはやむを得ないことだと思う」と理解を示す。
その上で、「また、児童・生徒としては1対1のやりとりでなければ相談しづらい場合もあるかもしれないが、公的なアドレスを使ったり、管理職や別の教員にも同報するような仕組みも導入することで、深刻な事態を避けることに繋げられると思う」とした。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「“多発している”といっても、県内で年に10件程度だ。もしかすると、SNSを使った潜在的ないじめの方がもっと多いかもしれない。10代と話してみるとわかることだが、リアルとSNSの人間関係が多層的になっていて、どちらがリアルかもはや分からない、あるいはほとんどSNSの中で生きているというような子もいっぱいいる。ただしSNSというのは狭い人間関係の中で使われると同調圧力が働いて閉鎖的になりがちなので、教室でも居場所がない、LINEいじめなどでSNSでも居場所がないとなると、本当に逃げ場が無くなってしまうことになる。
一方、SNSを使えば、そこから別の場所に繋がれる可能性もある。その相手が先生でいいのか、という議論はあるだろうが、10件程度のわいせつ事案のためにその可能性を閉ざしてしまうことで、潜在的なSNSいじめが放置されてしまう危険性もある。親も含め、日本社会はパーソナライズされた生活指導なども求めるなど、学校の先生に対する要求が異常に厳しい。それに応えようときめ細かい指導をしたがっている先生の意欲を一部の不届き者のために奪うのはやりすぎではないか」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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