毎年多くの就活生が頭を悩ませる「エントリーシート」と「自己分析」。2021年卒の就活生に聞いた「就活で大変だったこと」ランキングでも1位と2位に入り、半数を超えている。
【映像】就活は“ポケモンのバトル”を参考に! SHOWROOM社長・前田裕二氏が教える就活の“勝ち方”
インタビューに応じた就活生からは「自分の場合は将来こうしたい、一番これがしたいというのが決まっていない」「エントリーシート自体の書き方が分かっていない。自己分析も客観的に自分を見たことがほぼなく不安」などの声が寄せられた。
今回、『ABEMAヒルズ』では、“就活最大の壁”とも言える「エントリーシート」をSHOWROOM株式会社取締役社長の前田裕二氏が徹底解説。「就活はもはや趣味だった」と話す前田氏が教える就活を“勝ちゲー”にする方法とは?
■面接官は眠気と戦っている?「標語やワードを意識しよう」
就活真っただ中で「エントリーシートを書きまくっている」という法政大学3年の水野大紀さんは、コンサル・IT業界志望。昨年5月ごろから情報収集を始め、先月は20社以上の説明会に参加している。そんな水野さんの就活の悩みは「自己分析はある程度進んでいるが、どの企業が自分に合っているのか分からない。社風が一番でスピード感を持ち成長できることが軸と考えているが、結局、給料や福利厚生も大事だと考えてしまう」というもの。
「ゴールとして幸せになるために、手段として就活があると考えているが、具体的に幸せのために何をすればいいのか、自分でも解決できていない」(法政大学3年・水野大紀さん)
水野さんは“幸せ”について「行動して知らないことを知ることが幸せ」と話す。これに前田氏は「欲望ベースの“幸せ”と、エントリーシートや就活で伝える“幸せ”の話は分ける必要がある」とアドバイス。
「本気で自己分析するときっと、『これ、人に言えないじゃん』となる。例えば、とりあえず年収を1000万円まで上げたいと思っても、ESや面接でまさか、そうは言えない。自分の中の本心の幸せを全て並べたときに、本当に『行動して知らないことを知ること』が幸せなのか。それは、自分に嘘をついていないか。面接官はきっと、『本当に?』って思うだろう。企業を選ぶとき、世の中に対して一定はお化粧をした状態で話していいとは思うが、少なくとも、自分には嘘つかないでほしい」(以下、前田裕二氏)
「水野くんの場合、スピード感を持って成長という部分は、その先に昇進やお給料のことががあるのかな、と想像する。給料や福利厚生も大事と思う、という部分にどうしても拘ってしまう、というのも、きっとそういうことだろう。では、なぜそこまで、お金に固執するのか。言い換えれば、『なぜ自分の幸せにとってそこまでお金が必要なのか』を考える。それをエピソードベースで話せるとなお強い。極端だが、例えば、『小さいときにあまりに貧乏で食べる物がないので、家の近くの砂場で砂を食べていました』ということであれば『そりゃお金にコンプレックスがあるだろうし、給料がマスト条件になるよね』と理解できる」
続いて、水野さんの自己PRを添削。前田氏は「エントリーシートで重要なのは独自性と具体性」と述べた上で、水野さんがダンスの選抜メンバーに選ばれた経験に着目。「元々週5日、1日5時間の練習を続けるようでは、(プロのダンサーとの)差が縮まらないことに気づいた」として「毎日2時間追加で練習をした」という内容には、「具体的な定量数値も入り、どんな風に努力したのか、実際の絵が少しイメージできる」と高評価だ。
一方で、言葉の選び方については改善点を指摘する。
「エントリーシート初心者はとにかく、抽象度が高い内容を書いてしまいがち。抽象度の高い文章とは、話を聞いた他の人でも簡単に書けてしまうようなイメージ。例えば、コミュニケーション能力があります→居酒屋のバイトでお客さんとすぐ仲良く慣れました、など。このままの水野さんの自己PRも素敵だけれど、例えば、最初の『世界的に有名なプロダンサーが選抜チームのメンバーを募集』という状況はとても特殊だと思う。ここを深ぼれば、独自性の高いESになる。さらに、もっと良くなる方法としては、論理性というポイントがある。当然だが、読み手は、書き手ほど、裏側のロジックを理解していない。そんな中で、文章中にいくつかの論理飛躍が見られると、そこで興味を削いでしまう。プロダンサーが選抜チームのメンバーを募集、というけれど、それって僕はよくわからない。一体なんの選抜チームなのか、何の大義のもとチームを集めるのか、その辺りが説明されていないので、グッ中身に入り込めない。勿論文字数の制約もあると思うが、読み手に優しい、シンプルかつ理解しやすい論理展開を心がけるべき。『挑戦から自己成長』も、自分の中ではキラーワードなのかもしれないが、就活では、自分の隣に座っている志望者でも言えてしまう表現かどうか、という目線で言葉を紡ぎ出して欲しい。自己成長、挑戦、こういう言葉は、就活という村には、そこら中に転がっている。標語を強く意識して、別の言葉で名付けてみてはどうか。きっと自分だけにしか置けないようなユニークな言葉があるはず」
水野さんに具体的なアドバイスを送った前田氏。「面接官はものすごい量のエントリーシートを読んでいる」と話す。
「僕がアメリカで働いていたときに、ボストンキャリアフォーラムという一括採用イベントで、英語のエントリーシートを毎年1万枚は読んで、1日100人面接していた。面接官は、多くの場合、他の業務と並行して採用業務と向き合っている。正直、面接官も人間であり、エントリーシートを読み続けるのは時に苦痛で、どれだけみんなが人生かけて書いてきてくれたESでも、読んでいて眠くなることもある。『また“コミュニケーション能力(のアピール)”が来た…!』と思っていたし、成長というワードも『何回見ればいいんだ』と思っていた。独自性、ドラマ性があれば、きっと面接官の眠気も打ち破ることができると思う」
■業界が絞れないときは「小さな好き・憧れ」がヒントに
次に、京都ノートルダム女子大学3年の柳澤まいこさんの志望職種は「営業・総合職」だが、志望業界は「なし」。就活を始めてはいるものの志望業界が決められず「自己分析からの職種選択はできたが、業種がうまくしぼれない」と悩みを打ち明ける。
教育など、人のモチベーションに関わる職種に惹かれているが、いまいち方向性が見極められないという柳澤さん。志望業界を見つけるヒントを探すため、柳澤さんには、前もって、時系列で人生の幸福度のアップダウンを表す「ライフチャート」と「小さな好き・憧れ」を書いてもらった。
柳澤さんの「ライフチャート」から分かったことは、組織内での不和や衝突などで部活を退部したり、人間関係がうまくいかなかったりしたタイミングで大きく幸福度が下がっていたこと。一方で、ボランティアや学園祭の手伝いに参加するなど、自分の取り組みを他の人が喜んでくれたときに上がることが分かった。
「ライフチャートの宿題は、『Will・Can・Must』で言うところのWillを自身の過去から探って欲しい狙いがある。これは、自分がやりたいことの方向性や、幸せの価値観を見極めるたい時に、効力を発揮する。一方、『小さな好き・憧れ』を10個出す、という宿題は、これから柳澤さんがどの領域でCanを作っていくべきかを考えるためにやってもらった。意外と勘違いされているが、誰もが本気でやりたいことなんて持てるわけではない。今、やりたいことが分からない人は、まず、できることを作る。そして、どの領域で作ればいいかのヒントとして、小さな好きや憧れを書き出してみる。何かができるようになる時って、最初の出来心のような、なんて事のない興味から始まっていることが多い。そして、面接官も、新卒の時点でできることがたくさんあるとは思っていない。『この人がこの領域で頑張ってくれたら、結構早くCanが増えて、会社に貢献してくれるだろうな』と思って採用する。Canの前に『なんとなくこれ好きだな』『あの先輩っていいな』と思うような、ちょっとした好きや憧れに気づいて、その種を見逃さず水まきしていくことが大切」
「僕も投資銀行を志望したときは『なんか株ってかっこいいな』っていう小さな感情で入っていたと思う。お金にコントロールされるのではなく、お金をコントロールする側に回る大人に憧れた。初期衝動なんて、そんなものでいい。入社後は会社で本当に信じられないくらいほど場数を踏ませてもらって、その中で無数のCanを開発してもらった。自分の好きな領域でCanを磨いていった先に、本当にワクワクするようなWillが自分からやって来ると思う。今の時点でやりたいことが見極め切れてなくても、大丈夫。小さな好きや小さな憧れが紐づいていそうな業界や企業にまず入り、何より先にCanをもつこと。これが、未来を切り開く上で大切な考え方だと思う」
小さな好きや憧れがやりたいことの道標になると話す前田氏。柳澤さんも少し展望が見えてきたようだ。
さらに番組中、柳澤さんから「欲望ベースの“幸せ”とエントリーシートや就活で伝える“幸せ”は分けて考えるという話があったが、軸として会社に示す際にどういった言い回しがいいのか」という質問が飛び出した。前田氏は「何よりまず、相手の特性を見極めることが大切」だといい、その上で「面接官が食いつくかもしれないカードを少しずつ切っていく」と答える。
「柳澤さんは、ポケモンはやったことがありますか? ポケモンの世界では、“みずタイプ”のポケモンに10まんボルトで攻撃すると効果が抜群になる。一方で、“じめんタイプ”のポケモンだと、10まんボルトの効果はイマイチ。投資銀行で僕自身多かったのは、お金に対しフランクで、もっと儲けようぜ!というタイプの面接官に、『日本経済新聞の一面に載るような取引を成功させて、社会的に大きな影響力を果たしたい』と言い、『そういうのじゃないんだよね…』となってしまうケース。そういう面接官には『親が早くいなくなった影響で、家も貧乏で半年くらい食べるものがなかった時もあった。毎晩ご飯がなくて怖かった。だからお金には恐怖心がある。育ててくれた兄に対しても、経済的にも恩返しがしたい』と本心で伝える。一方で、『お金じゃなくて社会的に自分がどのような影響を持ちたいのか話してほしい』と考えている面接官なら、前者の日経の話の方が響くのかもしれない。面接官に響くカードを何枚も持って置いて、それを、少しずつ切って様子を伺うのがいい。場数を踏むと面接官の属性について見極める能力も身につくだろう。それができないと、誰に対しても、一辺倒な技を繰り出すことになる。まずは、10まんボルトしか技を持っていない状況を脱する必要がある」
前田氏は最後に、水野さん、柳澤さんに向けて「就活はゲームに似ている」として「楽しんでやってほしい」とメッセージ。
「あくまでゲームなので、上手い下手や勝ち負けもある。ポイントは、上手くいかなくても人生の勝ち負けとは特に関係がないこと。いくらでもリセットできるし、時に、長い目で見たら、落ちた方が良いことだってある。だから、楽しんでやってほしい。就活で負けても、人生が否定されているわけではない。僕もエントリーシートで落ちまくった。肩肘張らずにとにかく楽しみながらやってほしい」
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』就活スペシャルより)
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