月曜日に期限を迎える1都3県への緊急事態宣言が、21日まで延期される見通しとなった。

 そもそも解除については発出前日の1月7日、西村経済再生担当大臣が国会で「感染や医療のひっ迫といった状況を踏まえて、ステージ3の対策が必要となる段階になったかどうか」と答弁、人口10万人当たりの新規感染者数が25人(東京都では500人を下回ること)などの基準を示していた。

・【映像】緊急事態宣言の解除を訴える木村盛世氏に聞く

 現状を見てみると、それらの指標の多くがステージ3、あるいはステージ2以下となっている。それでも菅総理は3日、「ステージ3は満たしているが、病床などに一部緊迫している状況があり、慎重に見極める必要がある」として、2週間程度の延長の意向を示したのだ。

 他方、直近7日間の感染者数の平均値(きのう時点)は前週比96%程度と、東京都が掲げる“7割以下”という目標は達成できておらず、下げ止まりの状況にもある。宣言解除後の感染再拡大、いわゆる“リバウンド”を懸念する声もあり、政府の感染症対策分科会の尾身茂会長は「(延長の)期間に徹底的に準備をするということが、これからのリバウンド防止のために私は必須だと思う」と指摘している。

 4日の『ABEMA Prime』では、元厚生労働省医系技官で作家の木村盛世医師に話を聞いた。

■立憲民主党の「ゼロコロナ」はムチャクチャ

 当初は“未知のウイルス”だった新型コロナウイルスだが、1年以上にわたって付き合ってきた結果わかったのは、“新しいタイプの風邪”だということ。多くの人たちには免疫がないが、ある論文によれば、何年もかけ、あるいはワクチンを打ちながら10年くらい経つと、“ただの風邪”になるということも言われている。私たちが普段ひいている風邪のうち15%が通常のコロナウイルスで、ピークになると35%がコロナウイルスになる。だから“コロナゼロを目指す”というような話も聞くが、私たち人類は歴史上、風邪を根絶し得たことはない。つまり“感染者数ゼロ”を目指すということ自体がムチャクチャで、間違いだと思う。

 当然、変異株のことは考慮しなければならない。残念ながら変異しやすく広がりやすいのでRNAウイルスではあるし、それに伴って重症者も増えてくるが、特に毒力が強かったり、致死性が高ったりするわけではない。新型コロナウイルスばかりにかまけていて、ガンの手術が遅れたり、精神を病んでしまったりすれば、本当にすさんだ世の中になってしまう。やはり人々が幸福な人生を送れなくなるほどの感染症ではないだろう 。

■秋・冬になれば再び増えてくる可能性がある

 もちろん感染症対策の専門家からすれば感染者数を減らすのが第一義だし、そのために政府も分科会も一生懸命やっていると思う。ただ、今はまだ事業者への補助金等が出ているが、来年以降になると内部留保が減少した事業者の倒産が増えてくる可能性がある。そうなれば失業者が増え、社会不安につながっていく。若い人にとっても、就職が極めて厳しい状況になってくるかもしれない。そうなれば、精神を病んだり自殺をしたりしてしまう人も増えてくるだろう。悲しいことだが、そういう現状認識をしなければならないし、いつまでも恐れていては社会、経済は回せないということを踏まえ、私はもう緊急事態宣言は解除すべきだと思っている。

 確かに色々な基準を厳しくしていけば感染者数は減るかもしれない。しかしそれは一時的なものであり、春・夏には感染者数が減っても、秋・冬になれば再び増えてくる可能性がある。厚労省の人口動態統計のデータを見ると、春・夏になってくると肺炎の患者は減ってくるので、医療機関の余裕も出てくる。だから若い人たちの感染についてはある程度は甘受していかないと、いつまで経ってもだらだら続いていくことになる。人々に免疫がついてこないと、勝てない、治らない。このままでは、欧米の大きな波がきて収まったとしても、日本は最後まで今のような状況を繰り返していく国になるかもしれない。

■医師会と厚労省は医療提供体制の充実を

そうは言っても、医療がひっ迫しているのが現実だ。ごく一部の医療従事者しかコロナを診ていないというこの現状を打破しない限り、医療のひっ迫は続く。日本はアメリカと違い医療依存度が高いので、医療が崩壊すれば社会の崩壊も起こってしまう。それは何としてでも避けなければならない。そこでまず重要なのが、医療体制を整えることだ。

 そもそも緊急事態宣言がなぜ出されたのかと言えば、医療提供体制が重症化対応に耐えられないという判断があったからだ。皆さんは感染者数のことを非常に気にされているが、日本の100倍近くの感染者数が出ている欧米に比べれば感染者数や死亡者を抑えられているし、ナンバリングするのもおこがましいくらい“さざ波状態”だ。そして病床数もある。しかし残念なことに日本は”医療総動員”になっておらず、ごく一部の医療機関だけが頑張っているため、何とか医療崩壊を起こさずに済んでいる状況にあるということだ。

 東京都が都立広尾病院などをコロナ専門病院にし、重症患者を集約したのも決して悪いことではない。ただ、新型コロナウイルスは法的に“特別視”されているので、通常の4倍のマンパワーが必要だ。一方、もともと日本は医療従者数がそれほど多くないし、今から医学部を増設しても6年もかかってしまう。それでもコロナ対応をしている医療従事者は全体の2%という話もあるし、残りの98%のうち重症化対応ができる人たちを、お金を使ってでも集めてくるという努力が必要。それこそが医師会の役目だ。そこを厚生労働省と一緒に対策をしておくべきだったが、今でもなかなかうまくいっていない。このままでは、やはり同じことを何度も繰り返すことになってしまう。

■国産ワクチンも視野に入れなければならない

 もう一つ重要なのがワクチンだ。若い人たちは新型コロナウイルスに感染しても無症状で済むことがほとんどだが、高齢者については重症化しやすいことがわかっている。だから若い人が高齢者にうつすことのないよう自粛をしなければならなかったが、ワクチンがあれば重症化リスク、さらには重症者が病院を塞いで医療崩壊を招いてしまうリスクを一定程度は抑えられることになる。高齢者をきちんと守り、私たちが普通の戻っていくためにも、3600万人いる高齢者にいかに迅速に接種できるか、ということになってくる。

 怖がっている高齢者もいるようだが、何としてでもやらなければ、社会、経済が回らなくなってしまう。今の“かかりつけ医制度”などということをやっていたのでは間に合わないので、体育館方式にする必要もある。一方で、ワクチンが入ってくるのか、という懸念もある。高齢者の人数を考えれば、やはり国産ワクチンも視野に入れなければならない。塩野義製薬が相当いいところまで行っているが、大規模な治験ができない日本の体質があるので、なかなか治験が進まない。これも打破しなければならない点だと思う。

■日本国民はどこの国民よりもがんばっている

 例えばスウェーデンでは昨年の春・夏に高齢者に一部自粛してもらい、その代わり社会、経済を回すことにした。その結果、秋・冬には重症者数が増えすぎてしまった。あるいはロックダウンを繰り返しているアメリカやアジア諸国の例もある。日本のように、ロックダウンなのかよくわからないことを緩くやっている国もある。どれが正解だったのかは、後になってみないとわからないし、もしかすると、どの国も間違っていたということになるかもしれない。

 もちろん日本医師会もがんばっているとは思うが、日本国民もこれ以上がんばれないというくらい、どこの国民よりもがんばっている。今以上を求めるのであれば、国も医師会も、ワクチンのことも含めて努力をしなくてはならないはずだ。

 誰だって感染症にはかかりたくないし、私だってかかりたくない。ただ、風邪のウイルスを根絶することは不可能で、ある程度は付き合っていかなければならない。高齢になればどんなウイルスでも重症化して、死に至ることはある。それは私たちが生きている以上は仕方がないことだし、ゼロリスクということはあり得ない。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

「国や医師会に憤りを感じる。このままでは医療崩壊だけでなく“居酒屋崩壊”だ」
ABEMA